日付:2007/8/24
お盆休みである。会社に行かなくてもいいのである。というわけで珍ス ポットを巡らねばならぬ。さて問題です。どこに行きましょう。
「ま だ行っていないけど行きたい珍スポットリスト」を観ながらあれこれ考える。せっかくの休みであるからして遠くに行こう。西か東か、と考えているうちなんと なく青森にしようと決める。調べてみるといくつも巡るべきスポットがありそうだ。それと同時に私は「青春18切符」なるものを使ってみたい意欲にも駆られ ていた。これは窓口で買えない。なぜなら恥ずかしくて発音できないからだ。だけどどうやら自動券売機でも買えるらしい。となれば一度使ってみたいではないか。 これなら実家に2000円くらいで帰ることもできそうだし。
そう思って家から青森まで青春18切符で乗れる電車で行こうと考える。す ると丸一日か かることを知る。これはいくらなんでもやりすぎだ。若い頃ならそれでもよかったかもしれないが、今やそうした旅行には体がついていかない。というわけで青 森までは文 明の利器、新幹線を活用しようと考える。
しかし問題が一つ。お盆休みになるとみんな帰省しようとするのだ。というわけで調べてみれば 新幹線は満席。おまけにどうやら私が使うべき列車は「全席指定」らしい。これはどうしたものか。
そ う思って再度混み具合をチェックすると所々「△」の「ちょっとなら席があるよ」状態になっている。理由はよくわからないが、仮に一週間前にすべて「×」 (残席0)になっていてもさらに時間が近づくと空席がでることもあるようだ。喜びいさんでその日の昼にJRの緑の窓口に行く。するとすべて売り切れとなって いる。
翌朝会社でチェックすると今度は多くの列車が「△」になっている。やれうれしや。これだけ△がついていればどれか一つくらい乗 れるだろう。 というわけで会社を抜け出し駅に行く。券売機であれこれやると×が増えているものの、○(結構残ってます)がついている列車もあるようだ。後先考えずにそ の うちの一枚を購入する。これで一安心。しかし問題が一つ。これにのるためには午後3時に会社を抜け出さなくてはならないのだ。連休前日ということでたるん だ空気が予想されるがはたしてうまく抜け出せる物だろうか。
当日の午後2時くらいになると私は密かに脱走する準備を始める。少しずつ コンピュータ の電源を落とす。そこでただならぬ気配を感じる。普段は別のフロアにいる筈の上役が部屋の中をうろうろしているではないか。なんということだ。いくらなん でもあの男の前を抜けて午後3時に抜け出すわけにはいかない。しかし出発しなければならない時間はだんだん迫ってくる。この電車に乗り遅れると今日中に青 森に着けないし、予定はがたがたになる。ああ、早くこの部屋から立ち去ってくれますように。などとあまりちらちら観て目があってもまずいから下を向いたま ま考える。
しばらくして顔を上げると上役の姿が消えている。今だ。とにかく出てしまおう、と荷物をつかみ非常階段に向かう(エレベー タを使うのは 危険だ)階段を駆け下りると心は脱兎のごとく、表向きは「ちょっと買い物に」とでもいわんばかりにさりげなく歩く。有る程度会社から離れるとあとは一目さ んに駅に向かう。
JR にのればあとは安心である。そのうち東京駅に着く。新幹線の改札をくぐると子供連れ、家族連れがたくさんいる。帰省ラッシュのピークは明日の筈だが、やは り今日のうちに移動してしまおうという人は多いのだろう。小さい子供をつれた家族とかはそこら中に座っている。いかにも夏休み前という雰囲気がある。しか し暑い。いつもの強迫観念で早めにホームに出るのだが汗がやたらとでてくる。そのうち列車の扉が開く。中にはいると涼しいのがありがたい。
そ こか らぐーすか寝たりしているうちに終点八戸に着く。そこで特急電車に乗り換えだ。この特急では指定席がとれなかったら自由席の長い列にならばなくてはならな い。ぼーっと待っている間に列はさらに長くなる。電車の扉が開くととにかく乗り込み、最初に目についた空いている席に座る。すると後から後から人が乗って くる。はっと気がつくと電車の通路まで人で充満する。ああ、座れたことに感謝感謝である。一時間ほどで青森に着く。
ここから予約して おいたホテル に向かう。とても安いのだが、遠いのが難点だ。8時をすぎているから既にあたりは真っ暗。信号の数を慎重に数えながら進む。ようやく見えてきた。中に入る とこれが合理的にできていて驚いた。料金の支払いは機械で行うからホテルの人はおつりを数えたりする必要がない。私はホテルに備えつ けの浴衣というものをついぞ使ったことのない人なのだが、ここはそれがフロント前にあり必要な人だけとっていって、ということになっている。鍵は暗証番号 式になっておりなくしたり、フロントに預けたりの必要がない。それでいてトイレはちゃんとシャワー式になっているしインターネット接続も無料だ。ああ、 なんて快適。などと感動しながら近くの弁当屋でかった弁当を食べて寝てしまう。
