日付:1998/4/15
更新:1999/1/3
習わない英語"So so":これはGoodとかOKとかBadとかとにかく程度を表すときに使われる表現だ。そしてなんとなく日本語としても聞こえるので、日本人でもちょっと聞いて使い始めるのにも抵抗はない。
意味は手元の辞書を引くと「可もなく不可もなく。まずまず」と書いてある。私もそう思っていた。しかしこの意味は少なくとも現在の米国では間違っている。
まず「調子はどうだい?」How are you doing ? とか聞かれた場合に、返答に使用する形容詞は、米語から日本語に直訳した言葉よりも2段階くらい、米語の方がいい方にシフトしている、という事実がある。
日 本語で前記の質問に「まあまあだよ」と日本人が答えようと思えば、米語では"Fine"とか"Great"を使うべきなのだ。逆に米語で"Bad"などと いおうものならとんでもない事が起こっていると思った方がいい。たとえば今日の天気は核ミサイルだ、とかいうような。(実際こういう答えを聞いたことがな いが)
多くの場合、日本語では「調子はいいよ」とは言わない。高校の時に某教師が言っていたことであるが、特に大阪弁では "Good"は「いやー、あきまへんなー」であり、"Bad"は「なんとかやらせてもらってますわ」だそうである。大阪弁でなくてもだいたい「Hi,元 気?」と聞かれれば特に社会人だったら「いやー、もうよれよれだよ。仕事はきついし。。。」と答えるだろう。
このような「意味のシフト」を考えると、So soは日本語で言うところの「可もなく不可もない」よりも遙かに悪い意味のように思える。
実際これは私が経験した例である。グループを組んで一つの課題に取り組む授業をやっていたときのこと。我々のグループは、まあ問題はないとは言えない状態にせよ、とにかく前に進んではいた。締め切りは二日後だ、という時に別のグループの人間が聞いた
「あんたのグループの調子はどうだい?」
それに対し私は"So so"と答えた。これは日本語的な意味で、「まあなんとか言ってるよ。すばらしいってほどじゃないけどな」というくらいのつもりだったのである。
それに対して相手の返答は"Still so so ? "「まだSo soなんて状態なのか?」という一種驚きのようなものだった。
あ と2回くらい同じようなやりとりをやったことがあるが、それらの経験からすると、"So so"は日本語で言えば謙遜だの掛け値無しの「だめだねー。うまく行ってない」を意味しているのではないかと思っている。それからこの言葉を使うときは、 本来だったらにっと笑って"Good"と言うべきだが、どうしてもそれができずに苦虫をかみつぶしたような顔になる場合に使うことにしている。
ある人は「So soは”まだまだ”、”いまいち”という意味だと思う」と言っていた。私も全く同感である。
またある別の人からの情報によると、Askme.comというサイトで回答者のランク付けが以下のようになっていたとのこと。
「Excellent , Good , Average , So-so , Not so good」
というわけで、少なくともSo-soはAverageより下なのである。
"Weird":私が知っている限りでは「ウィアード」と発音する。正直言ってなぜこの綴りでこんな発音なのかよくわからない。綴りからいけば「ウェールド」とかなんとかいいそうだが。
「妙な」とか「変わっている」とかそういう意味で使う。SNOOPYには"Aren't you kind of weird for me ?"という原文に「あなた私には少し変人すぎない?」という訳がついていた。
なぜこの単語を学校で教えてくれなかったのか知らないが、日常会話ではよく使われる。最初に遭遇したのは、米国留学中にグループプロジェクトをやっていたときのことで、一生懸命私のアイディアを説明したらあいては、"That is weird"と言ったわけだ。当時この言葉の意味を知らなかったのはある意味幸せだったのかもしれない。
"Careful":「注意深く」とかそういう意味だと思うでしょ?だいたいそれでいいのだが、たとえば授業中に何か答えたとして、教官が"Careful!"と言ったら、それは「間違ってるよーん」というのとほとんど同義語である。
私が最初にハワイで客先が主催する審査会に出席した時のことである。ある装備を防衛目的に使用する提案を私の会社の上司が説明したところ、「チョットマッテクダサーイ」という日本語とともに、アロハシャツを着たおじさんが、「その装備は、米軍はPower Projectionに使っている。従ってそれを防衛目的に使用するとすれば、You must be very careful"」と言った。
当時の私は「そうか。注意して使いなさいね、っていう意味なのね」と思っていたが、今から思えばあれは「そんな馬鹿な使い方はねえ」というのとほとんど同義語だったのだと思う。
"Deserve":辞書を引くと「。。。に値する」とか「する価値がある」という風に訳が出てくる。私が見たところ、この言葉は「当然の権利の主張」によく使われるような気がする。
私の好きな"Cheers" にこういう場面がでてくる。主人公であるSAMの愛車はCorvetteであったが、彼はそれを売らなくてはいけなかった。ところがある日その Corvetteを買った男が急死する。金はないがなんとかCorvetteを手に入れたいSAMは未亡人をたらし込むことをかんがえる。それを非難する 口調でバーの常連(Fraiserというが)が言うせりふ
"So, you want to say that you deserve the car ?"
