題名:映画評

五郎の入り口に戻る

日付:2002/7/13

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950円-Part6(Part5へ | Part7へ)

シンデレラマン-Cinderella man(2005/9/18)

大恐慌時代のアメリカ。日々の暮らしをたてるために苦闘する人々の希望を集めたボクサーが居た。彼はかつてチャンピョンに挑戦するとこまで行ったが大恐慌で全てを失い、家族を支えるべく苦しみもがいていた。そこに訪れたSecond Chance。彼は再びリングに立つのだった。

という感動的な実話をベースにし、ラッセル・クロウとレネーゼルウィガーを主演に据え、ビューティフル・マインドの監督を起用すればアカデミー賞間違いなし、と誰かが考えたのだろう。そしてそこで満足してしまったのだろう。

というわけで決して退屈ではないが見終わった後に何も残らない映画ができあがった。これだけのキャスト&スタッフを揃えて何故こんな映画を作ることができる。ラッセル・クロウとレネーゼルウィガーがいちゃつくシーンが何度か出てくるのだが、そこでがたっとテンポが落ちる。これは一体、、といやな予感にとらわれながら見続けたのだが、とにかくゼルウィガーがなんともならない。ブリジット・ジョーンズ(2の方ね)と同じくらいのチャーミングさだ。怒り顔できーきーわめくばかりで何の魅力も感じられない。大根役者の訳がないから、何かが間違っているのだと思う。脇役もクロウのマネージャーだけはいいと思うが後は全くだ。話のパターンとして「どん底生活」をきちんと「どん底」に描いてもらわなければ成功の感動も薄れるというもの。ゼルウィガーのきーきー声からはその悲惨さを感じることはできない。

少しだけ感動したのは彼に希望を託し声援を送る人々達の姿。しかしそれでさえも同じような時代を背景とした映画シービスケットとは比べ物にならない。とあれこれ文句ばかり書きながらも980円を付けるということは期待が無駄に高かったということか。


宇宙戦争-War of the Worlds(2005/7/3)

前作は子供の頃TVで観た記憶がある。その前作も含め宇宙人やら怪獣が来ちゃったぞ、映画では主人公がいつのまにやら○○対策本部の一員となることが多い。語り手にすればそのほうが全体の説明をするのに便利なのだろう。

この映画ではそうしたことは一切起こらない。トム・クルーズ一家(というかもう離婚しているのだけど)がひたすら逃げ回るだけである。流言飛語が飛び交い、とにかくこてんぱんにやられていることしか解らない。でもってこの一家がすさまじく馬鹿な行動ばかりしてくれるわけであった。

トム君は半開きの口がトレードマークだが、これが突如現れた宇宙人の乗り物をあんぐりを見つめる姿にぴったりである。あんた、とりあえず死ぬ気で家まで逃げ帰れよ、と何度も心の中で突っ込みを入れるがとにかく呆然と立ち止まってくれる。ダコタ・ファニングちゃんは米国映画特有の「神経質で理屈と文句ばかり言う子供」役。とりあえずキャーキャー悲鳴を上げ「まずい」方向に走っては呆然と立ち止まる。一番とんでもないのがティーンエイジャーの男の子。「この戦いを見届けたいんだ」とかいってふらふら一人でうろつきだす。10才の妹もほっぽらかしにして。

というわけなのだが、考えてみれば日頃の自分たちの行動だってそんなに立派な物ばかりではない。それどころか宇宙人がわらわら出てきたら誰だって馬鹿なことばかりやるんだろうなあ、と思ったりする。彼らの無駄と錯誤ばかりの逃避行はそうした意味でリアルにも思え。「やたらと戦いに加わることを切望する少年」なんてのは普遍的に存在するようだし。

最後には撮影に協力してくれた米軍への感謝からか、よれよれの宇宙船相手に「一矢報いる」シーンをいれてみたり、あるいは最後にくっついている「トム・クルーズ一家だけのとってのHappy End」はブラック・ジョークなのではないか、などというのは勘ぐりすぎなのだろうが。


