サラリーマンとしてのSteve Jobs
2011-10-13 06:51
今頃お役所ないしはお役所企業では朝礼で(お役所企業だからそういうものがある)
「君たち。Steve Jobsを目指せ!Jobsのように独創的なアイディアをどんどん提案してほしい!」
とか言っている人がたくさんいるのではなかろうか。
いつかTVでみたのだが「造反の勧め」なる紙にかかれた何かがあり、お役所企業ほどそれを「奨励」しているとのこと。
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Steve Jobs、それに日本では織田信長の生涯を思うとき、この人達には絶対「サラリーマン」はできなかったのだなあと思う。生まれながらにして「最初からリーダー」以外できない人だったのだ。
考えてみてほしい。織田信長や、Steve Jobsが能力はないが、いばることだけは大得意の上司の元で働く姿が想像できるだろうか?
そういえば、以前働いていた会社の社長(親会社から片道飛行で落ちてきた人)は
"俺はBill GatesよりSteve Jobsになりたい"
とか言っていたなあ。社長、酸素欠乏症(以下略)
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でもってそのSteve Jobsだが、以下の言葉がぴったりくる人だったと思う。
私が接する機会があったSteve という人は、チャンスを感じたらすぐさま出来ることから手を付け、手段を選ばず、そして途方もなく粘り強く、最後まで絶対に諦めないでやり通す、といった感じの人でした。今までのやり方がダメだと思うと周囲が唖然とするほど平気でそれをかなぐり捨てました。「ビジョナリー」や「独創的」な人というより、手段を選ばないエキセントリックな人、といった趣でした。
via: まつひろのガレージライフ
「これはいける!」と彼の中でスイッチがはいると、あらゆる手段を使ってそれを「自分が満足できる高い水準」で形にする。そして製品化する。それをやることに類まれな才能と情熱を持った人ではなかったか。
このスイッチがはいる瞬間というのが、例えばPARCでGUIをみた瞬間だったり
おそらく最初にCREATIVE Labsの社長に会った時にSteveの頭の中にスイッチが入ったんでしょう。それともすでにFadell 氏にアプローチされ、すでにスイッチが入っていたのか... いずれにせよSteve は思ったことでしょう。今が市場に参入するべき時期で、アップルならどの会社よりもずっとうまくやれると。
via: まつひろのガレージライフ
だったりしたのだろう。
覚えている人はいるかどうかわからないが、iTunesは最初買収した他社のMP3 Playerをベースにした製品だった。とにかくTime to marketを重視した結果だと思うが。
そして初めてiPodにビデオ再生能力がついたとき、Jobsはプレゼンで
「動画再生昨日はボーナスだ」
と繰り返し述べていた。その様子からして彼自身iPodに動画再生機能が必要ではないと思っていたのだと思う。しかし今やiPod touch,(iPhone)には動画再生機能が不可欠だ。
iPodはやがて Firewire を捨ててUSBをサポートし、ウィンドウズのサポートを開始し、カラー化を果たし、動画の再生やPodcastをサポートし始め、やがて iTunes ストアが出来上がりました。これらひとつひとつが本当に一歩ずつなんです。まずはiPodが売れて、じゃあ次はウィンドウズの客に売れないかな?って感じでした。現実的なステップを一歩ずつ確実にモノにしていく。それがアップルのやり方ですし、Steve 自身のアプローチだと思います。
via: まつひろのガレージライフ
思えば、Appleを追放されたときのJobsと復帰した後のJobsで変わったのはこの
「現実的なステップを一歩ずつ確実にモノにしていく」
点だと思う。Macintoshがあれほど革新的な製品でありながら、Appleの経営が傾いてしまったのは、一つにはこの「一歩ずつ確実に」ができなかったからではなかろうか。
復帰後のJobsも依然として独善的な人ではあっただろう。しかし現実からのフィードバックを取り入れることを学んでいたのではなかろうか。
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もう一つAppleにしかできないこと、はその異常なソフトウェア開発能力である。以前書いたことだが
OSに何が使うかの検討がはじまってから1年ちょっとでMac World Expoでデモ。その間にOS Xをスリム化し、Core Foundation以外の部分を全て作り直している。またGUI部品もタッチパネルを用いた携帯電話向けに全て作り直し(ここでの作り直し、というのは「製造」ではなくて「デザイン」からのそれである)その半年後に商品として消費者の手に届けている。
via: ごんざれふ
こんなスピードで携帯情報機器用のOSを作る(ベースとなるOS Xが存在しているにしてもだ)ことができる会社が他にあるだろうか?もちろんMicrosoft,Googleには可能だと思うが日本の会社には逆立ちしても無理だと思う。
その力の源は
そしてこのアップルという組織は、世界中から才能を集める吸引装置のような役割を果たしています。アップルで働いていると、「人生の中でこんなに頭のいいヤツには会ったことがないぞ」と思わせてくれる人々に次々と遭遇することができます。また「こんなにアクが強いヤツにも会ったことないな」と思わせてくれるご仁も沢山います。あるいは「お前は個性的って言う以外は別に取り柄がないな」という人も山ほどいます。何かが秀でている代わりに何かが著しく欠けているような方も沢山います。アップル以外ではまったく通用しないであろうほど常識に欠けている方々とか...こうして書いていて思い出す面々はどの人も実に個性的です。
via: まつひろのガレージライフ
というところからくるのではあるまいか。引用記事にあるとおり、社内政治にその力を浪費してしまう点もあるだろう。しかし「畏怖の対象となる」CEOをおくことにによりそれら
「アップル以外ではまったく通用しないであろうほど常識に欠けている方々」
の力を束ねることでしか、こういう無茶苦茶な開発はできないのではなかろうか。
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こう考えてみると、日本の会社が「AppleをSteve Jobsを目指せ」なんてのは、ラグビーのW杯で優勝を目指すほどバカげているように思えてくる。所詮生まれながらの体格とか違うんだからさ。
別にラグビーのW杯ばかりがスポーツじゃない。柔道だって、水泳だって、体操だってサッカーだって日本は立派に戦っている。現実から学ぶのはいいことだが、「それになれ」ってのは戯言のたぐいだ。