(その車を受け取る当然の権利があるとでもいいたいのか?)
実際権利を主張しないと馬鹿を見る国であるところの米国ではこの言葉はよく使われる。何か不満があれば"I deserve more"と主張するべきなのだ。「俺にはもっと良い扱いを要求する権利があーる!」ってな感じだろうか。
"I deserve more respect"
ただこの言葉は私にとってはとても発音しにくい物である。
いきなり私が最初にこの言葉を聞いたところから説明しよう。私が愛する米国のTV番組、Cheersでの最初の一こま。郵便配達人であるCliffが雑誌を見ながら憤っている。
「DisneyLandはすごく巨大な産業だな。まったくミッキーマウスなんかに金を払って。けしからん。アメリカの真のヒーローを題材にしたテーマパークでもつくったらどうだ。将軍、宇宙飛行士、開拓者、郵便配達人、、、」
「なんだってCliff, 郵便配達人?」
「そうだよ。こんなのはどうだ。Postal World。どんなに厳しい天候でも、犬に吠えられても負けずに郵便を配達する男達のテーマパークだ。
もしこれが当たれば、俺はすごい金をかせいでこのDead end jobから抜け出せるってわけだ」
実生活ではあまりこの言葉を聞いたことはないが、TVでは他に何度か聞いたことがある。定時制の大学か、あるいは電子関係の修理技術かなにかを身につける専門学校のCMで「この学校にかよったおかげでDead end jobから抜け出せたよ!」と元在校生(あるいはその演技をしている役者さん)が叫ぶやつだ。
辞書をみれば"Dead end"とは行き詰まり、窮境などと書いてある。それに仕事であるところのjobがつくのだから、なんとなく意味は想像できる。そんなに給料があがる見込みはない。地位が上がる見込みもない。そうした職業のことだろうか。
などとつらつらと考えていて「そういえば日本語ではあまり対応する言葉を聞かないな」と思いついた。無理に訳そうとすると「先のない職業」とでも言うのだろうか?しかしこういうと「今にも倒産しそうな会社」とか「一時の流行の職業」という感じがして、Dead end jobとはちょっとニュアンスが違うような気がする。それに日本では郵便配達をDead end jobが意味するような言葉で呼ぶというのをあまり聞いたことがない。
どんな職業であっても地道にこつこつと働くことが尊いのだ。職業に貴賎無く、身分に上下など無い。一億総中流。Dead end jobなんて言い方はとんでもない、という日本の文化の現れだろうか。逆に米国ではそうした職業による見かけの上下、あるいは権力(これもはかないものだが)、給料の多い少ないがはっきりしているため、上に上がれるか否か、ということにこだわったりするのだろうか。
こうした言葉が生まれる背景、生まれない背景にある文化のギャップは大変大きい気がする。私個人としてはDead end jobをうまく訳せない言葉をしゃべっている国に生まれてありがたかったと思っているが。
手元の辞書を見てみると「哀切」「かわいそう」「痛々しい」などの文字が並んでいる。だからたぶんこういう文脈で使われることもあるのだろう。
し かし私が知っている限り、この言葉が使われる局面というのは"We're Pathetic"とか"You are pathetic"とかいうようなものだ。そしてその意味するところは(実はこれは使われている場面から「こういう意味だろう」と推察したもので、あまり 確証はないのだが)「惨め」「情けない」「どうしようもない」と言ったたぶんにNegativeなものである。「哀切」などというちょっと美しい響きを 持ったものではない。
例 をあげよう。私が愛するTVシリーズの主人公はSamである。彼はプレイボーイとして名をはせたが、ある時「俺の人生には何もない」という事に気がつく。 そして同じBarにいる(彼女が何をしているのか誰も知らないのだが)Rebeccaに「これから数年たってもいい女性が現れない場合、君は僕のお嫁さん 候補リスト(これはとっても短い)のトップにいるんだよ」と「愛の告白」(?)をするのだ。
