題 名:私のMacintosh

五郎の入り口に戻る

目次に戻る


43 章:WWDC2007

というわけで、なんとかWWDC2007に参加することとなった(経緯 についてはJavaDiaryのこ の章を参照のこと)

5月に海外出張をしたのだが、最寄りの駅から成田までの電車賃をケチろう として、かなり大変な目にあった。というわけで今度はおとなしく成田エキスプレスに乗る。ぼーっとしていたら成田空港についた。

予 定ではとっても早く到着して、ラウンジでのんびりするはずだったのだが、チェックインをすませたらもう結構な時間になってしまった。ちなみにチェックイン は機 械であれこれやれば終了である。その際滞在予定の住所を入力させられるとは思わなかった。あれこれ神経質になっている事情は理解できるが、それだったらI -94に手書きで記入する住所は省略させてもらえないだろうか。

残 りは一時間半ほどだが、とりあえずラウンジに行 く。すると結構広くおま けに多くの席にコンセントがついている。しかし誰も有線のイーサネットなど接続していない。JALの時はイーサネットを接続できる席が少しだけ存在してい たが、ここはどうなのだろう。中を歩き回ってもそれらしきコネクタがない。しょうがないからきょろきょろしつつある席に座ると、隣にいた人が "Wireless" と教えてくれた。礼を言って使いだすと確かにちゃんとつながる。快適なので長居してあれこれしたくなるが、そんな間もなく出発の時間となる。

か くのごとく地上の設備は快適だったが、 、飛行機に乗ると今度は設備が10年前くらいに戻った気がする。ビデオの早送りもできないし、好きな時間に見始めることもでき ない。おまけに隣に座ったのは巨大な白人の若者で、なんだかこちらにはみだしてくるような気がする。飛行時間は8時間ちょっとのはずなのだが、オランダに 行った時の12時間よりもはるかに長く感じた。とはいって何事にも終わりはあるもので、そのうち陸上の上を飛び始める。どこかでみた建物があるなあ、と思 え ばStanfordだった。そこから北上してSan Fransiscoに向かうのだそうな。

い つも飛行機に乗る前は「はたして無事に到着するのか。海の上に不時着したら泳がねばならぬ」と不安にかられるのだ が、幸運なことに今回も無事着陸した。となると次の関門は入国審査である。やましいところなど何もないから堂々としていればいいのだが、不安にかられるの は私の得意技というものである。待っている間前の人の様子を観察する。えーっとああいうふうに指紋をとり、写真をとるときは眼鏡を外すのだな。そういえば 一時日本で「外国人の指紋押捺はけしからん」とかいう議論があったが、911以来全く聞かなくなったなあ。外国人の指紋押捺がいけないのなら米国のこれは なんなのだ、と言ってもやりたかったが。

とかなんとか言っているうちに私の順番である。何し にきた、と聞かれるからカンファレンスに出席するのだ、と答える。何日だ、と聞かれるから2日間と答える(San Fransissoでは確かにそれだけなのだ)何か言うが聞き取れない。もう一度聞くと

「い ちまんどる?」

と か言っている。そんな金があれば私がほしいわい、とはもちろん言わない。「くだもの?たべもの?」とか聞かれるが全部noと言う。指紋をおせ、というそぶ りを見せるから素直に指をのせる。写真を撮り終わると無罪放免である。すべての荷物を自分で持っているから延々とターンテーブルで待つ必要もない。こち ら、とおぼしき方向に歩いていくと外に出てしまった。その昔国際線の出迎えには何度も行った物だが、その頃とはだいぶ構造がかわってしまっている。前はバ ゲージクレームで待っているところを外から見ることができたものだが。

などと感傷にひたって いる場合ではない。これから目的地というかホ テルの近くまではBARTという地下鉄というか鉄道で行くのだ。前にも一度だけ利用したことがあるが、最近空港までのびたらしい。こちらこちらと思って歩 いていくとすんなり見つかる。そこでしばし首をひねる。周りに誰もいないので、どこで券を買えばいいのか、そもそも運行しているのか確信が持てないこと だ。立ち止まっていてもしょ うがないので券売機とおぼしきところに行く。さて、どれを押すのかとしばらく考えていたら隣に立っていたインド人があれこれ教えようとする。私はここに行 きたいのだ けど、いくらいれてどのボタンを押せばいいのだろうね、と聞くが相手もわからないようだ。というわけで

