プロとアマの境目

2007-11-27 00:00



以前「記憶喪失になった男性が、すばらしいイラストを描く」というニュースが流れた事があった。


そのイラストをプロのイラストレーターが見てコメントした。


「これはプロとアマの境目の絵ですね。プロにしては線が多すぎる」




初音ミクのオリジナル曲を聞いていてそんなことを思い出した。




どんな人が曲を作っているかは私にはわからない。もちろん「プロの犯行」である例もあるだろう。


しかし私が聴いたオリジナル曲のほとんどは「ひねりすぎている」ように思うのだ。


その中でも一番よく聴かれている「みくみくにしてやるよ」にはある程度偉大な単純さがあるように思う。それでも私の子供が歌うには複雑すぎる。


そんなことを考えながらNHKのみんなの歌、あるいは昔から歌い継がれてきた曲を聴く。自分で曲を作ったのは遠い昔の音楽の時間だけだから素人の戯言であるのは百も承知だ。しかし


「単純なメロディを作る方がはるかに難しいのではなかろうか」


と考える事が多い。


ここで話はいきなり家電製品とか、あるいは情報機器とかそういうものに移る。


そうした目で見ると多くの家電製品、あるいは情報機器というのは「アマチュアの作品」に近いように思える。つまり無駄な線が多すぎるのだ。


では無駄な線をそぎおとしたプロの作品になにがあるか、と言うとまた私の「iPhone礼賛」になるので以下省略。しかし現実問題として家電製品の設計、デザインにも「プロとアマの境目」が厳然として存在していることを私は半ば確信している。




個人とは

2007-11-16 00:00



「ニッチの集合体」であると考えている。


いきなり何のことか、といえば




現在のコミュニケーションのベースは、2chや有名サイトなどの、誰かがセッティングした「場」 * ROMが多い。 * 2chは一つの板あたり500-1000スレッド。これは、ぜんぜん足りてない。漏れている話題がある。みんなが流行に走る。 * 流行に走るのはつまらないという中二病的動機 * ブログを取り巻く技術が進化すれば、自分のブログをベースにコミュニケーションができる。 * ブロク検索エンジン、ソーシャルブックマーク等。 * 「大量に読めるツール」を使うことで、誰が何を書いているかちゃんと把握できる。「自分の場所」同士がつながる。「場」=「有名サイト」依存からの脱却。

「最速インターフェースの研究と実践」メモ - 最速チュパカブラ研究会「最速インターフェースの研究と実践」メモ - 最速チュパカブラ研究会




私は2chを読むのが好きだ。(ほんのときたまだが書き込んだりもする)。またはてなブックマークを使いその威力に驚く。


しかしながら、それらを使っているとどうしても「情報が狭い」という感をもつことがある。特にはてなブックマークがそうだ。プログラミングの話題。システム開発の話題。政治、マスメディア。それらは確かに集合知により選ばれた情報だから読みがいがある。しかし狭さは否定しようがない。例えば


・ゲルちゃんことゲルギエフ


・アーノンクールのロック魂


・珍スポット


について語ろうと思ってもそれらの媒体では無理なのだ。2chはある程度広いかもしれないけど、それでも珍スポットについて快適なスタンスで話すことは容易ではない。


つまりこういうことだ。大量のデータを集める。そこから統計的な処理を使って何かの傾向を導きだす。そうした方法はインターネット上の情報を扱うという点で実に大きな成果を上げてきた。なんだかんだいって私だってそうした仕組みの上になりたっている検索エンジンに日々お世話になっているのだ。


しかし


大量のデータを集め、統計的な処理を行う、というのは畢竟個人の特異性をならしてしまうことに他ならない。いい年して珍スポットを巡っているような人間は滅多にいない。だからそんな情報は出さない、というのは確かに正しい。しかし私個人にしてみれば、それはとても重要であり、大切な情報なのだ。


かくして「個人はニッチの集合である」という主張をするに至(飛躍してますね)個人はマイナーな趣味の寄せ集まった存在なのだ。


というわけで私は最近「個人のニッチな趣味に合致する情報なりコミュニケーションをどうやって実現するか」という点に興味を抱いている。頭の中にぼんやりしたアイディアだけはあるが、まだ形にはなっていない。


