五
郎の
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国立天文台三鷹キャンパス: 東京都 三鷹市(2010/8/29)
8月の29日。この日は奥様が朝からおでかけである。というわけで父親は子供ふたりに”どこに行きたいか?”と聞く。”室内プール”と答えが返って くる。いや、確かにプールもいいけどせっかく朝から夕方までどこか行けるんだから別のとこ ろに、というわけで半ば父親の独断で国立天文台に行くことにする。子供に言うと”いいけど,,,,じゃあ早めに帰ってプールに行こう”と言われる。
Google Mapで所要時間をチェックすると50分ほどか。皆で早起きしたのでまだ時間が早い。早く着きすぎても開いてないし、というわけでだらだらしてから出発し たのは(後から考えれば)愚かなことであった。
とはいえそんな運命が待っているとは私の知るところではない。カーナビ様のお告げに従って出発である。最初は快調だったがそのうち道が混んできた。 踏切を超えようとすると車が数珠つなぎになって 進まない。推定到着時間は天文台が開く時間をはるかに超えて10時20分とかなっている。
とはいえ気がせいたところでなんの役にも立たない。私もいい年なのであるからして、深呼吸でもして落ち着こう、などと自分に言い聞かせていると、
”まだつかないの?”
と子供の苦情が飛んでくる。あともう少しだから我慢してね、と言っているうちようやく目的地が近くなってくる。
それまでは街の中を走っているイメージだったのが、まわりの建物が少なくなってくる。つーっと走っているとようやく目的地が見えた。やれうれしや、 というのは甘かった。
前回の”はやぶさ展示”と異なり、駐車場がないというのは分かっていた。しかし同じ敷地内に絵本のなんとか館があり、そこに行った人のプログに”駐 車場はありませんが、コインパーキングがあります”と書かれている。であればきっとすぐ駐車場が見つかるだろう、とぐるりと回り始めるが全くそれらし いものが見えない。ひたすら走っていると息子が
”もうずいぶん来たよね。遠いよね”
という。正論であるから反論ができない。そうだね、近くのところをさがそう、と言いながらぐるっと裏手に回る。
すると調布飛行場が見えてくる。子供は”わー飛行機だ”とか言っているがお父さんとしては駐車場がでてきてほしい。さらに進むと”武蔵野の森公園” とかいう施設があり、駐車場があるようだ。しかしここから天文台の正門までは遠い。望遠鏡を収めたドームは見えているのだが、裏から入れる気がしない。
とはいえ他に駐車場があるかもよくわからない。とりあえず止めよう、というわけでそこに入る。となりに駐車した人から”ここからスタジアムまで遠い んですかね”と聞かれるが、そもそもスタジアムがここにあるんでしょうか。すいません、わかんないんです、と答える。(後ですぐ後ろに巨大なスタジアムが 見えていたことに気がつく。とはいえ巨大すぎて近いのか遠いのかもわからない)
まあここから行ってみよう、というわけでてくてく歩き出すが、今年の暑さは半端ではない。甲子園が終り、8月も終わろうというのに真夏の太陽が照り つける。いや、太陽は確かに傾き始めているのだが、熱気は夏の盛りそのままである。大人はいいが、子供をつれこの状況で正門まで辿りつけるだろうか。ええ い、やり直しだ。というわけで車まで戻る。まだ子供は”えー戻るのー”と文句を言わない年頃なのがありがたい。
退場ゲートにたどり着く。10分は止まっていたのでお金を取られるだろうとおもっていたが0円で退場できた。ほっとするが問題は何も解決していな い。駐車場は どこにあるのだ。正門の前に少し細い道路があり、駐車禁止の標識もない。となればここに少し止めさせてもらおうか。ところが息子が”とめちゃいけないんだ よ”と言う。これまた正論だ。というわけであちこち走ってコインパーキングを探す。ゆっくり走っていると後ろからクラクションを鳴らされる。すいません。 私が悪うございます。そりゃこんな速度で走っている人間がいたらむかつくよね。
結局さっき見つけた道路に車を停めることにする。同じ道に駐車している人がおり、死なばもろともである。子供たちをつれてくてくと歩く。入り口はと て も趣がある。
そこをくぐると受付がある。名前と人数を書くとシールをくれる。これを胸にはってください、とのこと。貼るとさて出発である。左手におれしばらく進 むとこのような建物がある。
入り口近くにはこんなものもあるから、望遠鏡だけではなく古墳も存在しているのだろう。
なかはこんな様子だ。本来望遠鏡の写真を載せるべきなのだが、なぜか望遠鏡はすべてブレていた。というわけで熱気をしのぐための扇風機である。
ここにある望遠鏡は太陽を観察するものだとのこと。昨日来ることができれば、ここで実際に太陽を観察しているところを見ることができたらしい。実は 先日息 子と
”いいか。双眼鏡で絶対に太陽を覗いてはいけないよ。目が見えなくなってしまうよ”
”ちょっとでもだめ?”