大抵の女性はこんな事を言われれば怒る。(と思う。それほど女性心理に詳しいわけではないから)そしてRebeccaはこうした破壊的な役回りが実に似合っている。それから彼女はありとあらゆる言葉でSamをののしるのだが、その中に
"You are pathetic"
というのがあるのだ。
「みてごらんなさい。あんた昔はもてたかもしれないけど、もう年とって誰も相手にしないでしょう。何わがままなこと言ってるの。自分自身をみてごらんなさい」
の後に続くセリフだから、辞書に載っている訳語よりも私が先に挙げたような訳語がたぶんぴったりくるのではなかろうか。
幸いにしてかどうかしらないが、実生活でこの言葉を耳にしたことは一度しかない。前の会社に勤めていたときに、アメリカ人と話していた。彼らがある提案の説明をしていたのだが、途中で「あまりにも内容がない」ということで打ち切りになったのだそうである。彼は
"We are pathetic"
と言っていた。幸いにも私はそのプレゼンの現場に居合わせなかった。不思議なことだがそのプレゼンのトップへの報告は「客先の理解は得られた物と思う」だったのだそうである。かくのごとく失敗を隠し、事実を美化されて伝わるような組織は
"They are pathetic"
としかいいようがない。いやいや、他人の論評などしている場合ではない。私には何故今になってこの言葉をとりあげたかの理由は自分でなんとなくわかっている。Cheersを見ていて時々発せられる"You are pathetic"という言葉が身にこたえるからだ。
私自身はどうやってこの言葉を覚えたのか思い出すことができない。しかし受験英語とも思えないのでたぶん実体験の中から学んだのではないか。その証拠に綴りはつい最近まで知らなかったがカタカナ英語で発音すれば
「ヴァイス ヴァーサ」であることだけは知っている。
「英語をしゃべらざるを得ない」身として「この英単語どういう意味?」と聞かれることもままある。そうやって聞かれる言葉のうち、この
"Vice Versa"
は一番頻度が多いものではないかと思う。(とはいっても聞かれた回数を合計しても3回ほどだが)
辞書になんと載っているのかしらないが、私が知っている限りでは
「逆も同じようだよん」
とかそうした類の意味だと思う。大抵何かがだらだらと書かれていて、最後にぽこっと
"and vice versa"
とついていれば、逆の命題も成り立つ、という意味である。
こうして綴りをつらつらと見てみるとどうも普通の英語という気がしない。頭のviceは副大統領のVice PresidentのViceかもしれないが、Versaなどという単語はそれ自体では聞いたことがない。おそらく何かの慣用句が残ったものなのだろう。
(メールで指摘をうけ、確認したのだが、ラテン語だそうである)
なぜこの単語を聞かれる事が多いか考えることもままある。たぶんこの2語で一つの慣用句ということを知らず、Viceで辞書を引いて
「悪徳か。。」
と思い、Versaで辞書を引いてしまい、
「こんな単語乗ってないぞ」
となるのだろうか。
この言葉を聞くと「それがどうした?」と思う人は多いかもしれない。coupleっていうくらいだから二つってことだろう。
Stanford にいってまずは英語学校に入った。その中で最難関はWritingのクラスである。日本語でくだらない文章を書くことは結構好きだが、日本語で書くまじめ な文章は正直妙であり、英語で文章を書くことは未だに全くの苦手である。2年のStanford生活でWritingに関し何が向上したかと言えば、
「出来る限り人におしつけて、自分は書かない」
技量が向上した、とした答えようがない。
従ってそのWritingクラスの宿題は困難の連続だった。
「文章を読んで要約文を作れ」
という問題では一生懸命考えても、要約文が原文より長くなってしまう、なんてことは何度も経験した。
さて、そうした宿題の一つを出題するとき、講師はこう付け加えた。
「これはずいぶん短く出来る。a couple of sentences で十分だな」
a couple of sentence ?たった二つの文にまとまると言うのか?