「間違って も大した額じゃないじゃない」

といいながらあ るボタンを押す。なんだか券がでてくる。それを改札に通すとすんなりゲートが開いた。ホームのほうに歩いていくと何人か待っているのが見え、運行しいてる であろうことがわかる。ぼーっとしているとそのうち電車が到着した。妙に背の低い車両で、巨大な米国人などここに本当に乗り込めるのか、などといらぬ心配 をする。乗り込んでみると例によって乗客はバラエティに富んでいる。日曜だからかどうか知らないが、車内はすいており、これなら痴漢えん罪に巻き込まれる こともなかろう(日本で電車に乗る時はそんな心配ばかりしている)ぼーとするがあまりリラックスするわけにもいかない。Powell St.とかいうところでおりねばならぬのだ。途中霧がかかっておりなんとなく寒そう。乗ってくる人たちも上着を着ていたりする。そうだよなあ。San Fransiscoの夏って寒いからな、と上着をきる。

とか考えているうちに目的地につい た。改札をくぐりぬけると意外にも外は晴れてい る。さて、どちらだろうと少し考えた末に歩き出す。しかしどうやら通りを一本間違えてしまったようで、少し進んでから角を曲がる。思ったより寒くないこと に気がつく。一枚脱ごうと思うが変なところで立ち止まるのもいやだ。そのまま進み続ける。そのうち映画館とおぼしき建物が前方に見えてくる。今回あれこれ 調べ た中に「会場の向かいには映画館があり、時間があまった時に見るとよいです」とか書いてあった。ということはあれがそれかもしれない。近づいていくと確か にそうだった。そこからしばらく歩くと今度はリンゴのマークがたくさんついた建物にたどり着く。

会場

途 中ドアがあるから開こうとするが空かな い。どうやら入り口は一カ所のようだ。そこまでまわりこんで中に入る。左手にregistrationのカウンターがならんでいる。アルファベットでカウ ンターが区切られており、こういうのもいいなあ、と思う。Oが該当するところに行き、パスポートを出すとちゃんと私の名前があったようだ。バッグをくれ る。Tシャツのサイズは何だ?と聞かれるからLと答える。そこで多分カンファレンスの内容はNDAでどうのこうのと言われた気がする。何かにサインでもさ せられるのかと思っていたが、この注意事項だけのようだ。礼をいって受けるとそこでのお仕事は終了。しかし窓際には何人かが床に座りPCを開いている。 きっと無線LAN があるに違いないと思いMac Bookを開いてみると簡単につながった。やれうれしや。家に無事ついたことを告げるメールを送る。このまえの出張はこの一通目のメールを送るまでが長 かったなあ。しばらくぱたぱたやるとそこを後にする。さて問題です。今は10時前。これからチェックイン可能な3時までどうやって時間をすごしましょう。 ここはやはり映画でしょう、というわけで目の前にある映画館に入る。何をみようか。チケット売り場には、タイトルと時間が書いてあるが、それだけからは何 もわからない。まようことしばらく、300という文字が目に入る。これは日本でも今週末封切りされたばかりの映画で、みたいと思っていた。チケットを購入 すると指定された階にあがる。

この映画の感想についてはこちらをご覧いただきたい。平たく言 えば「ゴミ映画」という感想を持ったのだが、 それは問題ではない。2時間近く時間をつぶすことができたし、それにかかる金も日本でみた場合よりもはるかに少なかった。というわけでそれ ほどがっかりしたり怒ったりするわけではない。下の階におりてStar Bucksでパンを食べコーヒーを飲む。まだ時間がある。何をしよう、というわけで近くにあるAPPLE STOREに行ってみる。WWDCの鞄を持った人間だらけかと思えばそんなことはなく、普通の人でにぎわっている。特に買いたい物もないからぐるっと一回 りしただけである。まだ時間がある。何をしよう。会場に戻ってインターネットであれこれしているか。というわけで会場に戻り床に座り込んであれこれする。 ふと隣に座っている人間が持っているPCを見ると何かがおかしい。何がおかしいといってMacではなくPCなのである。考えてみればこのWWDCでは初め てMacの開発をする人用のコースだってあるのだから、PCを持ってきても何もおかしくない、と頭ではわかっているがやはり変な気がする。

