題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2005/1/10


子安弘法大師尊像:愛知県(2005/1/3)

てくてく歩き、あるいはタクシーを使って延命山大秘殿に行ったのは2年以上前の事であった。そのとき隣の山に赤銅色に輝く弘法大師像があるのは気がついていた。しかし歩きすぎで気力が尽きていたり、あるいは時間がなかったりで結局行っていなかったのである。しかし今日は時間もあるし、足もそれほど疲れていない。

というわけで一人とぼとぼと歩き続ける。ここらへんは完全な車社会だから歩いているのは私くらいのものである。しかし遙か彼方と見えた像は思ったより早く近づいてきた。そのうち以前到達した同じ場所に来た。さて、問題です。ここからあの像までどうやれば到達できるのでしょう。

道には「弘法大師 金剛山」という看板がでているのだが、それはひたすら東の方を指している。しかし像はここから北に見えているのだ。車だったら大回りもできようが、徒歩でぐるっとまわるのはつらい。というわけで像が見えた方に歩き出す。

そのうち珍スポットにつきものの「急な上り坂」になってきた。正月休みに入ってからというもの、餅とおせち料理を大量に摂取し、運動と言えば実家の2階と1階を往復した程度しかしていない。すぐ足はかちこちになるが、目的地はまだ先だ、というかどっちにあるのかよくわからない。随分さまよったあげく、ホテルの駐車場のようなところに出た。ここからどうしろというのか。後方から鐘の音が聞こえるということは方向を間違えたか。来た道を少し戻る。そのうち参拝道という看板が見えてきた。どうやらこちらのようだ。ぜいぜい、と肩で息をしながら登り続ける。そのうち人がたくさん歩いているのが見えるようになる。その先には巨大な弘法大師像があった。

やれやれ、ようやく到達だ、ということで一息つく。この大師像の周りには、小さな祠が2重に並んでいる。新四国八十八カ所霊場巡りらしいのだが、特に説明があるわけでもない。内側の祠を回るためには大師像横の階段を上るのだが、そこにこんな看板がある。

言わんとしていることは解るが、そもそもここを巡る人はいるのだろうか。正月と言うこともあり結構人は来ているのだが、みな大師像の正面をみるだけである。ちなみに 後ろから足下を撮るとこんな感じである。

大師像に向かって左手には、コンクリートで作られた何かがある。ただし今は鉄の柵でふさがれ、そちらに行くことはできない。

「動物園B級スポット大好き」によれば、ここにはかつてロープウェーがあったとのこと。ということは弘法大師像と延命山大秘殿を結んでいたということだろうか。そんなのがあったら千円払ってでも乗るなどと言う私のような人間は少数派なのだろうな。

再び正面に戻ると、相変わらずの人だかりである。ある家族連れが車から降りると祖父とおぼしき男性が孫に向かってこういう。

「ほら泣け。怖いよー。おかちゃーん、と言わんとかんがね」

小さな子供の頃には泣いたであろう孫は中学生くらいになっており、ただ苦笑している。たしかにこのお顔をみれば泣きたくもなるだろうな。

私は鐘のところに腰を下ろしご飯を食べる。すると男女がよってきて鐘を突き出す。彼と彼女たちは口々に言う。

「やるに やるに」

「つかんと損だら」

ふと鐘を見ると魚の絵が浮き出ている。近くにあるプレートを見ればこの鐘は魚の供養のために作られ、スポンサーは三谷漁業組合とかなんとかであった。

ご飯を食べ終わり、ふと脇にあるものに気がつく。

何かの遊具の残骸である。さらにその脇には土に埋まって屋根しか見えない祠があり、藪の中にはパンダがいる。

ここには昔何かがあったのだがそれが何だったのかは解らない。解らないまま案内図に「遊歩道」と書いてある階段を下っていく。人が使っている気配もないが、少しは綺麗にされているようだ。少し降りるとこんな像がある。

ぐるっとまわってみたが説明も何もなく、この翁が何者かはわからない。近くには陶器製のカップとかが散乱しており、トイレの残骸のようなものもある。

再び遊歩道を降り続けると前方に変な物が見えてきた。

階段がブロックで斜めにふさがれており、その先にも(わかりにくいが)木で作られた障害物がある。遊歩道はこの先行き止まりというか先細りになっている。昔はこの先がどこかにつながっていたのだろうか。

などと考えていると階段にけっつまずく。少し戻るときにまたけつまづく。この階段はピッチが一定しておらず、気を抜いて一定のピッチで歩き出すと必ずケッ躓くようにできている。ううむ、とうなりながら左手にある休憩所(廃墟と化した)につながっている通路を歩き出す。するとさっき来たホテルの駐車場に出た。

帰ってから知ったことだが、この近くには父が務めていた会社の保養所があり、幼い頃何度か来たとのこと。そして確かにここには昔ロープウェーがあり父はそれが廃止になった、と聞いたそうだ。言われてみれば保養所の建物にはどこか見覚えがあるような気がするが、この大師像は覚えてなかったな。

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注釈