リチャード・ニクソン暗殺を企てた男-The Assacination of Richard Nixon(2005/6/16)

ショーン・ペンがすばらしい、というかミスティック・リバーの強面チンピラ・ボスと同じ人間が演じているとは思えないほど「まるでダメ男」を演じる。

これがもうどうしようもないダメ男で無能で女々しい性格なのはいいとしてもうまくいかないのは全ては周りが悪いせい。ボスは俺に敬意を払わない。おれの権利をどうしてくれる、と逆恨みするような奴であり救いようがない。女房が逃げられ兄に縁を切られるのも宜なるかな。

この映画に関して書かれた文章で目にする「不器用な生き方」とはどこか好意的な表現。だが私はそうは思わない。自分を被害者と見なすわりには平気で兄の財産を盗み、唯一の友達を刑務所に放り込まれる寸前の目に遭わせ、果ては全く罪のない人間を殺害する。そして自分を責めずに「社会」を責める。一番ぴったりくる言葉は

「幼稚」

だろうか。しかしこう書いていて自分やあるいは近くにいる人間と重なったりするのも確か。

でもってその男が逆恨みの対象を時の大統領ニクソンに向け、飛行機をハイジャックしホワイトハウスにつっこもうと企てる。。しかしこの最後の場面でちょっとペン君が立派すぎた気がする。頭は狂ってるんだけど結構勇敢なテロリストになってしまうのが(個人的には)惜しい。最後までどうしようもなくどじで情けない奴で飛行機につっこもうと駆け出すところですっ転び簡単に取り押さえられる、とかだったら見終わった後でもっと気分が悪かったことだろう。

というわけでショーン・ペン以外見所の少ない映画だが真面目に作ってあるとは思う。渋谷で見たのだが平日の昼間というのにスーツをきた私よりちょっと年上のおじさんたちがちらほら。帰りのエレベータで一緒になったのだが空気が重かった。みなどこか自分を重ねていたのかも知れない。


フォーガットン-The Forgotten(2005/6/5)(1000円)

予告編を見ずにいればもうワンラックアップだったか。

一人息子を飛行機事故で失ったジュリアン・ムーアはその悲しみから立ち直れずにいた。しかしある日写真の中から一人息子の姿が消える。そして実は息子などいなかったのだと告げられるのであった。それは造り上げられた記憶だと。

という「悲しい母親の物語」かなあ、と思うとNSAがでてくる。映画の中では実にいろんなことをする組織だが、とにかくでてくる。あら、「国家がからむ陰謀物語」かしら、と思っているうち予告編にあったとおり人間が

「ズバコーン!」

と空に吸い込まれていくのであった。

と予告編でここまでは知ってはいても「はて、これはなんなのか。最後はどう落とし前をつけるのか」と画面に見入る。というわけでそのぶっとんで行き方がなかなか面白い。(合わない人には全く駄目だと思うが)しかし実際に父親となった今となってはなかなかつらい場面、台詞が多いのも確か(これはたぶん私が感じ過ぎなのだと思うが)暴走を続ける舞台においても一貫して描かれているのは母の子供に対する愛。それ故の悲しみだからだ。

それがつたわってくるが故に絵柄だけ見れば平凡な日常そのもののラストシーンで「をを」と思ったことは確か。というわけで結構ご機嫌に見終えたのだが、一つだけ些細な事がきにかかる。

"You, son of a bitch!"を

「このサディスト」

と訳するのはいかがなものであろうかと。


レモニー・スニケットの世にも不幸な物語-Lemony Snichket's A series of Unfortunate Events(2005/5/6)

3人兄弟の元にある日いきなり知らせが届く。家が火事になり両親が亡くなったと。そして最初に連れて行かれた後見人はジム・キャリー。彼は子供達を亡き者にして遺産を横取りしようと執念深く迫ってくるのだった。

何故両親の家は火事になったのか。両親の秘密とは何だったのか。映画の最後まで観てもそれらの明確な答えはでてこない(と思う。もし私が見逃しているのでなければ)おまけに悪役はちゃんと逃げおおせ子供達の「不幸」は終わった訳ではない。