ま だ3時にはなっていないが、とりあえず行ってみるか、とホテルに向かう。幸運にも会場から歩いてすぐのホテルが予約できた。小さなホテルだが感じは悪くな い。予約してますよん、というとあれこれやって難なくチェックインできた。部屋に入ってみるとその狭さに驚き、そして一泊$159もするのにシャワーだけ なのに驚く。(後で気がついたのだが、フロアごとに共用のバスタブがあるようだ。しかし共用の風呂ならともかく、共用バスタブってどうやって使えばいいの だろう か)しかし今の私にとっては荷物をほどき、くてっとなれる場所があるだけで幸せだ。ベッドの上に座りほけっとしていると眠くなってくる。しかしここで欲望 の赴くままに寝てはいけない。それをやるといつまでたっても時差ぼけがなおらないのだ。とはいえやることはないし(本当はあるのだが、やる気が起きない) この眠さをどうしてくれよう。というわけでなるべく熟睡にならないような姿勢をとる。これならば寝ても恐ろしいことにはならないだろう。うつらうつらして いるうちよい時間になったようだ。5時からApple Japan主催の懇親会があるのだ。地図を見て行き方を確認するとてくてく歩き出す。

場 所はチャイナタウンの中らしい。途中土産物屋をのぞいたりしながら歩く。米国に住んでいる人間にとっては「オリエンタル趣味」のものがならんでいるのだろ うが、日本のものがそのまま脈絡もなく並べられていたりする。こんなところで日本製品をわざわざ買ってどうする、ってそういえば昔ハンツビルでキティちゃ んのおみやげ買って帰ったことがあったな。

などと考えているうち、よい時間になったので目的地とおぼしきレストラ ン に向かう。すると店の前にWWDC と書かれた紙をもった女性がおり5Fです、と案内をしてくれる。感謝感謝である。

そ れからしばらくの間、中華料理を食べたり、ビールを飲んだりして楽しくすごした。考えてみればまともなご飯を食べたのは何時間ぶりであろう。というわけで やたらとぱくぱく食べる。本当に米国で食べる中華はおいしいなあ。これと比べると日本で食べる「中華料理」は日本食と呼ぶべきではなかろうか。

帰 り道ホロ酔いでご機嫌であるが、もちろん日本でやるように酔っぱらったりするのは論外である。てくてく歩きまた会場に戻る。まだRegistration は空いているようだ。インターネットに接続しメールをチェックすると部屋に戻る。というわけで長い長い一日がようやく終わった。風呂にも入らずくてっと寝 てしまう。


これで朝まで熟睡となればめでたいのだが、もちろんそんなに話はうまく進まない。 目がさめたので時計を見れば12時だ。夜中の 12時。ということは3−4時間しか寝ていないではないか。ああこれが時差ぼけという物であった。それからぎっこんばったんベッドの上でひっくり返った り、 TVをみたりあれこれしているうちに少し眠ったり起きたりする。そのうち自棄になり

「ええい、どうせ眠れないのだ から基調講演にならんでやる」

とホテルを後にする。時間は5時半近く。あたりはもうすぐ夜明けといったところか。

夜明け

AM: 05: 21

Moscone Center Westに向かうと建物にそって人が並んでいる。数十名といったところか。建物にそって並んでいるから腰がおろせるかと思えば、そこらへんが(おそらく清 掃のためと思うが)ぬれている。だからぼけっとつたっているしかない。しかし基調講演は10時からだから、あと4時間半もあるではないか。などと考えても いまからいかんともしがたい。ただトイレに行きたくなる事態だけはさけたい。さんざん並んだあげくトイレにいって並んでいた場所が消えては元も子もないの だが、私は トイレが大変近いことでも知られている。ということで、ちょっとコーヒーなど飲んでみることもできない。はてどうしたものか。
そうだ。ひょっとするとここで も無線LANが使えるかもしれない、とMac Bookを取り出す。切れ切れではあるが、つながっているようだ。ではゆっくり時間をつぶそう、とはならない。私はたったままなのだ。片手でPCを持ちな がら使っているとそのうち落としそうな気がする。適当なところでしまう。

