日付:2006/1/9
右手にはこのエリアの「本来の目的」である高齢者あるいは心身障害者のための施設が存在している。(パンフレットによればここは太陽公園であるとともに心身障害者職業補導施設 峰相自立館でもあるのだ)それらの前にいろいろな国の国旗が並んでいることにはまあ問わないのだが、さらに前方に広がるこの光景が持つ力は一体なんなのだ。
あとで見つけた説明によれば「韓国灯籠:高さ6mの巨大灯籠」であり五十基あるこの五重塔は某観光株式会社によって寄付されたものらしい。なるほど。ところでこの林立する塔の前に立つ像は何を表しているのだろう。
多少腰を抜かしそうになりながらも歩を進める。左手に何かお店のようなものがあるが、既に閉店されている。灯籠の前にはこんな像もあるが、やはりメンテナンスは行き届かないのであろうか。
そしてその横には石で作られた貨幣がごろごろしている。この後建物としてもでてくるのだが、確かに巨大な石を貨幣として使っている地域は存在する(した?)のだろう。しかしここに刻まれた文字はいかなることか。
貨幣の前には猫ちゃんがいる。最初は気にもとめなかったが、この猫はよほどお腹が減っていたか遊び相手をほしがっていたらしい。この後私の足下ににゃーにゃーとまとわりついてきた。暇な時間であれば猫ちゃんの相手をして遊ぶのも楽しかったやもしれん。しかし前方には猫ちゃんよりも興味を引く物が見えてきた。
兵馬俑Singers-Trioの向こう側に見えるのは青、白、赤の三角屋根。そしてそこにあるのは兵馬俑博物館の文字である。はいってみればこんな光景が広がっている。
三色の屋根の元に掘られたと思しき穴それぞれに像がびっしりと並んでいる。兵馬俑の陶俑のレプリカはあちこちで見たような気がするがこれだけの数を穴まで再現して並べるとは。一体これはなんなのだ。ここらへんから私は自分の口が開きっぱなしになっていることに気が付く。つまり
「空いた口がふさがらない状態」
である。さっきの猫ちゃんは兵馬俑の間を歩き回ったり、私の足にじゃれついてみたりを繰り返している。私の方はと言えば口をぽっかり開けたままあちこち歩き回るだけだ。右手奥のほうにあったこれは何なのか。本家にもこんなものがあるのか、あるいは始皇帝陵のミニチュアなのだろうか。
そこを出ると陶俑の密度が高まる。なんだかわからないが外にうじゃうじゃ立って一つの道を形作っている。
その先にある門にかかっている言葉は「万里長城」。その脇に説明の石碑がある。最初から終わり4行目までは万里長城に関する一般的な説明が並んでいる。そして最後の3行はこうだ。
「一九九二年十月十一日、心身障害者の人達の社会参加と自立の為、太陽公園を設置し、ここに萬里長城を建造した。」
「太陽公園を設置し、」まではいいのだが最後の一文がよくわからない。この場所全体に言えることなのだが、心身障害者の為の施設、高齢者の為の施設及びその人達が参加できる場所、という文句の付けようがない設立理由と、万里の長城、凱旋門というのがつながらない。いや、つながっていなくても私のようなものには全くかまわないのだが。
などと考えていてもしょうがない。その先を急ぐ。両脇を石壁に囲まれた道がずっと続いているのだが、途中には陶俑がところどろこに立ち、まるで立ち話をしているようだ。
最近どう? いやー調子悪くってさ
兵馬俑のところで空いた口も歩いているうち半分ふさがってくる。慣れとは恐ろしいものでここまでくると陶俑がそこら中にいても何も驚かなくなる。しかし視界が開けた瞬間、私の口はまた全開になるのであった。