日付:2002/10/10
お台場カレー前回までのあらすじ
札幌でスープカレーのおいしさを知った男は、関東にあるスープカレー店の少なさに悩む。国立でおいしいカレーと巡り会えたが値段は札幌の2倍。カレーのうまさに幸せな気分になりつつも、心の中に一抹の影があることに気がついていた。
---
関内にあるカレー屋に再度の挑戦を試みる。今度はちゃんと営業しているようだ。メニューを観ながら何を頼もうかと考える。カウンターの中にいる男性は妙に筋肉質。それと関係有るかどうか知らないが、筋肉カレーとかいうのを注文する。
でてきたのは、鳥のももが2本に野菜がごってりとはいったカレーであった。私は鳥肉が大好きであるから歓迎すべきなのではあるが、2本はいくらなんでも多い。最後のほうは鳥のもも肉カレー煮のようになってしまう。おまけにカレーの味自体もあまり凝っているとは言えない。その後もその店には行ったがこれでは名ばかりのスープカレーだ。
などともんもんとしているとき、OG氏のサイトに「秋のカレー会の案内」が掲載された。私はいちもなく二もなく書き込む。
「? 大坪でございます。カレーカレー。
22or23だったら今のところ大丈夫でございます。最近なにかと自由が利かない身体ではございますが。お台場ってのはどんなカレーなのでしょうか?ではでは。」場所は国立かお台場、ということであった。この前いったカレー屋にもう一度言ってみたいとも思ったのだが、お台場には私が行きたい場所があった。船の科学館である。10年以上前に行ったことがあるのだが、最近妙な展示物がでてきていると言う。結局9月の22日お台場に向かうこととなる。
当日、待ち合わせ時間の13時より20分ほど前に駅に着く。まだ誰も来ていないだろうと思って見回せば目印であるオレンジ色のシャツだかジャケットを着た男性の姿が。をを、あれはOG氏だ、と思い声をかける。一瞬後にその横に立っていた男性が本日の参加者MS氏であることが判明する。
お互い挨拶を交わすと自己紹介などをやり出す。ほどなくKY氏も到着し一同はカレー屋に向けて歩き出す。OG氏によると一度行ったことがあるのだそうだが、道は今ひとつ不確かだ。こっちかなあ、とかいいながら歩く。海岸沿いのしゃれた通りなのだろうが、人通りはほとんどなく、マンションらしき建物の一階で営業している店の中にもつぶれてしまったものがちらほら見える。途中話を聞けば、MS氏は北海道にいった事はあるが、スープカレーは食べなかったとのこと。それを聞き
OG氏:「不幸ですね」
私:「間違っていますね」
OG氏はともかく、私のはつい一年前までスープカレーを知らなかった人間の台詞ではないと思うが気にしない。
そのうち目的とするスープカレー屋に到着する。中か外かと言われたので、気候もいいし外に座ることにする。さっそく注文。基本はチキンカレーというOG氏の意見を聞いているうちに皆チキンカレーを注文することになる。これでは面白くないということで、OG氏は野菜カレーに、私はロールキャベツカレーに変更する。MS氏が「これをプリントアウトして持ってくれば飲み物がタダ」というページをプリントアウトして持ってきてくれる。注文を取りに来たウェイターに見せるが彼はしばし沈黙してその紙を眺め続ける。そのうち奥に向かって誰かを呼んだ。きっと今まで持ってきた人がいないんだよ、と言い合う。そのうち奥からでてきた女性が注文をとってくれた。彼女の日本語は中国人のそれのようである。となれば先ほどの男性が眉間にしわをよせて紙に見入っていたのもそれが理由であったか。OG氏が
「辛さは変えられますか?」
と聞く。それに対する答えは
「けっこう辛いです」
だった。会話はかみ合わない。
注文が終わるとあれこれのお話が始まる。ネットで知り合うことがなければおそらく顔を合わせることも無かっただろうというほど4人の仕事は異なっている。MS氏は台湾のおみやげのクッキーともケーキともつかないものを持ってきてくれた。食事の後に食べようといって机の上に置く。持ち込みだから文句をいわれないかと危惧したがそんなことはなかった。OG氏は「札幌カレー」とかいう題名の本を取りだし
「いつもこれを読んでいます」
という。そんな本を読むと却って札幌スープカレーに対する郷愁が高まってしまうのでは、と思うのだが、彼のカレーに対する愛はそうした理屈で推し量れるものではないのだろう。そのうちカレーが運ばれてくる。
スープカレー初挑戦のMS氏にOG氏が食べ方を伝授する。その後は皆一心不乱にカレーを食べる。時々「おいしい」とかいう言葉がまじるだけで基本的にはみんな静かになる。
