日付:2007/5/7
話はあるサイトの文章を見たところから始まる。
そ れはある一団が東京から鈍行列車に乗り伊勢に向かうというものだった。とはいっても目的は伊勢神宮ではなく今年の3月末に閉鎖されたという国際秘宝館探訪 だということだが。
いや、私にとって重要なのは目的地ではない。そこに鉄道沿線に立つ観音と電車の中で居眠りする女性の写真がならべて掲 載されていたのである。それを見て私は驚愕した。今まで何度東海道線に乗ったかし れないのにこの観音には見覚えがない。私としたことがなんということだ。
写真を見るとなにやら買い物かごのようなものをさげている。 そこから何か手がかりがつかめぬかとあれこれ検索したが何もてこない。万策つきてある掲示板に
「このような写真を見つけましたがどこ かご存じの方はいらっしゃいませんか」
と書いてみる。すると即座に返事があった。小田原駅の一つ先。早川というところにある観音様と のこと。ならば近くではないか。
などと考えていたところ珍しく半日自由な時間をもてることになった。最初は映画に行こうかと思ってい たがこのチャンスを逃してどうする。あっさり行き先を変更すると横浜から東海道本線にのる。新幹線でいけば横浜から小田原は一瞬だが、鈍行で行くと一時間 弱の道のり。居眠りしているうちにようやく到着だ。
さてここで問題です。目的地はどこでしょう。検索すると「早川観音」という別の観 音様ばかりひっかかり、目的地がでてこない。掲示板に「駅から10分もかかりません」と書いてあったからなんとかなるだろう、という思いこみだけで来てし まったのだ。さて、と思ったがそれほど悩む必要はなかった。このように駅のホームから ちゃんと見えるのである。 これなら楽勝、と思ったのは甘かった、と思い知るのはその後のことである。
とにかく電車を降りると改札をくぐる。まずは観音さまと反 対方向に向かう。ご飯を食べるのだ。ここには港があり、魚市場がある。その2階に食堂があり安くておいしいらしい。てくてく歩いていくと、確かに魚市場が ある。しかし今日は日曜。食堂やっているのだろうかと思うと、ちゃんと看板がでている。お気軽にご利用ください、とか書いてあるが、本当にいいのだろう か。半信半疑のまま矢印にかかれている方向に進む。階段を上り細い通路を通ると確かに食堂があった。ものすごく混んでいる。ど うやらここは有名な場所らしい。私は混んでいる場所が嫌いなのだが、今更引き返すわけにもいかない。悩んだ末刺身がのっている丼を頼む。ようやくすわる場 所を探し、待つことしばし。でてきたものは確かにおいしかった。これで950円である。 これはいいものを食べた わい。とご機嫌になりながらその場所を後にする。てくてく歩いているうちに気がつく。観光用のバスが巡回しており、そ れを待っている人達もたくさんいる。そしてご飯を食べる場所もあちこちにある。ということはここは結構な観光地なのだろうか。
などと感心 している場合ではない。観音様はどこだ。駅のホームから見えた方向に進んでいくと確かにそのお姿が見える。しめしめ、と歩き続ける。山陰に観音様が隠れても気にしない。方向はあっているはずだ。坂を上ったり降りた り。そのうちお姿が見える筈だ、と思うのだが今度は陰も形もない。どういうことだ。だんだん登り道になっていき足がつらい。つらいのだが、観音様は見えな い。私は一度上ったところから無意味に降りるのが嫌いなのだが、この際そんなことは行っていられない。駅の方にかなり戻る。するとようやくお姿が見えてき た。
ここでは東海道本線と新幹線が並行して走っている。海側が東海道本線。山側が新幹線である。観音様は山側に 見えたから、と新幹線を超えて山の方に行ったのが間違いだったようだ。観音様は東海道本線と新幹線の間にあることを知る。とにかく見つかったからそちらの方に すすむ。すると行く手に犬がおり、こちらを見てわんわんほえている。おまけにつながれていないようだ。これはまずい。回り道をして正面から向かう。と あるお寺の脇にある階段を上っていくと観音様の足下にたどりつく。このように書いてあるから「大観音」なのだろ う。もっとも何が「大観音」の定義か知らぬが。脇にここの由来が書いてあり、それによると高さ13mでこの文の日付は昭和57年とのこと。ここからは「買い物かご」に はいった魚のしっぽだけが見える。
足下には扉があり、中にはなにやら絵か敷物のようなものが飾ってあるようだ。 とはいっても扉には鍵がかかっており、中に入ることはできない。しばしあたりをうろちょろして写真を撮る。
さて、お買い物もすんだしさ て、お昼もおいしかったし観音様もおがめたし、あとは駅に向かうだけだと歩き出す。最初は駅のこちら側にも入り口があるかと思い、駅に接近するつもりだっ た。ところが道をいくら行っても駅に近づくことができない。平行に歩くことだけが可能である。そのうち右手に早川観音があるとおぼしき小高い山が見えてき た。そこを通り過ぎるときある男性とすれ違う。相手は帽子を取り
「あの、天然記念物の○○(言葉は失念)をごらんになりましたか?」
と 聞く。私はすいません。わかりません、と答える。お互い何かを探してここに来ているのだが、不幸にして興味の方向が少しずれているようだ。その先に線路を くぐることができる場所がある。やれうれしや。線路の反対側(海側)にでればなんとかなるだろう、とそこをくぐり、線路にそって歩こうとする。すると道が 行き止まりになった。なんということだ。
また来た道を戻り今度はとにかく太い(とおぼしき)道から外れないようにする。などと歩いて いると結構大回りになる。さっき駅のホームはすぐそばに見えていたのに。
ぶ つぶつ言いながら歩いているうち、この早川という駅前の町 の雰囲気が結構ご機嫌なことに気がつく。坂の方に上ったときなど尾道の町を思い出した。古い家と新しい家がいりまじっており、その渾然とした様子が大変よ い。とか考えているうちに駅にたどり着く。ホームから見ればやはり大観音はすぐそこにあるように見える。しかしあそこに行く最短経路を発見するのは結構大 変か もしれない。