このブログでアーノンクールのロック魂について書いたことはあるが、珍スポットについて書いた事はない。今度からそうした世間的にマイナーな趣味もさらけだすか。。いや、それは本家のサイトで十分かな。




初音ミクの画像がはじかれる原因に関する一つの可能性

2007-11-06 00:00



少し前、Google 画像検索で「初音ミク」の画像が表示されない、ということが話題になった。様々な説があるので、「なぜか」という問題にたいして答えようとする気はない。しかし昨日面白い例を見つけた。




私が理解している問題はこうだ。初音ミクで検索すると全く関係ない画像が表示される。そのページに飛んでみると、元々初音ミクの画像がない場合もあるが、画像が存在しているのに「わざわざ他の画像」を選択し、表示している例もある。




初音ミクの画像があるのに、表示していないページに関して言えば「クローラーの周期の問題」とは言えない。そもそもそのページがひっかかっているからだ(もちろん初音ミクの画像だけ後で追加したという可能性も残るが)


ではどうしたらこのようなことが起こるか?




Goromiシリーズの最新作、Goromi-Musicでは音楽のメタデータをキーにしてWeb検索を行い、その結果を表示している。その際問題になるのが「広告」画像だ。これがでてくると音楽のムードを破壊することおびただしい。さて問題です。どうやったらこれが取り除けるでしょう。




なんとかの一つ覚えではないが、私はこんな方法を使った。


・「これは広告」という画像と「広告じゃありません」という画像を数十枚集める。


・それぞれの画像のRGB成分のヒストグラムを作る。


・Support Vector Machineに学習させ、モデルを作る。


・新しい画像がきたらそのモデルを使って、広告画像か否かを判定させる。


きっと専門家からみたらもっとましなやり方があるのだろうが、ええい、とりあえず動けばよろしい、とシステムに組み込んだ。結果はまあまあである。自分が作ったソフトだから採点はとても甘くなる。QRコードを時々通過させてしまうのが気に入らないが、まあ見なかったことにしよう。


さて、フィルター組み込み後のGoromi-Musicを使って「ミクラシック」の曲を演奏させてみる。J.S. Bachと初音ミクの画像が交互に表示されるのを見て私は「わーいわーい」と喜ぶ。


ところが私のお手軽フィルタは初音ミクのパッケージ画像もはじいていたのだ。(もちろん「これは広告だ」画像に初音ミクの画像は含まれていない。)パッケージではない初音ミクの画像は表示していたが。


この騒ぎが起こってからというもの「画像フィルタの問題じゃないかな」と思っていたのだが、確かにそうしたことは「起こりうる」ことがわかりました。。というお話でした。もちろん世界のGoogle様が私がやったようないい加減なフィルタを使っているはずもない。しかし広告画像をはじきたい、という目的は多分存在するだろう。もちろんテキストとの位置関係も使えるだろうが、それだけでは難しいこともあるに違いない。というわけで、画像フィルタをかませていたが、何かの理由でそれが初音ミクを「広告」と判断した、というのは可能性の一つとしてはあり得るのではなかろうか。




生産するソフト、という幻想

2007-11-05 00:00



例えば、「IT産業へのイメージ」に対する学生の回答として、「きつい、帰れない、給料が安いの3K」に加えて、「規則が厳しい、休暇がとれない、化粧がのらない、結婚できない」の“7K”というイメージが挙げられましたが、それに対するNTTデータ相談役の浜口氏の答えは、「3Kの“帰れない”は、帰りたくない人が帰れないだけ。スケジュール管理の問題だ。」

IT業界を不人気にした重鎮たちの大罪:CNET Japan ブログネットワークIT業界を不人気にした重鎮たちの大罪:CNET Japan ブログネットワーク


この「重鎮」が座っている場所から見えない世の中の現実、を一つ書いておく。


確かに日本の会社において「残業が大好き」な人間は多い。それは一つにはそうした態度がほとんど常に称揚されているからでもある。無駄な作業を効率の悪い方法でやって残業しまくるNTTデータの社員はとても多い。私はそのことを知っている。そしてその人たちは確かに「帰りたくない人が帰れないだけ」なのだろう。




しかし不幸にしてそうした「無能な上司」のもとに派遣(あるいは偽装派遣)されてしまった「IT技術者」は果たして「帰りたくない人が帰れないだけ」だと言えるのか?




