五郎の 入り口に戻る
はっと我に帰ると、自分が高知駅で呆然としていることに気がつく。何故こんなところにいるのか聞かないでほしい。とにかく来てしまったのだ。
重い荷物はコインロッカーに放り込んだし。さてどうするか。今日はとてもいい天気。気温は快適だし、風はない。時間があるからてれてれ歩いて行こう。高知駅周りの町並みを観る事もできるだろうし。そう考え、iPhoneの地図をみながらてくてく歩き出す。途中ショッピングモールがあることに気がつくが、ここにはいってはせっかく高知県まで来たかいがない。その隣にある定食屋でお昼ご飯を食べる。日替わりのすきやき定食は600円。小さなおかずが二つにコーヒーがついてこの値段はなかなか良心的である。さて、お腹も一杯になってここからいよいよ目的地に近づく筈。それまでもそれなりの距離を歩いていたのだが、地図を見ると出発地である高知駅からあまり距離が変わっていない。単に目的地を中心とした円周上を歩いていた気がする。いや、過去のことは問うまい。大丈夫まだ時間はたくさんある。
方向を東にかえ、歩き始めてしばらく。左手方向に何かただならぬ気配を感じる。視線を向ければこんなものが見える。
黄色い。実に黄色い。あれはなんなのだ。時計を観る。Google Mapのお告げを信じれば目的地まで7分。集合時間までまだ1時間はある。きっとあそこまで往復するだけの余裕はあるだろう。今や珍スポットを巡るチャンスは年に1度か2度。ここで行かずにどうする。そう決めると左にぐいっと曲がる。見ての通り目的地は坂の上。というか高知市街の北限のような気がする。
途中柴犬を売っているとおぼしき民家がある。小さな檻に見本の柴犬が閉じ込められているのはどこか可哀想だが、こちらはなんともできない。ひたすら歩き続けるが道は少なくなって行き、間違えるとおそらく行き止まりにはまることだろう。実際そうした表示もある。町の案内図らしきものがある。
これを観る限り正しい道に沿って歩いているようだ。しかし「ゴルフバッティングセンター」はいいとして「桜ヶ丘フレッシュボウル」とは何だろう。この山の上にボウリング場があるのだろうか。期待に胸が高まるというものではないか。先を急ぐ。そうこうしているうち、前方に何かが見えてきた。きっとこれが何か関連施設に違いない。そう思って近づけば正解であった。
中国風の何か。先ほど見えた黄色い屋根とは違うようだが、きっとこの近くにそれがあるに違いない。入り口には狛犬というか何かその類いがいる。
近くには最近観なくなった「有刺鉄線」がある。などと感慨に耽っている場合ではない。狛犬横の看板を読もう。
「国宝級」ということは「国宝」ではないのだろう。しかし所詮それは人がつけるレッテル。心は国宝ということで期待が高まるではないか。さっそく中にはいる。
名前は知らぬが中国風のなにか、ということだけはわかる。中国の時代劇にでてきそうだ。きっとこういうところでお茶を飲むのだ。中央にあるテーブルの上には誰かが忘れて行った帽子だかマフラーが置いてある。そこを通り過ぎると、前方にこんな建物が見える。
これが黄色い屋根の正体だ。正面にこの由来を書いた看板がある。
なぜ高知県の山中に中国風の何かがあるか。やはりこうしたものは個人の意思によるものであろう。国宝級であっても、買い手がつかない状態であったのか。経緯はどうであれば、「有り難い仏縁に結ばれる」とのこと。頼もしいではないか。では中を覗こう、とするのだが。
遺憾ながら前面にはシャッターのようなものがあり、中を自由に拝観することはかなわない。もっと悪い事に光が反射している関係で正面の一番大事な何かが全く見えない。
しかしそれで落胆するのは及ばない。左右には興味を引く物があるからだ。
巨大ライオンである。たしかにライオンを飼おうと思えば餌代が馬鹿にならん。サバンナにいれば自分で勝手に食べ物を探せばよいが、日本にいては剥製にされてしまっても文句は言えない、ということなのだろう。
その横にはニシキヘビに何かがあるらしいが、残念なことに見えるのは看板だけである。ここで視線を反対側に向けてみよう。
どうやらここにもなにかあるらしいが、不幸にしてこの角度ではよくわからない。
というわけで不満も残るが、ここから観る高知市の風景はなかなかのものである。さて、この先に少し進んでみよう。するとこんなマンションがある。
これが案内図にあった「桜ヶ丘スカイタウン」だろう。ちょっと普通のマンションとは違うようだ。エレベータが外部から丸見えになっている。ということは、このエレベータからはいつも高知市のすばらしい眺望が望めるのだろう。しかしその周りを歩いてもボーリング場はおろか、バッティングセンターもない。きっと過去にはここが
「一大レジャーエリア」
だったことがあるのだろうか。今は建築中、もしくは竣工まもない住宅が建ち並んでいる。おそらく私がくるのは数年、もしくは数十年おそかったのだろう。そのうちの一軒の裏には先ほどの寺が見える。
さて、ここで観るべき物は観たことにする。再び山を下り本来の目的地に向かう。