題名:Clinton-part9

五郎の入り口に戻る

日付:2000/5/4

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2000/5/4

私は日本の芸能の基本は「素人、幼稚、内輪受け」」という信条をもっている。先日ちょっとこの信条を考える際に面白い話があったので、それついて書いてみたい。

Earth Dayに放送するため、Clintonにインタビューがなされた。トピックスは地球環境についてである。これ自体はどうということもない。しかし面白いのはそのインタビューアーがディカプリオだったことである。

これは非常に日本のTV局が好きそうな話だ。とにかく彼らはその道には全く素人の芸能人を持ち出すのが好みらしい。野球の放送などで

「野球の事はぜんぜんわかんないんですけどー。すっごい迫力でびっくりしましたぁ」

的な発言にいらだつのは私だけだろうか。また誘拐事件がおこるたびに

「推理小説作家のコメント」

が何故載るのだろう、と思うのも私だけだろうか。

 

さて、このディカプリオによるインタビューは

「「俳優に記者の仕事をさせた」とABC内でも論議をかもしだしていた」

とのことである。当然だ。インタビューとはそれ自体とても大変な仕事なのだと思う。(これまた日本のTV局のわけのわからない禅問答的なインタビューを聞くとそう思うのだが)それを演技をすることで飯を食っている俳優にやらせるとは。

私が面白いと思ったのはその結果である。

「ゴールデン・タイムの放映としては、男性のストリップで話題となったコメディ映画「フルモンティ」(FOX)をわずかに上回っただけで、ABCのほかの番組を含め、CBS、NBC、FOXなど大手TV局のほかのどの番組よりも視聴率が低かった。」(CNN.CO.JPより)

日本で藤原なにがしという女優が総理大臣にインタビューした場合の視聴率はどの程度のものであろうか、と考えるとなかなか興味深い。

 

さて、そのClintonであるが、自らの任期切れ待ちの日々をパロディにして作ったビデオ、The Final Daysには死ぬほど笑わせてもらった。(これもCNNのサイトでみることができる)Clintonが記者会見をしている。何か質問は?という次のシーンで記者席が映し出されるといるのはたった一人。しかも上を向いて大口をあいて寝ているなどは爆笑ものだ。

私は「人間世で”余裕”は結構重要な役割を果たす」という信条ももっているが、「余裕」とは「自分を笑い飛ばすことができるか」ではかることもできる。そうした面からみれば確かにこのビデオは「自分を存分に笑いとばした」傑作だ。

Clintonとはどんなやつか、と考えたとき米国の大統領としての才能-短期の経済面を除いてだが-はともかくとして、一隣人として観ればなかなか愉快な奴なのかもしれない。 

 

2000/5/18

さて、Clintonの力作"Final Days"は何故か日本のTV局でも放送された。それを放映した時、ニュースを扱う番組に何故か座っている「かわいい女性タレント」は

「えっ?何がおかしいんですかぁ」

といった風情で「きょとん」としていたのがこれまた笑わせてもらったが。日本では「幼稚さ」を強調し「かわいー」さえ言ってもらえればいいので、それでもいいわけだ。

親愛なる小渕前総理の葬儀には普段着の参列者も多くいたとのこと。生前の人柄がしのばれるというものである。努力の半ばでさぞかし無念であっただろう。いつか大平総理が死んだときは自民党が大勝した。あの鈍牛のごとき大平君で大勝できるのだから、「人柄の小渕」であればいかほどの効果があろうか。今回も「弔い合戦で大勝」をねらってはいるのだろうか。

しかしそれをぶちこわすがごとく親愛なる森君はあれやこれやとやってくれる。

「嘘をついてもいいんだろ」

は悪い冗談ではないかと思った私だが

「日本は天皇中心の神の国」

には腰が抜けそうになった。こうした危急の事態においては、トップにたてるのは後ろから順番、と聞いたことがある。いつかの宇野君の時もそうだったが、森君も名前はうれているが実はこんなことでもなければとても総理にはなれない器の人間だったのかもしれない。そう考えれば各派閥が「森なら良い」といって一致して押すということは、よほど誰もが異を唱えることができないほど優れた人か、あるいは「どうでもいい」人かどちらかで、おそらくは後者なのではないか。

思えば同じように皇道派、統制派両方から「まあいいのではないか」で承認を得、歴代最低と言われた川島陸相のときに2.26事件は勃発した。森君が大過なく(小過はもうたくさんやっているが)首相の座を退いてくれることを祈るのみだが。あるいは大過が起こっても2.26事件の時の川島のように

「卑怯とも思えた態度は案外功を奏した」

と言われるようになってほしいものだが。

 

2000/6/3

さて、めでたく解散総選挙である。いいかげん解散のときの「万歳」はなんとかならないものかと思うが、これから地獄のような選挙戦に突入する議員さん達の心境は我々には理解しがたいものなのかもしれない。これで引退が決まっている人たちはそれこそ「万歳」の一つくらい唱えたいところかもしれないが。