それから私はアパートに帰って悩んだ。のたうちまわって、とりあえず要約文は元の文より短くなったが、しかしどうやっても二つの文だけにするのは無理だ。そのうち私は開き直った。できないものはできんと。
さて、翌日正解が発表される。何?正解はちゃんと4っつも文を使っているじゃないか。
それから私が
「a couple ofとは”二つ”ではなく、”少しの”という意味だ」
という事に気がつくまでにはかなりの時間がかかった。であるからして
"a couple of days"
は「二日」ではなく「そのうち」であり、
"a couple of seconds"
は「2秒」ではなく「そのうち」である。
さて、2000年の9月、Apple社のCEOがスピーチをした。そこで彼は発売したばかりの新機種を持っている人は何人いる?と観衆に聞いた。その結果は日本語訳によれば
「手をあげたのは二人だけ」
となっているが、英文では
"a couple of people raised their hands"
とかなんとかなっていた。私は会場に居たわけではないから、本当に手を挙げたのが
「二人」
だった可能性を否定するものではないが、おそらくこの場合手を挙げたのは
「少数の人」
ということだったのではないかとかなり疑っているのだが。
日常で使われる慣用的なフレーズというのは常に鬼門である。まず第一にそれらは原型をとどめぬほど簡略化されていることが多い。第二に、それらは慣用句であるが故に非常に早口で発音されるのが常で聞き取るのが困難である。従って
「知らなければ聞き取ることも理解することもできない」
となるわけだ。
たとえば、この言葉である。単語はすべて中学校で習う物であり、その中でも簡単なほうに属するのではないか。しかし私は初めてこの言葉を聞いたとき聞き取ることすらできなかった。
これはファーストフードで必ず注文の最後に聞かれるところの
「こちらでお召し上がりでしょうか、それともお持ち帰りでしょうか」
である。そう言われてみればなんとなくそうも思えてくる。しかしその意味を知らなければこの言葉に出くわせば大抵の場合立ちすくむはずだ。
初 めての米国できょろきょろしている。英語は確かに学校で習ったはずなのだが、もう遠い忘却の彼方に消え去っている。さて困ったお腹が減ってきた。何か食べ なければ。しかし注文ってどうやるんだろう。英語で書かれたメニューなんか見てもわかるものだろうか。不安と空腹にさいなまれたあなたは見慣れた店を見つ けてほっとする。
「世界の言葉マクドナルド」
である。実際マクドナルドは世界中の結構な範囲に分布しており、食べ物に困ったときには実に心強い味方になるが、それはここでは本題ではない。ああよかった。マクドルドなら多少味は違うかもしれないが、とにかくハンバーガーが食べられそうだ。
そしてあなたはオーダーを始める。あやしげな英語だが、とにかくメニューを指さして
「あれとあれ」
とでも言えばなんとか相手はあなたが何を食べたいのが理解してくれる。やれやれ、これで今日のご飯は安泰だ。しかしそう安心した貴方に対して店員は最後に呪いの言葉を吐くのだ
"For here or to go ?"
実際初めて出張でアメリカに来る人間に対して、必ず教える慣用句がこれであった。この呪いの言葉をかけられた男が
「えっ?えっつ?」と言っているとき横から
「ツーゴーと言え」
「えっ?えっ?」
「とにかくツーゴーと言え」
店員はこのやりとりが概略理解できたらしく、ケタケタと笑っていたが。
慣用句であるから、それに深い意味などない。先ほどのと逆の状況を考えるときはみだしYouとPiaにあった次のようなネタを思い出す。
マクドナルドに英語しかしゃべらない客が来た。店員は必死につたない英語で応対をする。なんとか相手が食べたいものは解ったが、最後に投げるべき言葉
「こちらでお召し上がりですか、それともお持ち帰りですか」
を英語でどう言えば良いのだろう。彼女の苦闘は数分に及び最後にその苦労は報われた。相手は「お持ち帰り」を望んでいるのだ。彼女は店の奥を向き、こう叫んだ
「テイクアウト ワン プリーズ」
なぜ「テイクアウト」ではなく"to go"なのか、と聞かれても私は知らない。とにかく慣用句というのはそういうものだ。
米国留学:(トピック一覧参照)このクラスは向こうに行って半年しかたっていない時だったので、英語で打ち合わせをする苦痛は筆舌に尽くしがたいものだった。本文に戻る
ハワイで客先が主催する:(トピック一覧)トピック一覧経由で「何故英語をしゃべらなくては行けないは目になったか」を見ると、この出張に関する事項が書いてある。ハワイはいいとこだったが、実際に説明の日が終わるまで私はその景色を楽しむどころではなかったのである。本文に戻る
Cheers:(参考文献一覧)私の好きなTV番組であり英語の先生でもあった。多少語彙がかたよってしまうが。本文に戻る
SNOOPY:(参考文献一覧)みなさまご存じのアメリカの漫画。ここで引用したのはライナスが謎の女の子(彼女は毎日名前が変わる。実はリディアという名前らしいが)に、いつも言われている"Aren't you kind of old for me"という言葉を逆に"Aren't you kind of young for me?"と言い返して喜んでいるときに言われるセリフ。本文に戻る
はみだしYouとPia:(参考文献)私が読んだのは少なくとも15年以上前のことである。本文に戻る