そのうち誰かが「3 列に並んで前につめて」とか言う。後ろは見え ないがきっと列が長くのびているのだろう。待つことしばらく、昨日Registrationの時「明日は7時に開くから」と言われたその時間に確か にドアが開いた。誰かが拍手をするがほとんどの人はただ先を急ぐ。途中でバッジをチェックされる。Studentと言われた人は列から出され、別のところ にいけ、と言われているようだ。理由はしらないがこれが学生割引の代償ということなのだろうか。扉をくぐると広いエリアにでる。どうやら昼食をとるエリア らしい。そこをぐるっとまわると列はまたストップする。閉められた扉の前で待つことになる。しかし床はぬれていないし、無線LANも快調につながるから状 況は改善されているのである。周りでは何人かが携帯電話でしゃべっている。その光景を見てどこか変に感じる。外で立っていた時もそうだったが、いったいだ れとしゃべっているのだろう。今日は平日なのだが。また日本にいる人ならここでメールをうち始めるところだと思う。

1階のドア

AM: 07: 09

そ のうち門があいて人が歩き始める。エスカレーターで2階に上る。列の先頭近くにいるので、後ろを振り返るとなかなか見晴らしがよろしい。

振り返り

AM: 08: 07

そ こから誘導されるままぐるっと広い会場を一周したと思う。通路の脇にはパンや飲み物などがワゴンに積まれている。ここからはこの時の様子を電話で説明して いた人の言葉を借りよう。


「通路の脇にパンとか置いてあるんだけど、みんな立ち 止まって自分の位置を失いたくないからマラソン走者みたいに走りながらとっていくだ。とっても面白い光景だったよ」(意訳)


か くいう私も二つばかりパンをとって食べた。おしっこにいきたくなると困るから飲み物はとらない。そのうち3F行きのエスカレーターが見えるところでまたス トップになった。

再び停止

AM: 08: 54

こ こではかなり長い間立ち止まっていたように思う。2列×3の長い長い行列を作らされる。そのうちとうとう列が動き出した。しかし動いたのは一番左の列だけ である。他の列にいる人間がからブーイングが飛ぶ。しかしすぐその理由が明らかになる。その後動き出した他の列も結局エスカレーターの手 前で再びストップすることになったからだ。最初に動いた左側の列は、反対側にあるエスカレーター(少し遠いところにある)に向かっていたのだ。

Last Escalator

AM: 09: 25

こ こまでくればストップして待たされるのにもなれっこである。ただひたすらまっているととうとうエスカレーターにのって列が進みだした。見下ろせばたくさん の人達が。再び高いとこ ろからまだ「下界」に並んでいる人たちを見るのはなんとなくご機嫌である。人間高いところにいると傲慢になるわけだ。エスカーレーターが3Fに到着すると 「走らないで、ゆっくり歩いて。席はたくさんあるから」とかなんとか係員がいっている。しかし誰も走っているわけでもない。「これ以上ゆっくり歩けるか」 とかいう声も聞こえる。会場となる部屋はとても暗く、かつ平坦なためなるべく前に行った方がみやすいだろう。半ばあたりに大きなスクリーンも下がっている が、せっかく朝早く起きたのだから実物をこの目で見たいではないか。なるべく前にいこうとすると、一番前のエリアの前には「VIP」という看板を持った人 がいることがわかり、既に人も座っている。この人たちはどこから入ってきたのだろう。そのすぐ後ろの列は既に塞がっている。通路に面した席でなるべく前の ところを探して座る。ああ、柔らかい(床に比べれば)椅子ってすてき。

ようやく座った

AM: 09: 40

そ れからどんどん人が入ってくる。どうやら人をつめて座らせること だけをミッションとしている人たちがいるらしく、開いた席があると指を一本とか2本とかたてて合図を送っている。私の前に誰が座るかと思えば、とても巨大 な人間が座った。彼はどうやらMac Book Proの17インチを持っているらしいのだが、彼が持っていると12インチにしか見えない。まあなんとか見えるかな、と思っているとその人を含む一団がご そっとVIPエリアに移動した。その後に座った人間も日本での感覚からみれば巨大なのだが、前にいた人と比べると5割減といったところである。