途中野菜カレーを食べていたOG氏が「チキンカレーの方がよかったかな」と言う。私も心の中で同意するが黙々とロールキャベツカレーを食べ続ける。食事の前に飲み物がすでに運ばれてきていた。それとともにスパイスらしきものが運ばれてきたのだが、その用途について我々は論議を交わす。普通に考えればこれはカレーにかけるものだがひょっとするとこのヨーグルトらしき飲み物にいれるのではないだろうか。そもそもこのヨーグルトはなぜピンク色をしているのだ。カレーの到着とともにそうした論議は収まっていたが、皆があらかたカレーを食べ終わると再燃する。MS氏は素早く行動し、店の人に聞きに行く。結局当初の想像通りカレーにかける物、ということで決着する。
味自体は国立のカレー屋のほうが良かったとも思えるが、関内の筋肉カレーより遙かにスープカレーらしい味だ。おまけに国立より値段が安いし。誰かが
「休日の昼間だというのにここらへんはこんなに人がいないのでしょうか」
と言う。確かに人がほとんどいない。店にいる客は我々だけである。会計をすませて出ようというときに入れ替わりにカップルが来たが、はたしてこんなことでこの店は営業を続けていくことができるのだろうか。我々はそんな不安を胸にいだきながらその場所を後にする。
この後我々は船の科学館にいくことになるのだが、その様子は「巡り巡って-船の科学館」に記述する。一通り見終わった後、どっかでお茶でもしましょうということになる。なんとなく駅の方に行けば良かろうと我々は歩き出すがMS氏は冷静に「あそこに喫茶店があります」と指摘する。
はいってあれこれとお話しする。KY氏は昨晩2時間しか寝ていないのだが、「今日のこの時間はオフ」と決めたのだそうだ。ハリーポッターの話がしばらく語られる。OG氏曰くハーマイオニー役のエマ・ワトソンという女性は役を離れるとかなり大人びているとのこと。7作あるハリーポッターのうち何作が映画化されるかわからないが、毎年作るわけにはいかないから、そのうち原作と出演者の年齢差が開いてし舞うに違いない。そうしたときにはどうするか?彼はハーマイオニーの外伝を製作することを提案する。自分に魔法が使えると気がつく前の素直な学園ものなどどうだろう。時々知らず知らず魔法をつかったりして。
そのうち「今日の青森の展示は面白かったですね」という話題から、「いや、世の中にはもっと変なところがあるのです。例えば、この前行ったルーブル彫刻美術館などは。。」と口で説明し始めてはたと気がつく。写真を見せた方が早いではないか。
そう思うとさっそく愛機iBookを取り出し、デジカメでとった写真をみせながらひとしきり説明する。皆聞いてくれたが説明が終わったところでOG氏が
「それでなぜいきなりパソコンがでてくるのですか?」
と聞く。いや、これは今日くる電車の中で文章を書いてみようと思ったからですとか言ってはみたものの、考えてみれば喫茶店でいきなりパソコンを取り出し、あやしげな写真の説明を目を光らせながらやりだす、というのはかなり異様だ。
そんな会話がしばらく続く。ふと気がつくとにぎやかだった店内は静かになっており、どうやら船の科学館が閉館時間になったのに伴い店の中は私たちだけになってしまったようだ。駅に向かい新橋でKY氏と別れる。彼女はこれから家に帰りしばらく寝た後お仕事なのだ。
残った3人は横浜で飲もうではないか、ということになる。横浜についたはいいが飲み屋はどこも混んでいて入れそうにない。少し前に全く同じ目にあった私はかすかな記憶をたどり少し離れたところにある居酒屋にたどり着く。
それからいろんな事を話して10時頃まで飲んでいた。私はこのとき開催されていた「こっそり月見雑文祭」への参加作品を書き上げられずに困っていた。欲張り過ぎているせいかもしれないが、どうにも話がまとまらない。すでに書き上げているOG氏とSM氏からはいろいろとプレッシャをかけるような言葉をもらう。OG氏曰く、せっかく入れなくてはいけない言葉があるのなら、それを無理矢理入れるのではなく、その言葉の扱い方を追求してみてはいかがだろう。なるほど、と思うがそんなことを考え出すとますます文は思い浮かばない。ええい、夏休みの宿題だって、内容よりもとにかく提出することに意義があるのだ、私はなんとか書いてみます、とその日宣言したのだが、そのことを激しく公開したのは翌日のことであった。そのとき酔っぱらった頭の中には「あ、なんとなくこれでいけそう」というアイディアがあったのだが、しらふになってみると到底使えるようなしろものではなかったからだ。
そんなことを話しているうちいつしか時間は過ぎ、SM氏の終電が危うい時間となってしまった。いそいで会計をすますと駅に向かう。JRにのる二人とそこでお別れ。今度は鍋をしましょう、という話がでちる。本日仕事の都合(というか後遺症)で参加できなかったSY氏からは「カレー鍋」という提案もでているがさすがにそうはなるまい。
注釈