日付:1998/5/8
私がMr.ARの作成した一覧表に従って何も考えずに景気よく願書請求をばらまいたことは前述した。10月ごろであったか、願書請求に応じて返答がくるわくるわ大変な騒ぎである。その結果をまとめた表は付表(この付表は紛失)を見ていただくとして、ここでは印象的な項目についてのみ記述する。
当時私の本命はStanford University U.C.Berkeleyであった。だって西海岸のほうが気候がいいんだもん。しかしそれはそれとして、この2校は願書請求に金をよこせと言ってくるのである。金額はたかだか$5とか$6であるが、1枚送金小切手を作る毎に2500円の手数料がかかるのが気に入らない。それでも私は両方に願書請求を送った。
願書には、TOEFL等のMinimum Requirementが記載されている場合がある。大抵の大学は550点であるが、Stanford University とM.I.T.は575点である。この点に於て特筆すべきはUniversity of Illinoiであろう。願書請求に対して送ってきた文書は煎じ詰めると次のような意味である。
「当大学に入りたい優秀な奴は掃いて捨てるほどいる。大学の施設は限られている。当大学のTOEFL のMinimum Requirementは590(!)である。そんだけのスコアを送ってくれたら願書を送ってやろう。馬鹿に願書を送ってやる暇はない。」
誠に見事である。もっともこれは私が願書請求に成績証明をつけていなかったせいかもしれない。Mr.ARは成績証明(もちろん英文)を願書請求に同封して送っていて、University of Illinoiからも一発でちゃんと願書を送ってもらっているのである。ただしこれはMr.ARの在学中の成績が良かったせいかもしれない。
もう一つ傑作だったのはCornell Universityである。願書請求に対して送ってきた文書は次のような意味であった。
「おめえみてえな馬鹿には願書を送ってやらない。うちの大学には賢い人がたくさん応募してくるんだ。おめえの情報からするにまず大学院に合格しっこない。従って無駄をはぶくために願書はおくらない。絶対当大学に出願しないでくれ。」
とかなんとかいった手紙が着いた3日後にはきれいな願書が届いた。おまけに正月ごろにはきれいなカラー写真いりのパンフレットまで届いた。願書請求のフォームに書かれている情報などというのはたいした量ではない。名前、住所、大学、希望学科、やりたいこと、金はもらえるかどうか、程度である。こんだけの情報で「おまえなんか入れてやらない」と言ってきたかと思うと、いきなり願書を送ってみたりと。Cornellは実に楽しい大学である。
もうひとつ特色のある大学と言えば、天下のCalifornia Institute of Technology通称カルテックであった。カルテックは一般にはカリフォルニアの東大として有名である。Iさんの弁によると「カリフォルニアみてえな気候のいいところで、みんなで青い顔して勉強ばかりしている」ところだそうだ。願書請求に対して、再度別フォームで願書請求を送るように指示が来た。ここで戸惑わされたのは、
「当大学では応用指向のコースは提供していない。基礎的な学問のみを対象としている。応用的なことがやりたい人は別の大学に願書を出してね」
という一文であった。こんなことを言われても困る。だいたい会社にはいってから基礎的な勉強などしたこがない。(繰り返すが私の担当業務は主に仕様書作成、不具合処置、改善検討、対官折衝、納入書類作成である。)再度の願書請求にきた返事はもちろん送ってやんない、であったが、大変丁寧な文面で、好感がもてるものであった。残念ながら当大学には、あなたの希望に添えるコースはない。もしあなたの希望する内容に添った大学を探したければ、どこそこの大学案内センターにコンタクトしてみなさい。」等など、大変に感じがよかった。
なんだかんだと言ってるうちに11月となり、本当に願書を書かなければならない時期となった。となると志望校を選定しなくてはならないのである。志望校の選定について述べる前に、志望学科の変更から述べることにしよう。