などとあれこれ考えながら椅 子に座っているのはらくだ。この時点で既に並び始めてから4時間半たっているので時間の感覚が麻痺している。まもなく暗くなったと思うと前方スク リーンに映像が映し出された。

米 国で放映されているMacのCMでPCを演じている男が黒シャツ、ジーパンで"I am Steve jobs"とか言っている。私は辞任する。Appleも閉鎖する。なんたってVIstaはtens of doezens of でうれているから(ここは当日聞き取れなかったが、後でdozensでなぜそんなに笑いが起こったかを知った)おまけにiPodキラーもある。Zune だ。そういいながら、くるくるまわしながらイアフォンのコードをのばす。茶色だし。(ここで茶色かつコードをくるくるまわしながらのばす様子がこんなにも ダサいことを思い知らされる)その後なんだかんだと会話があった後にMacが登場。何やってるんだ?とか言われて、最後にPCがI am Phil Schillerとかいったところで場内爆笑である。


その後Steve Jobsが登場。しゃべり始める。最初にIntel の CEO に「よくやったでしょう」の記念品を渡す。Appleでは特にこうしたものは作っていないから、アイブスに作ってもらったとかいって記念品を渡す。 Intel CEO はそれを受け取り素直に帰っていく。あの男わざわざこれをやるためにここまできたのだろうか。その後ゲームがMac上でも発売される、とか発表がなされ る。私はゲーム業界、とくに米国の事情には疎いので、「これがMacで発売されるんだ」とタイトルがアナウンスされるたびに周りの人間が「おおお」とか言 うのをただ聞いているだけである。
その後説明はLeopardに移る。後で振りかえってわか ることだが、Liveの威力というものはすご いものだ。冷静になって考えれば、以前から言われていたようなTop Secretといった大規模な変更はなく、小規模かつ効果的な改良がなされていることに気がつくのだが、みている最中は「これはいいぞ」と思っていた。い や、いまでもそう思っているのだが、みている間はその「いいぞ」が100%増しだったのだ。

さ て、Leopardの機能説明で一番受けた のはiChat Theatreだった。何が面白いといって付与できる特殊効果が面白いのである。Star Warsのレイア姫のホログラム風効果でまず大ウケ。次に写真の口の部分だけを実写に取り替える機能で大ウケ。これは最初ジョージワシントンの口だけフィ ルシラーに置き換えていた。それが終わると今度はSteve Balmerの口部分だけとりかえる。場内大喝采である。これも後で冷静になって考えてみればそんなにものすごいことではないのだが、しかしその見せ方の うまさには本当に感心する。


その後Steve Jobsが現れ10月に発売する、と言う。値段はBasic Versionが$129。といったところで会場に微妙な空気が流れる。Premium Versionといったところで不満の声が上がる。なんだそりゃ。まるでVistaじゃないか。冗談だろ。しかし今から思えばここでSteve Jobsはわざと間を空けていたのだ。$129、といったところで笑い声が上がり始める。Business バージョンは、エンタープライズバージョンは、と続くがここでこれがVistaを皮肉った冗談であることが皆にわかり大爆笑、大歓声がおこる。この日一番 の大ウケでSteve Jobsの声が聞こえなくなる。Utlimate Version $129。ほとんどのユーザーはUltimate Versionを使うと思う、といったあたりでようやくJobs の声が聞こえ始める。といったところでLeopardの話はおしまい。ここで恒例のOne More thingがでる。そうだよ、ここでiPhone SDKを発表してくれ、と思っているこちらの意図などもちろん向こうは知る由もない。画面に映し出されたのはSafariのアイコンだった。なんだこれ は?

