日付:2003/2/17
私が高校生のころ、「勝手にシンドバッド」という色物としか思えぬ題名を持つ歌がはやった。これほど一発屋的な一発屋もいるまい、と思ったら彼らはまだすばらしい曲を作り続けている。ともあれ当時は歌詞を舌をからませずに歌えることが賞賛され、結果として彼らのデビュー曲は我々の脳裏に深く刻まれ、今ではカラオケでこの曲が流れるたび、大声量で唱和するのである。
なぜこんなことを考えているかと言えば江ノ島に向かっているからだ。私の頭の中では「江ノ島がみえーてきーた」というくだりが50回は繰り返されている。かくの通り名前はよく知っている場所だが行ったことはないのである。寒風吹きすさぶ中私は駅を下りひたすら歩き続ける。
まず目にはいるのが小田急の片瀬江ノ島駅である。
あちこちのサイトに書いてあることを信じれば当初仮の建物として作られたものが未だに使われているとか。観ているとだんだん頭が痛くなってくるが先に進もう。
橋を渡ると江ノ島である。橋でつながった島というと愛知県蒲郡というところの竹島が浮かぶのである。あそこは島の20%がフナムシでできているような場所だった。ここにもフナムシがいるのだろうか。
そんなことを考えながら近づいていくと、鳥居が目にはいってくる。どうやら島全体に神社があるらしい。道の両脇に並ぶ土産物やら食堂やらを横目で観ながら更に進む。するとこんなものに出くわす。
片岡鶴太郎か、最近みないな、と頭の中で描くその顔はすでに半分竹中直人と混ざっている。気の迷いで入ろうかと思えば入場料が500円とか。誰が500円も払って鶴太郎の「美術」を観るというのか。黙って先に進む。
坂を上ることしばらく、江島神社につく。ここはどうやら縁結びの神様になっているらしく、絵馬にもハートが書かれ、右側、左側にそれぞれの名前を書くようなっている。他に書かれている文句と言えば
「ずぅーっといっしょにいられますよーに!」
とかそんなのばかり。私はこうした絵馬を観るのが好きなのだが、今日ばかりは読んでいるうちに怒りがこみ上げ来る。いや、落ち着け大坪。貴様も今や妻帯者ではないか。うん。わかってる。わかっているけど、長年の独身生活で曲がりきった根性は簡単には直らないんだよ。ぜいぜい、などと心の中で会話をすることしばらく。150円払い弁財天を観る。小さなお堂の中のそれは、残念ながら撮影禁止。ふたつ並んだ左側の方は全裸の神様で楽器を持っている。なかなか綺麗な像だがなんでも鎌倉中期の作なのだそうな。楽器を持っているところから歌舞音曲を生業とする方の厚い信仰を集めているとナレーションがつげるがはたして芸能の方達がここにお参りに来たりするものなのだろうか。
そこを出ると更に奥に進む。植物園があるようだが、現在は改装中でお休み。しかしそこに立っている二つの異様な建造物はいやでも目に入ってくる。
帰ってから知ったのだが、右側が取り壊しが決まっている旧展望台、左が新しい展望台とのこと。しかし両方とも異様な形だ。旧展望台は周りに階段が巻き付き、高所恐怖症の私ではきっと昇ることができなかったに違いない。というかSFにでてくる宇宙空間に浮かんだ構造物を連想させる。
その立て替えとなる新展望台も異様な姿だ。だいたい上部がでかっくて倒れそうではないか。今にして思えばこの両方の塔が立っている時に訪れることができたのは幸運だったかもしれぬ。そのときの私はそんなことなど何も知らるから写真を撮るとただ先に向かう。
結構高低差がある道なので疲れる。途中で引き返す人もいるようだ。そのうちなにやら見えてきた。恋人の丘とか龍恋の鐘とかいうものがあるようだが、それがどうしたというのだ。ケッと思い反対側にあるお宮を観てみる。天井に亀がいる。その横にはこんなものがある。
こう堂々と構えられると笑っていい物やら畏怖するべきなのか判断に迷う。さらに先に進むと下り坂になる。海が見えてきて、岩場に下りることができるようになっている。子供の頃に来ればきっと喜んでかけずりまわったりいろいろしただろうな。ふとしたくぼみがあるのだが結構深かったりもする。こんな所に落ちたら大変だ。
その奥に岩屋という洞窟があることを知る。500円払って入ってみる。途中でろうそくを渡された。持って奥に進むがこのろうそくはあまり役に立っている気がしない。壁際に地蔵やらなにやらある。
一瞬うんこかと思ったが首がとれてしまった蛇のなにかなのだろう。
いったん外に出ると次の岩屋に向かう。途中にはこんなものがある。
看板を読めば亀に似せてほられた石なのだが、誰がいつ彫ったかわからないらしい。故老が子供のころ乗って遊んだことがある、というから昔からあることは確か、ということだがそのいい加減にして真実を感じさせる記述が気に入った。
さて、第2岩屋に入るとなにやら音がする。なんだろうと思って先に進むとつきあたりにこんなものがいる。
ちょっと青っぽいライトが当たっているが、別に動くわけではない。ぴかぴかもしない。スピーカーからは「がおーがおー」とかいう声が流れて限りない脱力を誘う。隣にある看板には
「この場所は龍神信仰の場所として栄えたのでこれにちなんだアトラクションとして設置しています」
と書かれている。読むと脱力は更に深まる。
正直言ってこれを観るまでは
「ちょっと変わってはいるが普通の観光地ではないか。”巡り巡って”のネタとしてとりあげるのはいかがなものか」
と考えていたのだが、はるばる歩いてきて一番最後はこれかよ。というわけでここにこうして書いているわけだ。帰り道は先が解っているのでらくちん。ただ島の北側に戻ると風が強い。今は真冬なのだ。
おまけ:江ノ島にたくさんいる野良猫