願書請求の際に私がComputer Scienceに対して大変弱気になっていたことは前述した。そして願書を見てみたらやっぱりその通りだったのである。つまり他の学科はともかくとして、Computer Science関係の学科は軒並み「学部において、これこれに相当する単位を取っていること」という要求を出しているのである。内容的にはアルリズムだの計算機アーキテクチャだの、データベースだの。あるいは内容的にはたいしたことはないのかも知れない。ところが私が公式に取得した単位は「計算機概論」だけである。これで上記の要求単位を全て満足していると強弁する勇気は私にはなかった。(ここで強弁できるくらい心臓が強くないと当社では出世できないだろうが)Computer Scienceは難しそうだ、かと言って今更機械工学を勉強するのはいやである。(私は材料力学と、熱力学が大嫌いだ。しかし機械工学科の本分はそこにある)
困った困ったと思ってるうちに、Rensselaerの願書についてきた全学部案内を見ているうちに、ミーハーうけしそうな学科を見つけた。Decision Science これである。なんてかっこいい名前なのだろう。ここだここだ。内容を読んでみると要するにOperations Research である。これにしようと考えて私はあっさりと志望分野を変更した。しかし本社の面接で人事部長を前に「コンピュータ科学はこれからのキーテクノロジーです」などと断言してしまった以上、なんらかの庇理屈を考えねばならない。そこで「ORとコンピュータ科学は非常に接近してお互いに関連の深い学科であり、またORはコンピュータ科学よりも実戦的であるので、私の業務関係からして、適当であると考えます」なーんて嘘800並べたてたのである。
(しかし結果的に於てこの言い訳は無用であったかもしれない。正直なところ私の留学テーマに感心を持っているひとはだれ一人としていないのである。従って学科を変更したことにたいするクレームはどこからもでなかった。当部の管理職のかたで、私の留学テーマについて自発的に質問をされた方は一人もいなかった。それどころか-これは米国に渡ってから知ったことだが-私がいた部の管理職の方で、私が何を勉強しているか覚えている人は一人もいなかったのである。私の直属の課長も含めて。 )
というわけであっさりと方向転換をして、各大学のOR関係の学科に願書を発送するとになった。次に悩むのはどこに出すかである。
希望する大学はもともと適当に決めていたのである。ところがどういう訳かこの希望順位は日進月歩で変更されたのである。つまり丁寧な願書が来ると「おお。ここはいいところかもしれない」と思って気が変わるわけである。
一般的にいって、どちらかというとマイナーな大学の方が親切な願書を送ってきた。一番丁寧だったのはBoston Universityである。Rensselaer Polytechinic Instituteにいたっては、願書請求のフォームをおくっただけで、妙に丁寧な手紙を付けて願書を送ってきた。私は最初このような大学にも全て願書をだそうかと思った。しかしその後調べて行くと、これらの大学に願書を出すのが躊躇されるようになった。
次に考えたのは何校出願するかである。ここで一番問題になるのは留学に必要な書類とその作成のめんどうくささであろう。はっきりいって願書作成は時間がかかる。何がかかるというと、一つには必要な書類をそろえるのに時間がかかるのと、もうひとつはタイプアップにかかる時間である。このうちどんな書類が必要かについて述べよう。
どの大学でも共通的に必要な出願書類は以下の通りである。
(1)成績証明書(英文): 教養、学部、大学院とも
(2)推薦書3通 : たいていの場合一通は大学の教授からという但しがきがついてる。
(3)財政能力証明書
(4)TOEFL、GREのスコア
(5)Statement of Purpose : 何をやりたいか。A4一枚位
これらをそろえねばならない。(1)の成績証明書は、できるだけ速めに行って作ってもらったほうがよい。○大の場合、一度申請に行って、そのあと一週間位してまたとりにいくか郵送してもらう必要がある。各大学2通づつ、各グレードに応じて要求されるので結構な数になる。おまけに大学によってはGPAすなわち成績の平均点を要求してくるところもある。もっとも私の場合、合否のみで判定される科目が結構あったためN/A(わからん)で通してしまった。一つ注意しなければならないのはU.C.Berkeleyは何を考えているのか自分の国の言葉で書いた成績証明書を要求してくることである。従ってバークレイに出願しようと考えるならば和文の成績証明も手配しなくてはならない。