しかし「悪役はやっつけられ平和な日々が訪れました」という安直なエンディングはこの映画にふさわしくない。これは何よりも幼い兄弟達がお互い支え合って魑魅魍魎の闊歩する「世間」というものを渡っていく物語なのだと思う。そして「世間」に簡単なハッピーエンドなどというものは存在しない。ファンタジー調の造りで時代も国もはっきりしない世界の物語だが、そうした骨格がしっかりしているところに好感が持てる。

子役はそれぞれよいと思うが、自分の子供が似たようなフェーズにいる、ということで一番小さなサニーちゃんがかわいい。うちの子供も言語より叫び声でコミュニケーションをとっているが、あれはあれでいろいろなことを言っているのかもしれない。しかしメリル・ストリープってへんな役もやるなあ。


ドッジボール- DODGEBALL-A TRUE UNDERDOG STORY(2004/10/23)

隣にかっこいいスポーツジムができて今や変人だけが残っているジム。30日以内に$50,000つくらないとジムがつぶれる。そうだ、ドッジボールのトーナメントに出場しよう。賞金がちょうど$50,000だし。

というわけで、これ以上はないと言えるほど「落ちこぼれ軍団ががんばって最後に勝利をつかむ」話。ストーリーにひねりはないが、小技が光る。私は観ている間少なくとも4回声をたてて笑った。悪役というか敵役の小男がいるのだが、これがまた徹していて好感が持てる。そいつが率いるチームとの決勝戦の前夜にあれやこれやある、なんてのも実にパターン通りなのだが。

Matrixでトリニティが"Dodge this"と言って至近距離からエージェントにピストルを見舞う場面があったやに記憶している。というわけで「ドッジボール」とは球を避けることだと自分がプレーしていた数十年後にして知ったわけだが、この映画に出てくるDodgeballは結構面白そうだ。スピーディーだし、チームプレーを工夫する余地もある。職場で余興にやるのにいいかもしれん。

なんてことを考えながらケタケタとあっというまに終わりまで観ました。少林サッカーほどの破壊力はないが、真面目につくられたお馬鹿映画の佳作だと思う。ただもうちょっとがんばれば破壊的に面白くなったのかもしれん。例えば褌、はちまき姿の日本人チームにもっと妙な事をやらせるとか。。


コンスタンティン-Constantine(2005/4/17)(1000円)

キアヌ君である。予告編からするに、Matrix風のお話らしい。というわけであまり期待せずに見にいった。今回のキアヌ君はなんとか天国に行こうと善行を重ねる悪魔払いの役。というわけで自己中心的の困ったちゃんである、と描きたいらしい。どれくらい困った男かと言うと、映画の冒頭で道に煙草の吸い殻を捨てるくらい困った男なのである。

あまり詳しくは知らないが、カソリックの(キリスト教のではない)世界観によってお話が進む。なんでも自殺すると有無を言わせず地獄に行ってひどい目にあうのだそうな。他にも天使やら地獄からのなにやらいろいろでてくる。危機に至れば(日本の)神様仏様に祈りを捧げる私としては、「ふーん」という感じが否めない。ただ、あまりグロくないのが有り難い。

でもって最後は映画だからそこそこ丸く収まる。しかし予想外に良かったのはこの終わり方だった。ハリウッドお得意の「どっかん一発ハッピーエンド」に陥ることなく、結構強いけどあくまで人間のキアヌ君が、それなりに頭を使って無茶苦茶強いサタンやら天使やらと渡り合う。そして最後も丸くは収まったが「ハッピーエンド」かと問われれば少し考えることになる。簡単にヒロインとくっつかないところも好ましい。

キアヌ君が持っている銃はヴァン・ヘルシングみたいだが、映画の中身はあれよりずっと上等だったと思う。ヴァン・ヘルシングでは無限に出ていた弾丸も、こちらではちゃんと弾切れを起こしていたし。

ところで天使のガブリエルが70年代ロックスターみたいな格好をしていたのは何か理由があるのでしょうか。

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注釈