そ れから発表されたのは誰もが予想していなかったSafari for Windowsである。最初聞いた時は?と思った。それがどうしたんというのだ。Mac, WIndows, iPHoneでSafariが動くというのはわかるけど。このことについて自分なりの考えを持つようになったのはこの日の終わりのことである。

そ んだけか?と思っていると今度はOne Last thingとでてくる。をを、ここで絶対iPhone SDK の発表だと思っていると確かにiPhoneの画像がでてくる。これだこれだ、と思っていると話は確かにiPhone上での開発に向かう。しかしその内容は 「そうきたか」と思うようなものだった。Web2.0のアプリケーションをiPhone で動かすことができる。をいをい。確かに最近個人的にもWebアプリケーションを使うことが多いけど。それだとCore animationを使うことができないじゃないか?それだと別にSDK もいらないし、今から作り始めることができる、とは確かにそうだけど。それからそうしたアプリケーションの例が示される。確かにそれはiPhone上の Native  アプリとあまり違わないように思うけど。

といったところ で基調講演はおしまい。会場からでたところで、昨日の 懇親会で知り合いになった人と会いいっしょにご飯を食べることにする。私はすぐにでもregistrationに行ってLeopardのβDVD を受け取ろうと思ったのだが、その人が言うには先に昼ご飯食べて、それから受け取った方がよいと言う。確かにその通りだ。早く受け取っても何の意味もない し、だいたい今は混んでいる。今朝通ってきたところが食堂になっており(あまり食堂という語感はふさわしくないと思うが)そこでみんながなにか食べてい る。我々も場所を探し食べながらあれこれしゃべる。あれは何なんでしょうね、とかなんとか。それが終わってRegistrationに行くとがらがらであ る。確かに助言に従ったのは正解だった。受け取ると一旦ホテルに戻る。電源が使えるところで心置きなくインストールしたほうがいいではないか。ホテルが歩 いて数分のところにあるのは幸運であった。このためにわざわざパーティションを分けておいたのが今こそ意味をなす時だ。というわけでごそごそインストール する。とこれ以上書くとNDA がどうのこうので困るといけないので書かない。

というか秘密保持について言われたことに従うと、 基調講演以外は何も書いてもしゃべってもいけないことになっている。というわけで書かないのであった。しかし多分いくつかの印象的なことを書いても殺され ないと思う。
そ れからいくつのセッションに参加する。ものすごく眠いものもあれば、とても面白いものもある。しかし一つのセッションについて書かないわけにはいかない。 説明が一区切りついたところで普通なら画面にQ&Aとかコンタクトリストが表示される。しかしそのセッションでは

"Song"

と 表示されたのだ。なんだこれは?と思っているとそれまで快調に説明をしたきた男がギターを持ち、もう一人ギターをもった男がでてきた。彼が言うには感情を 表現するのに一番いい方法はアップテンポのウェスタンだ、と言う。観客の中にはそれに同意しない声もあったようだが、そんなことにはかまわず彼は歌を始め る。それはそこにいた開発者にしかわからないギャグで満載の歌である。途中で気がついたのだが、ちゃんとスライドも連動していて歌に従って愉快な画像が表 示される。途中でいくつか言葉を連続して続けるところがあり、ちょっとつまづく。すると「画面を戻してくれ」といって画面を戻す。歌い手がいうには

「いや、この歌詞はまだベータバージョンなんだ。正式版は10月にでるか ら」

場 内大受けである。これが計画されたものでなかったとすれば(観た感じでは純粋なアクシデントだったが)この当意即妙のコメントには感心する。そこから歌は さらにつづき、ほとんどラップのように早口でいろいろなことをまくし立てる。APIを腕に入れ墨したんだ。それだけじゃ場所がたりないからおでこにも彫っ た、とかいいながら画面をみると確かにそんな写真が出てくる。見事な芸としかいいようがない。曲が終わると会場総立ちで拍手である。

米 国でこのような「素人芸」を観るたび思うことだが、この国の「芸能」の幅と深さは我が国のそれの比ではない。日本の「芸能人」とか称する輩の9割はこの人 より「芸」がないことにかけてもよい。

な どとあれこれやっているうちに、San Fransisco を去る日がやってきた。アメリカにきて3日たつのにまだ時差ぼけは治らない。まあいいさ。飛行機の中でよく眠れるだろう。朝8時前にBARTに乗る。通勤 時間帯なのだろう。この前よりは人がたくさんいる気がする。しかしもちろん日本のラッシュアワーのようなことはない。ぼんやりしているうちに空港につく。 さあ、次はWashington D.C.だ。

前の章 | 次の章


注釈