もうひとつ各大学はだいたい成績証明書をシールすることを要求してくる。これは各大学に言えば、封筒をくれるので自分で大学が貸してくれるサインのはんこを押せばよろしい。これは特に要求されなくてもシールしておいたほうが大学のうけがよいようだ。
次の推薦書であるが、これが結構難物である。3通必要なので、誰に頼むか考えなくてはいけない。大抵一通は教授である必要がある。私は卒論の担当教授と、部長及び所長に頼んだ。(元々はSAM 副所長にお願いするつもりで持っていったら、所長の方がいいだろうといわれたので、所長にお願いすることになった。)
この原文はたいていの場合書いてもってこいといわれる。(私は3通ともそうであった)推薦書の例文にかんしては、あっちこっちにたくさん例があるので、特に困らないであろう。私のかMr.ARのものを参考に、自分流にアレンジすればよい。(欠点についても述べた方がよいという説と、そんなことを書くのはAmerican Styleではないという両方の説があるがどっちでもよかろう)Iさん曰く「自分で自分を激賞する」ことに良心の呵責さえ覚えなければ、問題はなかろう。こいつは勉学熱心、部下にも上司にも好かれ、仕事もきちっとやる。こんないいやつを大学にいれないなんて、大学だけではなく、産業界全体の損失だ、などととても日本語では書けないような内容を並べておけばよい。
注意事項としては、封筒などを指定されていない場合でも、封筒におさめて、作成者に封印としてサインしてもらったほうがよいことである。また例えばBest Student in X yearsとかTop 1%のすごい生徒だとか選択して記入する欄も、適当に選んでおけばよい。早い話が私も全部自分で選択した。所長にサインをもらいにいくときも、好き勝手書いておけば問題ない。
(3)の財政能力証明書であるが、留学の説明をうけたときに見本をもらっていると思うので、それを使えばよろしい。サインは本社の人事部の主務でよいそうである。ただしサインをとるのに結構時間がかかることを考えにいれておいた方がよい。これも当たり前の話なのだが、だいたい安全をみて2-3週間位勘定にいれておいた方がいいだろう。もうひとつの注意事項としては、本社のレータフォームを使用することになっているので、多めに速めにレターフォームを入手しておいたほうがよいということである。当所には多分当所のレターフォームしかないと思う。(どこが違うかと言うと、上に書いてる住所が違うのである。)レターフォームは本社の留学担当の人に言えばくれるはずだ。
(4)TOEFL、GREのスコアについては、申込書にスコアレポート要求フォームがついているので、それを使えばよい。ただしここでまたもや送金小切手を作成する必要がでてくるので面倒である。12月、1月位にうける試験であれば、受験時にスコア発送要求をしておいた方がよいであろう。
(5)のStatement of Purposeであるが、これはもっとも重要である。例えば推薦書にスペルミスがあっても、「作者は自分でないから」といいのがれはできる。こっちはそうはいかない。私の例を見てもらえばわかるが、ほとんどIさんのと以下同文である。ここではあんたの大学のなんとかいう先生の研究に興味がある、というふうな具体的な記述をおこなったほうがよいという説があるので、学部の教授のプロフィールを見て、関係ありそうな先生の名前をあげておけばよい。
スペルミス、文法の誤りなどについては、誰か英語のわかる人にみてもらったほうがよいであろう。こちらも自分の良心に蓋をする必要がある。まあ日常業務で十分鍛えられていると思うが、私の場合も読み返すと赤面するような内容である。誰がC3Iシステムの設計などに従事しているのだろう。しかしまさかビデオ作成とOpeartino & Maintenance Manual 作成に役立つと思うから大学院に入れてくれとは言えない。まあそんなことは気にしないことである。しかし後述するがこのことでしばらく私の体調はひどく低下してしまった。
以上が共通事項であるが、このほかにも、もちろん各大学独自のフォームがある。これを作成するのが結構面倒である。何が面倒と言って、タイプをするのが面倒である。まずタイプを探すのが一苦労である。最近はなんでもワープロでうつので、タイプは私の知るかぎり、当所では某営業課にしかない。そこのおにいちゃんに泣き付けば貸してくれるが、この部屋から持ち出さないでくださいと言われる。噂によると提携している米国の会社の事務所にもタイプがあるそうなので、こちらを使えばよいかも知れない。ただし字が結構大きいので、細かいところは手で書く。
