日付:2003/2/29
暑さ寒さも彼岸までのはず。なのに彼岸は過ぎたがまだ寒い。おまけに曇り空である。更には風邪気味なのだが、せっかくの休日を無為に過ごすわけにはいかない。家から地下鉄にのり戸塚というところでJRに乗り換え、一駅で大船に着く。
西口に下りるといきなりちょっと黄色がかった色の大船観音が見えるがここは後で。バスに乗り込みしばらくするとその名も「洞窟」という停留所に着く。下りると巨大な看板が目に入る。
よく見ると奥の方に「田谷の洞窟」という看板もあるのだがこの位置からだと圧倒的迫力をもって迫ってくるのはラドン温泉のほうだ。ここでのラドンは鉱物か何かのはずであるが、元怪獣少年としては空をばっさばっさと飛ぶあの怪獣の姿が脳裏をよぎる。しかし今日の目的地はそこではない。看板を通り越し奥の方に歩いていくとお寺があった。
洞窟を観る人は受付へ、とあるので、それらしき場所に行く。誰もいないが呼び鈴を押してしばらくまつ。まもなく人がきて400円と引き替えにローソクをくれた。入り口近くに洞窟を観る時のなにやらが書いてあると言う。洞窟の入り口にはローソクを立てる板がある。でている釘にローソクをつけるとこんな感じ。
その先には入り口がある。中には明かりがほのかに見えている。
洞内は撮影禁止とそこかしこに書いてあり、ここから先の写真はない。入り口入ってすぐ右側に大きなローソクがあり、火をつけることができる。歩き始めるとまず遠くにある光がぼやけたのがわかる。何がおこったかと思えば眼鏡が曇ったのだ。洞窟の中は妙に湿気が高い。進むにつれて音が無くなる。(ついさっきまでは近くにある滝や前を通っている道路から車の音が聞こえていたが)壁には色々な像とおぼしき物が彫られ、ライトのまわりだけ苔らしきものが生えている。
少し歩調を早めるとろうそくの炎が小さくなる。なるほど、ろうそくを持っていると自然と歩く速度が制限されるのだな、などと考えてみたが結構早足で歩いても炎は小さくなるだけで消えない。ローソクを渡されるから真っ暗な中をその明かりだけを頼りに進むのかと思っていたが洞窟内はちゃんと照明されている。
そんなことを考えながら歩を進めるうち湿気はより高く、そして静かになっていく-と書いてはみたが実のところ私の後からはいった二人のおばちゃんの声が聞こえるのだった。ただその声は響くことはなく他の全ての音はどこかにすいこまれてしまったかのよう。
まもなく「行者道」という看板があり、そちらに進めと書いてある。ただ看板にそって進んだり曲がったり。しばらくすると方向感覚は全くなくなる。壁にはのみで彫ったのであろう跡が残っている。
洞窟の途中にはところどころ円形の部屋があり、壁にぐるっと仏像等が彫られている。ある部屋には梵字らしきものが彫ってあった。また別の部屋には「蛟竜」という文字があるので見上げれば龍が彫ってある。ひとしきり部屋の中をみるとまた進む。ところどころ通行止めになっているのだが、それは単に通路を整理するためだったりあるいは先が暗くてよくわからなくなっている場所もある。いくつかの通路の天井は大変低くなっており、腰痛持ちである私に一番つらい中腰の姿勢を強いるのである。とはいってもそこを進んでいく以外に選択肢はない。
奥に進むほど湿気が多くなる気がする。外に比べると結構あったかい。夏には湿気がひどいのかもしれないが、冬にはちょうどいいかもしれぬ。少し下ったところにある部屋では壁から水が噴き出して小さな滝のようになっていた。そこには亀も彫られていている。
そこから少し進むと湿気が薄れかすかに自動車らしき音も聞こえてきて出口が近いことが解る。角を曲がると最初の通路に戻ってきた。遠くに明かりと冷気と騒音があるのが解る。
洞窟を出たところにある休憩所で「田谷の洞窟」という本を読む。この洞窟は元は横穴式住居だったとも古墳とも言われているが今ではわかりようがない。最初は鎌倉時代に彫られたということだが、その後江戸時代に大規模に修復されたとのこと。当時は電球という便利なものがなかったからそれこそろうそくの明かりが頼りだったのかもしれない。
おまけ:トイレにあった看板