21世紀の帝国陸軍
2012-07-18 07:17
大学生の頃、図書館であれやこれやの本を読んだ。元帝国陸軍の人が書いた本に概略以下の様な記述があった。
「なぜ太平洋戦争に負けたかといえば、海軍が敗れたからだ。海軍は米国より多くの空母を有しながら、制海権を失った。陸軍にもインパールやフィリピンなど小規模な過ちはあったが、根本原因は「血が回らなくなったこと」だ。補給が続かなくなったので島々の戦闘で米国に負けることになった。
それを先輩に言った所「おまえ、なかなかするどいではないか。海軍が負けなければなあ」と言った」
読んで仰天した。こういう人間がいるとすれば確かにあのような戦争を始め、なすすべなく敗れるなあと納得した。(上記言葉に対する私の反論はここ参照のこと)
しかし
私は愚かだった。こういう思考形態は敗戦とともに滅んだわけではない。今でもそこかしこに存在しているのだ。
では、なぜ日本のメーカーのデザインや、製品がアジア勢に劣るようになったのか。
via: 日本メーカーのデザインはいつから格好悪くなったのか (nikkei TRENDYnet) - Yahoo!ニュース
6月に社長に就任したパナソニックの津賀一宏社長は、次のように指摘する。
「パナソニックは、デジタル家電市場という、新たなインフラを立ち上げることに取り組み、それをリードする役割を担ってきた。それが重要視されていた2005年までは負けてはいなかった。しかし、それが一段落すると、今度は端末競争になる。そこでは、技術がモノをいうのではなく、デザイン、マーケティングが重要になる。そのフェーズにおいて、パナソニックは、技術やモノづくりに自信を持っていたために、お客様視点の商品を十分に展開できていなかった。これが2006年~2011年であった」
デジタル家電市場は、パナソニックが切り開いたもので、Appleだのの成功はその上に「デザイン、マーケティングを乗せただけ」とでもいいたいのだろうか。
ちなみに、「まだ負けていなかった」2005年に、パナソニックは海外向け携帯電話事業から「転進」している。まあいいや。でもってパナソニックが何をしたかと言えば
「パナソニックは、2012年から、ハッと我に返り、デジタル事業に取り組んでいる」と津賀社長は語る。
via: 日本メーカーのデザインはいつから格好悪くなったのか (nikkei TRENDYnet) - Yahoo!ニュース
負け続けて7年の間ボンヤリしていた、とでも言いたいのだろうか?さすが悠久の大地の流れとともにある日本企業は違うなあ。
今起こっていることを「端末競争」と表現できる神経は「海軍が負けなければ帝国陸軍は負けなかった」というのとほぼ同等と私には思える。
これが世界的大企業Panasonicのトップだとは。。
日本の家電産業が復活できるか否かは私にはわからない。「日本企業はものづくりと技術に徹する」という道を取るのもいいだろう。
問題は
現実をきちんと見なくては絶対に復活は有り得ないということだ。
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私は日本の大企業というものに一定の信頼を置いていた。確かに馬鹿なこともするし、ゴミのような人間も多い。しかし大量に採用して、そこから振り分けて行くプロセスにより、トップ(ないしはトップに近いところ)に立つ人間はある程度まともである、と。
しかしこの「新社長」の言葉を読むとその信頼が揺らぐのを感じる。想像だが、敗戦前も「まあ陸軍だ海軍だといっても、上の方は立派な人がいるよ」と考えていた人もいるのだろうな。最後はなんとかなるんだろう、とか思っていたらどうにもならなかったと。