題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る
日付:2015/10/11


南禅寺 水路閣:京都府(2015/8/10)

「夏休みの宿題は涼しい午前中にやっておきましょう」

私が夏休みの宿題をしていたのは遠い昔の話だ。しかし先ほどからこの言葉が頭の中をぐるんぐるんとまわっている。今は午前中。であれば涼しいはずなのにこの熱気はどういうことだ。

などと考えているうち頭がだんだんぼけてくる。幸いなことに地下鉄の構内から「こっち」という矢印がたくさんでているから道に迷う心配はない。ひたすら歩き続ける。するとこんな門がでてくるので写真を撮る。

最初の門

しばし感嘆して眺めていたが、脇を通る人は全く知らぬ振りである。考えてみれば京都ではこんなものなど「最近のものじゃん」ということかもしれん。

というわけで再び矢印に従って歩き出す。しかし風景が霞んでいる。少なくとも私の脳細胞はそう認識している。かすんでいるのは網膜より後ろではないのか。その証拠にレールの上にのった船があったのだがその写真を撮ろうともしていない。

しばらく歩くと南禅寺というところについたらしい。らしいのだが、ここは巨大な寺院エリアであり、ますます私のようなひねくれ者が訪れるべき場所ではない気がしてくる。案内板をみたりしながらこちら、と思った方向に歩み続ける。

南禅寺

こうやってみるとやっぱり霞んでいるからあれは幻ではなかったのだろう。しかし脳内に霞がかかっていることはかわらない。矢印に従いこの道をひたすら進み続ける。客観的に考えれば人もいない広々とした境内をあるいているのだから何かの感興があってもいいはず。しかし

「暑い」

以外の言葉が頭に浮かばない。きょろきょろしながら進むこと幾時か。ふとこんな光景に気がつく。

発見

私がみたいのは「名勝庭園」ではない。しかしその看板の右方に何かが見える。やれうれしや。道は正しかったようだ。そちらに向かっって進み始める。

水路

これが今日の目的地水路閣である。琵琶湖から水を引いてきた通路の一つがこれなのだそうな。水路を支える足がつらなっているので、ある場所からみるとこう見える。

トンネル

ものすごく遠近法が効いているように見えるが、実はこれは半分本当ではない。手前から奥にいくにしたがって物理的にも足が短くなっているのだ。それゆえ反対側から撮影するとこんなんである。

反対側

今ひとつサマにならない。

などと考えながらあたりを見回す。本来はここの美しさや歴史について思いを巡らすべきなのだろうが頭はぼんやりしている。

空気

空気もこうして見るとやはりぼんやりしている。

水路1

そのぼんやりした空気の中、坂道を登る。

看板

坂を登りきったところにあるのがこの看板。そんなに魚釣りが出来るのだろうか、と水を覗き込む。

水

あまり魚のいる気配もない。そこから水路の来た方向と行く末を眺める。

水路来る方
水路行方末

これでもか、というくらいに柵が存在している。まあいろいろな事情があるのだろう。というわけで再び坂を下りる。

帰り始め

いま気がついたのだが、帰るこのときになって初めて水路のまともな写真を撮り始めているのだな。

帰り道

というわけで帰り始める。暑い。

いくら地球温暖化云々といっても、平安時代が今から10度寒冷だったということはあるまい。この熱気の中で平安貴族はどうやって十二単を着て愛だの語らい合っていたのだろう。宮中にも「夏服」とかあったはずなのに、それが残っていないのはどういうことだ。

「ちらりとみえた夏服姿に動揺する」

とかそういう和歌がなければならない。そうでないとこんな気候を乗り切れるはずがないではないか。おかしい。なぜこんな暑さの中で十二単を着て愛だの(以下ループ)

いかんいかん、と自分の位置を確認する。どうやら駅にいくにはもう少し近い道があるようだ。というわけで裏道にそれる。するとなにやら由緒がありそうな建物がごろごろでてくる。いつも思うのだが世の中には「観光名所」に飢えている場所がいくつもある。そういう場所は、ここにある何気ない

「由緒正しい場所」

の一つでも欲しいに違いない。そういう場所に行けばおそらく歌まで作ってもらえる建物でもここでは無名。そんなことを考えいるうち、前方に何か見えてきた。

門再び

なんと最初に見えた門だ。つまりここをくぐれば早かったと。私にとっては観光名所のように見える門だが、脇を部活にいくと思しき高校生がひょこひょこ歩いていく。思えばそこが旅行者にとってどう見えようが住んでいる人にとっては日常風景なのだな、と当たり前のことを考える。

もうすぐ進めば冷房のある場所にたどり着く。その一念で前に進む。一度どっかの企画で

「夏の京都で十二単を着てテラスハウスをする」

とかやればいいのに。

  前の章| 次の章  | 一覧に戻る | 県別Index


注釈