親愛なる森君は応援演説も断られるそうだから、のんびりと残り少ない首相の日々を楽しんでくれればいいと思うのだ。仮に自民党が勝ったとしても森君がそのまま長々と居座ることはあるまい。。。と書きたいところだが、細川やら村山のような人間が総理になる国だから、正直何がおこってもおかしくないのだが。

小渕総理の死去で逆風に吹かれ、森君の失態で追い風をうけた民主党だが、こちらも

「あんたたち。もうちょっとまともな事は言えないのか」

という情けなさ。公明党は特定の宗教団体に結びついているから憲法違反などと言えば、野中君に「てめえは自分が新進党の時その憲法違反の政党とくんでたじゃないか」とたちまちけっとばされる有様。

「抵抗野党」という言葉は民主党にも等しく当てはまり、そしてそれにふさわしい言葉が元自民党の人間の口から発せられるのが皮肉なところだ。人間自分がおかれた地位によって、どうにでも変わってしまう物か。同じ人間が政権にいれば、政権にいる人間にふさわしくふるまい、野党になれば、自分では何もできない野党らしくふるまう。便所にいるネズミはおどおどし、倉にいるネズミは悠々とする。自己の確立だ何だの言ったところで所詮同じほ乳類だからそうした点において大差はない。

一時的とはいえ「日本は神の国」などと発言する人間を総理にするような政党に投票したくはない。しかし便所のネズミがいつまでも「神の国」などと想像力に欠ける言葉を繰り返したとき私は誰に投票すればよいのか。

あまり期待はしていない。しかしこれから数週間同じ陳腐な言葉を繰り返すよりは少しは想像力というものを発揮して「おや」と思わせてほしいものだが。

 

2000/6/17

親愛なる金正日同志は金大中大統領をめでたく迎えることができた。この間に放映された映像で一番おもしろかったのは、共同宣言にサインするさい、金正日のとなりに座っていた男が、金正日がサインする手元を非常に心配そうにみつめていたことだが。

不思議なことに今回の一件で「金正日に関する今までの見方は見直さなくてはならない」という声が特に韓国側から聞こえてくる。今までどういう見方をしていてたのかわからないが、日本語に訳された彼の会話を見る限り、その言葉の意味はN○○言葉と同じく全くくみ取り難い。原語で聞くとどうなるのかわからないが、私のような素人北朝鮮オタクからみると、今回放映された金正日の姿は以前からの印象を変えるものではないのだが。

調印後の金大中と二人で写っている映像も興味深かった。誰がどう観ても金大中のほうが立派な人間に見えるからだ。いままでみた映像では彼は基本的に一人でたっていて、比較の対象がないからそれなりに立派にも見えた。しかしああやって金大中に手など握られてしまっては、彼の人としての風貌の貧弱さは丸出しだ。そして誇らしげに成果をアナウンスするのは金大中ひとりで、金正日はにこにこしているだけだ。あの映像を北朝鮮で放映したら、その結果は親愛なる同志にとって心配なものになると思うのだが。あるいはあれが彼なりの「人間宣言」であってくれればよいと思うのだが。

今回の会談を「予想以上の成果」と称する声は多いようだが、実際にどれだけの成果があがるか、あるいはこの会談に意味があったのかどうかは時間をかけてみるしかない。今観えている成果は8月15日の離散家族の面会だけなのだ。

あるいは今回は誰も何も期待,あるいは「予想」していなかったから「予想以上の成果」となっている感もある。北朝鮮が普通の国としてふるまうことを期待され始めたとき、彼らの「普通の国」としては異常な行動はどのようにとられるのだろうか。

いつの日か平和裏に統一ができればそれほどありがたいことはない。しかしそれまでに何年の時間をかければ良いのだろう。そして東ドイツでおこったような

「国家に忠誠を尽くす」とされていたことが、「人としての行い」から評価され、糾弾される

事態が恐ろしい数といきおいで起こるに違いない。願わくば東西ドイツの例から十分な教訓を学び取ってほしいものだが。運河のゲートをひらくようなもので、それまでに両側の水位を或程度接近させておくべきだと思うのだが。

 

そうこうしている間に皇太后逝去のニュースがかけめぐる。公の場所でお姿を拝見しなくなってひさしく、かなり前から「老人特有の行動が観られる」と聞いていた。共産党不破委員長の

「同じ時代を生きた人間として弔意を表する」

というコメントは私も同感とするところだ。

祖父が死んだときにかけつけてくれた救急隊員の言葉を思い出す。祖父はもう死んでしまっていて、何をすることもない。かといってすぐ帰らずに彼らは居間にしばらくいた。そして祖母が「昨日はミルクをこれだけ飲んで。。」と話している言葉に耳を傾けてくれた。

そのうち一人が私に向かってこういった

「こういう言い方はなんですが、やはり順番ですね」

97で老衰による死亡であれば大往生か。

 

