SONY CSLが時々オープンハウスを行っているのは知っていた。しかし招待制だから参加したことはなかった(私友達少ないし)縁があって昨日そのシンポジウムに参加した。
一言でいえば驚いた。流石ソニーだと思った。
要約すれば「三文芝居のような大仰な問題定義と、どうしようもなく矮小で陳腐な研究内容」
ということになる。
公演は2部に別れる。後半のAugmented Humanは東大暦本研の概要発表のようなものだったから省略。前述の感想は主に1部のGlobal Agendaに関するもの。
具体的に書こう。
トップバッターは「今地球は持続可能な範囲を超えてしまっています。農業は自然を破壊しています!」と聞き飽きたような主張を延々繰り広げる。ちなみにこの1部は全員
「プレゼンが聞いているほうが気恥ずかしくなる大仰」
という特徴がある。これはソニーCSLで生きていくための才能なのだろう。
でもってその解決策というのが「土地にいろいろな作物を植えます。すると昆虫も増えます!」というもの。そんな話は「奇跡のりんご」で散々聞いた。その方法で「全ソニー社員はこの農法だけで生活してます!」とかいうのだったら聞く気になるけど。まあがんばって作物作ってください。
次の人。「市民が変える未来都市」街は現在Top downで作られてます。これをWikipediaみたいにしたい!
おもしろいねえ。俺の家のベランダの外観を、知らない誰かが勝手に編集してくれるわけだ。ルーピー鳩山以来「市民」という言葉は私の警報装置を鳴らすが、まあそこは問わない。
でもって提案しているのが
・建物の色をみんなの意見で決めて、変えられるようにします!
・個人にHMDをつけて、建物をぐにゃぐニャに見えるようにします!
・3Dプリンタで、種を植えられる何かを作ります!これで自由に庭ができます!
ふーん。すごいねえ。でその庭はどこにおくわけ?
3人目。タイトルがすばらしい。
「破壊的イノベーションオープンエネルギーシステム」
さすが盛田氏が社長をしていたころは、連続して破壊的イノベーションを成し遂げたソニー!でもってこの「破壊的イノベーション」が何かといえば。
自然エネルギーは使うのが大変です変動に周りが対処しなくてはいけません。(あたりまえ)だから小規模太陽光発電と、蓄電池をDCで接続してお互いに融通できるようにしました!これは現在の「大規模発電所で発電し、送電線で電力を送るのとは全く逆の発想です!」
あのさあ、
そんな話は何十年も前から散々聞いてるんだよ。沖縄のどっかの大学で実装したとか言ってるけどさ。それで太陽光発電が夜間発電できない問題をどうやって解決するわけ?
おそらくこの「研究」が一番特徴をよく表している。陳腐な実施内容に「オープン」とか「破壊的イノベーション」とか仰々しい言葉をつければすごい研究のできあがり。It's a SONY
最初公演が始まった時、会場は満員で立ち見が出るほどだった。ところが公演が進むにつれてどんどん人が減っていく。途中からソニー社員と思しきIDをつけた人がはいってくるのだが、それでも第2部では空席が目立つほどだった。
自分が企業研究グループにいながらこういうのはなんだが、企業が持っている研究所というのは実に変わったところである。つまるところそこに金を出す人の意向が大きく反映される。多分ソニーではこういうのが受ける、というかこうしないとお金がもらえないのだろう。これで金がもらえる、というのはうらましいと思うが、あんなプレゼンを人前でやらなくてはならないのなら御免こうむる。