”ダメ”
”じゃあ夕日とかは?”
”ダメ”(自分でも説得力がないと思いながら)
というわけで彼に太陽の観察とは本来どのようにするものか見せてやりたかったが一日遅れだった。望遠鏡を収めるドームというものを外から観た ことは何度もあるが、中から観たのは初めてだ。
そこを出ると道にそって太陽系ウォーキングというものがならんでいる。
太陽系にある天体の大きさと距離を実感するのにいい、と後知恵では思うのだが、これを実際に観ているときは、そもそも天体の大きさがどの球で表され て いるのか分かっていなかった。
土星でこの大きさという事は、水星、金星、地球に火星あたりはビー玉にもならなかったのだろう。お父さんは
”ほれ、火星までは近いのだけど、その後はとても遠くなるのだよ”
とか説明するが子供は聞いちゃいない。われ先にと次の惑星に向かって走り何かわめいている。
さて、このウォークも土星に来たところで終了である。真面目に再現しようとすればこの後はてしない空間が広がってしまうためでもあるし、そこに次の 望遠鏡があるためでもある。
今度は先程のドームより少し大きいようだ。2階にあがると巨大な望遠鏡が存在している。
屈折式としては日本最大とのこと。子供たちも”おーきー”と喜んでいる。長男は最近覚えたばかりの”倍率”という言葉を使いたくてしょうがないらし い。説明員とおぼしき女性がいるので
”この望遠鏡の倍率はいくつですか?”
と聞いている。女性は倍率を計算する式を示し、その計算に必要な焦点距離のデータを探していてくれるが結局 結論はうやむやになった。そもそも質問を発した長男が別の場所に行ってしまったためでもある。まわりには様々な展示が並んでおり、PCを使っていろいろな 画像をみることもできる。数年前まではこうしたインタフェースに何の疑問もいだかなかったが、iPhone/iPad登場後はなんともまどろっこしく感じ る。
そこをでると別の展示室があるはずなのだが、とうろうろする。長男が”あれは?”というので向かってみれば大正解であった。
中には天文台に関する様々な展示物がある。スイッチを押すとすばる望遠鏡の模型が動いたりするのだが、子供というものは本能的にこういうボタンを押 したがるようだ。自分が操作しているものが何かを理解しているとは思えないが、とにかくボタンを押している。お父さんはといえば、一番気に入ったのがこの 展示だった。
最初は
”けしからん。こんなところにゴミが”
と思ったがそんなことはない。望遠鏡は高地に設置する方が観測上都合がよろしい。しかし気圧は低く観測する人間は大変だ。なんでも高度5000mに ある望遠鏡施設でペットボトルに封じ込めた空気なのだそうな。気圧の高い平地に持ってくるとこのとおりぺちゃんこ。
そこをでても見学コースはまだまだ続いている。趣のある建物とか何に使うのかよくわからない観測器具とかあったのだが、暑さにやられていたようだ。 写真がほとんど残っていない。コースの終点がどのようになっていたかだけは覚えている。
実に見事な原っぱである。夏草が生い茂り、どこまでも続いてるように思える。こんなところで虫をとったり走り回ったりしたら楽しいだろうなあ、とは 考えなかった。とにかく暑いのだ。よれよれである。
最後にはいった建物の入り口付近には芋虫がいた。いつもなら
”ひょえー。きゃー”
とわめくところだが、お父さんにはそんな気力も残っていない。踏まないように注意して通り過ぎるだけである。
といったところで天文台見物はおしまい。帰り道は比較的スムーズに進む。家に帰るとカブトムシの幼虫の世話とかいろいろやる。もう夏休みも終わりで
ある。