昔話をしよう。私は愚かな職業選択の結果、NTTデータで半年ほど偽装派遣として働いたことがあった。そのときの上司兼お客様は残業と会議が大好きな人だった。いつかは派遣5人ほど集めて朝の10時から夜の10時まで「会議」という名の演説会をやっていた。(もちろんその結果何も決まらなかったし、何も進まなかったが)


彼が頭を何かに打ち付ければ、確かにその日は定時で帰ることができたかもしれない。それは彼の自由だ。しかし我々に自由はなかった。お客様兼上司がなすがまま。それでも「3Kは本人がやっていること」と言えるのがNTTデータの重鎮というものだろう。彼らはそういう人間だ。NTT*にマッチしない会社の人間はまあなんというか自由に使い捨てできる奴隷と思っている。


さて、なんとかその職場を抜け出し、NTT系列の弱小子会社の本社に戻る。そこである日社内報を見た。


その社内報は私が思うに画期的なものだった。新入社員の「本音」が語られていたのだ。そこに並んでいたのは読むのがつらいような言葉だった。曰く


「学生のときは徹夜でプログラミングも平気だったが、この会社じゃそんなことは何の役にもたたない」


(ちなみにそうした言葉に対するNTT出向者のコメントは「甘いことを言っている」だったが)


何かの間違いで進路を考えている人がここを読んでいれば、是非聞いてほしいことがある。


それは、システムインテグレーター(SIer)が手がける案件のほぼ全てが、高度なプログラミングスキルなど要求せず、むしろ顧客の要件をうまくまとめてそれを実現することに価値を置くからです。


▼Googleがなぜ高度なプログラマーや数学者を募集するのか。 ▽答え:彼らの本業は「優れたサーチエンジンを開発すること」だから。


同じように、今度はSIerで考えてみましょう。


▼日本のSIerがコミュニケーション力の高い人物を募集するのはなぜか? ▽答え:彼らの本業は「顧客の要件通りにシステムを作ること」だから。


どうでしょう、これがSIの道理なのです。こういったことをIT業界の重鎮は回答すべきでした。

IT業界がダメな理由を学生の視点から考える:CNET Japan ブログネットワークIT業界がダメな理由を学生の視点から考える:CNET Japan ブログネットワーク


SIerと呼ばれる会社に勤務するために、プログラムが書ける必要は全くない。顧客を丸め込み、派遣労働者をこき使い、請負先に無理な納期と予算を押し付けることができ、社内の会議でそれらしいことを発言でき、長時間残業を生き甲斐とできればそれでいいのだ。IT関連の先進情報に通じている必要もない。


仮にあなたがソフトウェアを「創造」することに少しでも興味があるならば、絶対にそうしたSIerに就職してはいけない。彼らはソフトウェアとは「生産」するものだと思っているのだ。SIerが行うことは「労働者を管理してソフトウェアを生産させること」なのだ。


とここまで書いて、ようやく標題に戻ることができる。


私はいろいろな経験を通じてこの「ソフトウェアを生産する」という行為は幻想であるということを確信するに至った。図面通り、ものを作っていけば立派なソフトウェアが出来上がる。そんなことはあり得ないのだ。複雑な構造物を作り上げることは、ソフトウェアを創造する、という側面なしには成り立たないのだ。


しかし我が国ではこの「ソフトウェアを生産する」という神話がまかり通っている。従って開発に失敗すれば、それは「管理が悪かった」せいなのだ。


などと力説していてもしょうがない。私が転職した頃に比べれば、インターネットで情報を得るのは遥かに容易になった。もしあなたがソフトウェアを創造する技量に興味があり自信をもっていれば、まず目指すべきはGoogleだ。そこに受け入れられなければ、他の企業を探す。しかしSIerがどんなにうまいことをいっても絶対に信用してはならない。