題名:巡り巡って
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矢野口駅から電車に乗りかたこんかたこんと揺られることしばらく。川崎で乗り換え鶴見というところにいく。そういえば遠い昔ここにお寺を見に行きたこともあったなあ。ちなみにその頃の私は今のようにひねくれていなかったからまともな總持寺というお寺に行ったのだが。
最初そこから鶴見線というのに乗り換えようとかと思っていた。しかしどうも本数が少ない。これが首都圏の電車かと思うほど本数が少ない。地図をみれば歩いても大した距離ではないし、リモートワーク生活が始まってからというもの私は運動不足なのだ。
というわけでてくてく歩き続ける。地図をみれば太い道をまっすぐいってちょっと左に入るとかそんな感じである。さて、どこで左に曲がったものやらと思いながら裏道をごちゃごちゃ歩く。そのうち目的地と思しき場所が見えてきた。
本当はこの写真は帰る時にとったものだが、心情的正しいからいいのである。kokudo stationという道なんだか駅なんだかわからないJRの駅。道路の上を鉄道が走っている。その下を覗いてみる。
この写真を撮ったのは、なにやら古い建物と思しきものの入り口が塞がれているからなのだが、後で調べれば金網で囲われたコンクリート部にある黒い穴は機銃掃射によるものとのこと。子供の頃「P-51ってすごいんだねー」と無邪気に言う私に向けた父の視線は複雑だった。この機銃を打ち込み地上にいる人間を殺そうとしていたのはそのP-51であったことにこの年になりようやく気が付く。この鉄道下に店、というか店の後がならんでいる。ちなみに反対側の入り口はこんな様子である。
ガラスが割れてはいるが、洒落た丸い窓は当時どのように使われていたのか。そんなことを考えながら中を覗き込む。
このように暗い通路が続いている。両脇にすでに閉鎖された区間もあるが、店舗および店舗の跡地が並んでいる。
「自転車放置禁止」と書いてあるすぐ後ろに置かれた自転車。多分このエリアの持ち主のものだからいいということなのだろう。
男女共用のトイレである。なぜトイレがあるかというとこのすぐ隣にJRの改札があるからだ。私がこうやって写真をとっている間にも電車が到着したらしく、人がたくさん降りてくる。そしてこの文章を書きながら自分が改札の写真を撮り忘れたことに気が付く。
ちなみにこの店は営業中である。11月1−3は休むと張り紙がしてある。
こうやって写真など撮りながら何度か通路を往復する。こんなことをするのは私だけだろうと思っていると、他にもちらほら同じ目的でここにきていると思しき人がいて驚く。
こうした昭和の街並みは、だんだん消えていってしまう。この場所もいつまでこのまま残っていることやら。
できる限りこういう場所を訪問して、その街並みを見ておこうと決意しながら鶴見駅に向けて歩き出す。