題名:巡り巡って
五郎の入り口に戻る
さて、明日は自由に行動できる数少ない休日だ。何をしよう。そう考えて一昨日は何もせず自由な1日を体力回復だけに使ってしまった。無駄とも思うが幸い少し気力体力が回復してきた。明日はどこかに行きたい。
問題は
気温がとても高いこと。気温が高いのが問題なのか、私の根性がなくなってきているのが問題なのか解らないがとにかく日中の暑い時間帯に外を歩きたくない。行き先の候補としてコミケも考えたが、暑そうだしなあ。
近場にある昭和の雰囲気を残す商店街に行こうか、などと考えながらだらだらTwitterを眺める。すると面白い写真が目に入る。戦艦比叡の内火艇と称する写真が掲載されており、しかも最近所有者が変わったので今後どうなるかわからない、と書いてある。
定義によって珍スポットの寿命はとても短い。これは行くしかないだろう。商店街は私がまた巡りたくなったときまで存続していてくれるに違いない(根拠のない断言)
そう決めたのはいいのだが、炎熱の問題はついて回る。はて、どうしたものか。そこではた、と気が付く。ここは特に営業時間とか関係ない場所。であれば早朝に行けばなんとかなるのではないか。最近よく思い出すフレーズがある。夏休みの定番だった「涼しい午前中に勉強をすませましょう」というもの。今や関東が暑いといっても、私が幼少の頃の名古屋並みになっただけのこと。であれば始発で移動すればなんとかなるのではないか。そうしよう。
そう決めるとその日は穏やかな眠りにつく。というのは嘘で、二時ごろ目が覚めたのだが、何事もなかったのように再度眠る。目覚まし時計はいつも通り四時四十五分に鳴ってくれる。
二度寝をしようという考えが一瞬頭をよぎるがむくっと起き上がる。バナナを一本たべコーヒーを飲む。やおら着替えるを家を出る。見事な朝空が広がっている。
地下鉄の入り口に来たが、まだシャッターが閉まったまま。しかし気温は問題ない程度であり、日差しも弱い。のんびり待つことにする。そのうち駅員さんがシャッターを開けてくれた。
そこから普段仕事場に行く電車に揺られ続ける。とはいっても今日は振替休日。おまけに始発だから混雑もしていない。ぼんやりしているうち月島に着く。
幸いにして今日行く場所はGoogl Mapに表示されている。というわけでGoogle Mapのお告げに従い、3番出口を目指す。そこから一本道が続いている。しばらく歩くと地下鉄の別の入り口がある。ということは3番は最短出口ではなかったということか。Google Map先生は時々謎の案内をするからなあ。しかし朝の日差しは弱く、余分に地上を歩く道のりもそれほど苦痛ではない。そのうち前方にこんなものが見えてきた。
おそらくは関東大震災の時、ここで火災で亡くなった人がたくさんいたのだろう。今日の目的地はこのすぐ先にあるはず。少し進むと見えてきた。
これが比叡のものと言われる内火艇である。ここはいろいろな屋形船の発着場所になっているようだ。そういえば屋形船で天ぷら食べたことがあったなあ。二十年くらい前か?でもってこの内火艇は他の船とは明らかに作りが違う。甲板は真っ平であり、人が乗ると思しき場所は左側に寄っている。右側には通路と手すりようなものがある。この船のどこまでが原型であり、どこからが改修されたものかはわからない。
家にある月間丸別冊の「日本兵器総集」にはこんな記述がある。
内火艇の指揮は若い少尉がやる。初めは面白がってやるが、後には皆、次第に飽きてしまう。
初めて自分で操艦できる喜びと、「飽き」と。実にリアルな記述だと思う。
こんな感じで、おそらくは乗客が屋形船に乗り込む際の桟橋というか船着場として利用されているようだ。2本の丸太の間にがっちり挟まれていることからして、動くことは期待されていないのではないか。
そもそもなぜガダルカナルで沈んだ比叡の内火艇がここにあるのか、とかいろいろ物語があるのだろうな。と考えながらその場を後にする。眼前に広がる道はこんな様子である。
まっすぐ続いているが、まだ日光に照らされる状況ではない。早朝に来たのは大正解であった。夏の珍スポット巡りは涼しい午前中のうちに済ませましょう、とつぶやきながら家路に着く。