目覚めるとまずはご飯だ。ここは宿泊料に無料朝食が含まれている。とはいっても「無料朝食」 なんてのは申 し訳程度にパンやらマフィンが並んでおり、コーヒーがあっておしまいに決まっている、と思っていた。しかし実際の朝食を見て驚いた。ちゃんとした和食のバイキングなのである。強いて 言えば肉の類が少ないと思うが、最近野菜が足りなかった私には何の問題もない。にっころがしとかサラダとかとってご機嫌である。昼の分まで食べておこう、 とむしゃむしゃ食べる。実はここ数日お腹の調子が悪く、やたら食べるのはいかがなものか、という意見もある のだが、とにかくたべてしまう。というわけでご機嫌になると出発だ。駅に行き予約しておいたレンタカー屋に行く。駅レンタカーという やつでJRが 経営している。新幹線のチケットとセットで予約すると割引になったと知ったのはこちらに来た後の事である。地団駄踏んでもしょうがない。説明を聞いている うちに顔から汗が流れてくる。暑いのだ。相手は
「暑いですねえ。これでも昨日より湿度がなくなったんですけど」
と話してく れる。これでましになったと言うのか。朝晩はさすがに関東地方より涼しいと思うが、昼の暑さはなんら変わりがないような気がする。
あ れこれ説明を受ける。車に傷がないか点検をする。いつもこのときは緊張するのだが、返すときはあまり傷をチェックされたことがないような気がする。なんと か号線を通ると思いますが、道が細くて結構カーブが多いですから気をつけて、といってくれる。私はありがとう、といいそろそろ車をスタートさせる。
さ て、今回準備するにあたり、最初は「カーナビついているだろうから、住所さえ押さえておけば大丈夫」と思っていた。しかしそれではあんまりではないか、と 思い付近の地図も印刷しておいた。必要な事は抜けるが不必要な準備は山ほどやる私にしては珍しくこの配慮が役に立つこととなる。カーナビはついてはいるが古いタイプで、町名くらいまでしか認識し てくれないのである。それ以上細かいところは分からない。地図頼りである。とにかく出発する。
途 中金本 という町を通る。すると巨大な太宰治の看板があり、「太宰治記念館」がどうのこうのと書いてある。帰りによることにしようか。そう思いそのままカーナビ様 のお告げのまま進み続ける。そのうちだんだん風景が寂しくなってくる。とある理由によりよく名前を聞いていた「車力」というところに近づきつつあ るらしい。人家もまばらになってきたなあ、と思っていると突然こんなものが現れる。巨大な鳥居だ。なぜ人里離れ たこのような場所に、と思えばそれは最初の目的地が近づいたことを意味しているのだった。さらに進む。すると今度は赤い巨大な鳥居が現れる。近づいてみる となにやら立派な建物がある。私 が知っている「普通の神社」とはあまり似ていない建物だが、とにかくここが目的地だろう。(後で調べればここは人が泊まる場所ではないかと思う)カメラだけをもち車から降りる。この建物に相対して、左手のほうになん となく進む。車のお祓い場所とかあるが、それ自体はどうということもない。さらに進むとなにやら上り坂になる。一番高いところを超して下っていくと、いきなりこんな光景が広がる。一山超えるとそこは日本庭園というかなん だかそんなものだった。なぜこんな人気の無いところに庭園が、と頭の中に「?」マークがいくつも浮かぶ。坂をおりきり左手の方向に歩いていく。すると こんなものが並んでいる。うねりながら続く鳥居の列である。伏見稲荷大社を思い出すがあれほど巨大な鳥居でもな いし、あれほど密集してもいない。ただ背が低いためか歩いていく最中に頭をぶつけるのではないか、という強迫観念に襲われ続ける。鳥 居の列はまた小高い丘の上に上っていきそこでおしまいになる。なぜかそこにはテントがいくつか張られている。ここで何かが行われたのだろう。テントを支え ているロープが思い切り道をふさいでいるが乗り越えればいいのだ。その先にはこんな方達がおわす。狐さんの 列である。半ば草に埋もれるようになりながら狐さんたちがお行儀良く並んでいる。中にはこんなのもおり、果たして狐なのか猫なのかと判断に迷うことにな る。その少し先に小さな小屋があり、その中には小さな狐さんたちが棚にびっしりと並べられてい る。話はまだここで終わらない。その先に進むと今度は祠が並んでいる。なぜこんなところに。中には狐さんがいる ものもあり、どうみても屋根がでかすぎるのではないかと思えるものまでいろいろある。列の端のほうにいくと祠と いうより小屋とでも呼ぶべき大きさのものがある。しかしおそらくは長年の風雪によって半ば崩壊しかかっている。中には理解に苦し む人形のようなものが飾ってある。その様は養 老の滝への門で観たそれらのようだ。その先には狐さん達がいる崩壊し かかった祠があり、長い長い狐さん達の列も終わりになる。その先を覗いてみるが何もないようだ。少し行ってみた い気もするがこの暑さの中で行き倒れになるのが関の山、と思い引き返す。しかしこの人気のない日本庭園というか静かな場所はいったい何なのだ。綺麗に手入 れされているのが返って奇妙さを際だたせる。車に乗ると次の目的地を入力して出発である。とはいっても次の目的 地はどこだ。
おまけ:黒の大鳥居の近くにあった某建設会社の「従業員トレーニングセンター」人里離れたここでどのようなトレーニングが行われているのか。ちなみに帰ってから知ったことだが、どうやら私は本殿をバイパスして日本庭園にたどり着いたようだ。何をしてるんだか。