2000/6/23

一部には「米国の陰謀」との声もあるが、二人の金がだきあった時に妙な団体の理事が放射性の鉱物をしこたま隠していたことが発覚した。そして「輸出先は北朝鮮」。確かにタイミングとしてはこれ以上のものはあるまい。たれ込んだのが「金銭トラブルを抱えていた男」だか「CIA」だか知らないが、こうした事が発覚するたびに、

「平穏に見えるこの国でも妙なことがたくさん起こっているのだな」

と思う。いつかの保険金殺人の時も同じ事を考えたが。

 

さて、街をうるさくしている選挙である。最近、政治関係の記者はきっと森首相のすべての言葉に注意を払っているに違いない。「国体が守れるか」だの「寝ていろ」だのとにかく失言が止まる気配がない。逆にマスメディアという餓鬼にとっては、おいしいごちそうが総理として歩いているようなものだ。これだけ非難されても失言が止まらない、ということは、彼は思慮の足りない軽薄な人間である、ということか。

さて、それはそれとして今のところ自民党は圧勝の予想がでている。一人の選挙民として鳩山氏の言動を観ていると

「いくら自民党に投票しないとはいえ、民主党はいかがなものか」

と思ってしまうのはいたしかたないところか。しかし自民党が勝ってしまうと(これは彼らの唯一最大の目的なのかもしれないが)森君の首を切るのが困難になり、いたしかゆしといったところか。あるいは消費税引き上げまでを担当していただきその後に首を切る、という手もあるのか。

私のような選挙オタクとしては、日曜日の夜が楽しみ、といったところだが。いつものことだが、勝っている党の党首は自慢げに写るが、負けている党の党首は同じ敗戦の弁を何度も何度も繰り返している。そこで切れて怒り出せば恥の上塗り。彼らがどういった人間か知らないが、同じ人間として多少は気の毒にもなるが。

さて、他の国に目を向けよう。何かとHotな隣国ではなんと医者がストライキを起こしている。患者の命を救うのが医者という職業の基本線であるはずだ。理由はともあれ、彼らは診療を拒否し、目の前で死んでいく患者に対し「文句は政府に言え」と言うつもりなのか。自分の主張のためであれば自らの職業の誇りや患者の命すら捨て去るというのか。

隣の国には隣の国の倫理があるのだろう。私が知る限りかの国の「我の強さ」というものは「和を持って尊しとなす」のこの国とは桁違いである。そしてこの国に生をうけた私としては

「そうして我ばかりはっていると」

と言いたくもなるのだが。

 

一方米国NBAではL.A. Lakersが久しぶりの優勝である。JordanとChicago Bullsがのした90年代は終わったのだな。その直後さっそく暴動も起こってくれる。まああの国特にLos Angelsではこれはお約束というところだが。

ついでに米国の貿易赤字が過去最高だかまあそれに近い高水準で推移していることも報告された。日本の貿易黒字は多少減少したらしいが、それでも結構な額である。もっとも日本の貿易黒字は今に始まった事ではない。だいぶ前、米国の景気が悪かったときは

「米国の景気が悪いのは、日本がしこたまもうけているからだ。見ろ。この日本の貿易黒字の額を」

とやいのやいのの非難を受けた。私も「そうか。あまりもうけてはいかんのか」と思った物だ。ところが一旦自分たちの景気がよくなれば、そんなことはどこ吹く風。そして

「景気がいいのは、IT革命による生産性向上によるものだ」

と自慢顔。企業の株価でもそうだが、それが好調、あるいは絶頂期にあるときは全く的はずれな賛美理論がまかり通る。そして「本質的にそれは何だったのか」が本当にわかるのはそれが崩壊した後なのだが。

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注釈

日本の芸能の基本は「素人、幼稚、内輪受け」:(トピック一覧)「基本」であって「すべて」ではないのだが。本文に戻る

 

禅問答的なインタビュー:スポーツのインタビューはさらに簡単だ。

「おめでとうございます。今のお気持ちは」

「勝負が決まったとき何を考えていましたか」

「応援してくださった皆様に何か一言」

相手が何を答えようとこれだけ言えばいいのだから私だってできる。(いや、私にはできないか)本文に戻る

 

人間世で”余裕”は結構重要な役割を果たす:(トピック一覧)最近、自己弁護と他人の非難しかしない、余裕のかけらも感じさせない人によくでくわすので、よくこのことを考える。本文に戻る

 

短期の経済面を除いて:しかし米国の選挙民にとってみれば、これが唯一最大の大統領の仕事なのかもしれない。本文に戻る

 

便所にいるネズミ:史記 李斯列伝(参考文献一覧)より。「人の賢と不肖は、たとえば鼠のようなもので、身を置くところによって決まってしまうのだ」本文に戻る

 

以前からの印象北朝鮮 その衝撃の実像 参照のこと。本文に戻る