量が少ないものはこれでも良いが、財政能力証明書など文書量の多いものはMacintoshのレーザプリンタでうちだした方が、賢明である。特にスペルミスをする可能性があるからだ。ところがカーボンがついて複写式になっているものは、レーザプリンタでは印刷できない。従って、某センタ2階にあるImage Writer LQを使用してうちだす必要がある。2-3回試し打ちをしてから印刷してみれば、まず失敗はないだろう。
とかなんとかやっていると、結構時間を食う。いざ書類を作成しようと考えると、ついつい志望校は減少しがちになる。なかでも願書作成最難関は天下のMITである。なにが面倒臭いと言って、ここは成績証明書を大学独自のフォームにタイプしなおす必要があるのである。何がうれしくてこんなことをするのかはよくわからない。私はMITの名前につられてよってくる志願者を、願書作成の段階でフルイにかけているのではないかと常々考えている。あの成績証明をすべてタイプしなおそうというのは相当な根性の持ち主である。ちなみに私はあっさり挫折した。(Mr.ARは根性で出願した)
以上が実際に願書を作成する際の注意事項である。さてどこに出願するかという話に戻ろう。だいたい5-6校に出願するのが妥当な線だと聞いていた。大体名の通った大学で、上から6校選んでいくと、そう選択の幅はない。名の通った大学を調べるのに、興味のある分野の論文の出所などを参考にした。そうして上げたのが付表(これも紛失)の留学先Candidate一覧である。
だいたい妥当な線であろう。ここで候補には上がったけれど、出さなかった大学には、University of Texas at Austin (某計画主務の強い推薦があったが、願書とりよせが間に合わなくて、断念)University of Southern California(締め切りが遅かったので、どこにもはいれないようだったら出願しようと思った。)Maryland University(TOEFL450点から面倒を見ようという広い心が気に入ったが、マイナー大学だとわかった)Boston University(願書などが、とても感じがよかったが、ここも超滑り止めに考えた)などがある。
結局Stanford University , U.C.Berkeley,Rensselaer Polytechnic Institute, The Johns Hopkins University,Carnegie Mellon Universityに出願した。いづれもOR関係の学科に出願したが、ただ一校Carnegie MellonだけはMechanical Engineering に出願している。なぜかと言うと、単にMechanical Engineering の願書しか手にはいらなかったからである。ORの願書請求は間に合わなかった。しかしStatement of Purpose はORと同一文であったので、いわば話のねたに出願したようなものである。
もともとはこの5校に出願するつもりであった。ところが年末になっていきなりGeorge Wahington Universityから願書を送ってきた。ここがまた変わった大学で、なんと推薦書がいらないのである。おまけに学問のレベルは別として、学科の研究内容に堂々とDefense Systemなどと書いてある。さすがWashington D.C.にあるだけのことはある。と感心して、出願することにした。
出願するときの送り方であるが、時間的余裕があれば、会社の郵便を使用してもかまわない。ただし一部には願書は早くつけばつくほどいいという意見もあるので、国際ビジネス郵便というのを使用すると早いようである。私はいつも名古屋駅の郵便局から送っていたが、これ国際ビジネスで送りたいんですけど、と言えば、色々書きなさいと言ってくる。登録が必要なので、いっぺん使ったら登録番号を覚えて、ついでに宛先のシールを何枚か余分にもらってきて、次に使用するときに役立てるとよい。
SAM 副所長:Small Asswhole Manager ケツの穴の小さいマネージャの略である。一見偉そうなのだが、とても細かいところ「ばかり」気がつく人だった。本文に戻る
願書作成最難関:(過酷な願書トピック一覧)確かにMITだとこれくらいやらないと、世界中から信じられない数の願書がくるかもしれないが。。。本文に戻る