五郎の入り口に戻る
ゆらゆらと陽炎がたってもそれに気がつかないほど頭がぼんやりする。しかし貴重なこの機会を逃してはならない。ある交差点でハンドルをいつもとは反対方向に切る。目的地はさらに奥、灼熱の多治見に近いところにあるのだ。
その昔私は10ヶ月プータロー生活をしてことがある。そのとき同じ道を徒歩でたどった。ここには水力発電所があるのだが、はたしてどれだけの電力を生産しているのか。
そのときはただの
「小規模な観光地」
としか思わなかったし、実際そうだったのだろう。しかし私がその地を離れて以来いろいろなことがおこったらしい。メインのホテルだか料亭だかの経営者が行方不明となり、巨大な廃墟ができあがる。それと関連してかどうかしらないが一帯が荒れ始めているという。
発電所用の水路とおぼしき溝のそばをひたすら走り続ける。道が狭いので対向車がこないことを祈りつづける。そのうち左手にすこし道路が広くなったところがある。神社かなにかの入り口のようだ。そこに車をとめてくてく歩き出す。するとすぐこんな光景が広がってくる。
ここが廃墟となった元旅館(というか料亭)千歳楼。なんでも私の父が会社勤めをしていたころ、株主総会のあとはここで宴会をしたのだそうな。近寄ってみるといろいろなところが破壊されていることに気がつく。
とはいえちゃんと鉄板で囲まれているし、監視カメラも付いている。その費用は誰がだしているのだろう。警備って結構金かかるはずだけどなどと思いながら歩き続ける。
そのすこし先には千歳楼と一続きであったと思しき建物跡がある。おそらくは火災によって破壊されている。
これは川の反対側からみたところ。
そこを過ぎていくとこのような橋がある。
橋を挟んで反対川にある建物も現役とは思えない。
橋の欄干には凝った装飾が施されている。
ただしこの写真ではわからないが、この灯篭と思しきものと欄干はとても低い。橋の上から川の流れをみるとこのような風景。
建物の窓が割れていることにさえ目をつぶればなかなか美しい。ここが小規模な観光地として発達したのもわかる気がする。しかし欄干が低いので、とても怖い。ここから落ちた人がいても驚かない。
橋を戻ってすこし定光寺方面に歩く。すると小規模な店(あるいはかつて店であったもの)が並んでいることに気がつく。
ここにはまだ現役の喫茶店がある。しかしなんとなく入るのがはばかられる。この写真で写っていない道路の反対側にはこんな「メニュー表」がある。
鉱物展示喫茶・玉川屋。なぜ私はこの店に入ってカレーをたべなかったのだろう。果たして再度訪問するチャンスはあるのだろうか。
車に戻る。すると私が止めた後ろに工事用の車両が数台とまってなにやらしようとしている。これはいけない。あわてて車を発進させる。まだ行くところがあるのだ。