2012-03-30 06:46
調子にのってiPadを5.1にアップデートした。するとXCodeが
「このiPadは開発に使えません」
というようになった。げげげ。
慌てて調べれば、iOS5.1上で動くアプリを開発するためには、XCode4.3.2を使う必要がある。そしてXCode4.3.2はSnow Leopard上では動かない。MacをLionにしなくちゃ。
というわけで泣きながらLionにアップデートした訳だ。最初は
「なんだかボタンのデザインがチャチだなあ」
と思ったがなれというのは恐ろしい。今や個人で使っているSnow Leopardに戻ると
「あれ、2本指スワイプで前の画面に戻れないの」
と思う日々である。
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とここまでが話の前段。実はMac OSでは近年画面右端にでているスクロールバーが人知れず変化を続けている。
その昔スクロールバーの両端には矢印ボタンがあった。それを押すことにより連続的にスクロールすることができたのだ。そしてスクロールバーのバーの部分をぐいっとつかんでもスクロールすることができる。
そのうち両端にあったスクロールボタンは片側-下側-に集まることになった。最初は違和感を感じたものだが、そのうち気にしなくなった。そもそもスクロールボタンを使わなくなったのだ。だからそれがどちらにあっても気にしない。
そしてLionを使っているときふと気がつく。そもそもスクロールボタンが消えているではないか。ユーザがスクロールをしようと思えば、そのときだけ現在画面に表示されている範囲を示すバーが表示される。しかしそれだけだ。つまりスクロールバーはいつの間にはほとんど消え去ってしまったのだ。
私は今「いつのまにか」と書いた。それほどこの「大変化」は人に知られることはない。なぜかといえば、ほとんどの人が今やスクロールにスクロールバーを使っていないからだ。マウスのホールをまわす、あるいはトラックパッドの上スワイプする。そのどちらにもスクロールバーが介在する余地はない。ただ自分がスクロールしている場所が全体のどのへんか示すだけである。
何を細かいことを言っているのかといわれるかもしれないが、これは大変化である。スクロールバーのデザインは、Macintoshがこの世の中に現れてから、ちょっと前まで変わらなかった。それがごっそり変わったのだ。
何よりもショックなのはそれを誰も話題にすらしないこと。なぜかといえば、iPhoneにスクロールバーがないからか。。。
思えば2007年1月、あの瞬間は本当に大きな「転換点」だったのだ。それ以来作られる携帯電話はみんなiPhoneのようになった。今ではほとんど知る人はいないだろうが、そもそもAndroidはこんなものだったのだ。
「もう一つ言っておきたいのは、Androidの開発はiPhoneより前に始まっていたことだ」。その通りだEric。ただし、それはこんな風だったよね。
それだけ。
via: エリック・シュミット:モトローラ・モビリティーは優遇しない
あの瞬間以降、「あたりまえ」が大きく変わった。確かに携帯電話がすべてiPhoneになったことに比べれば、スクロールバーの変化など「微々たるもの」なのかもしれない。
2012-03-29 06:49
AppleがTVセットを作っていることは、ほとんど既定事項として扱われているようだ。
Apple's much-rumored television set is likely to debut in 2013 rather than the late 2012 timeframe
via: Analyst Speculation Points to 2013 for Launch of Apple Television Set - Mac Rumors
もちろん噂であるからして、これがどのような結果になるかは誰にもわからない(一時AppleがPalmと何かしていたことは事実だろうが、そこから何もでてきはしなかった)しかし私はその製品について漠然とした不安を覚えている。
via: Analyst Speculation Points to 2013 for Launch of Apple Television Set - Mac Rumors
このデザインはどうみてもよろしくない。まるで私が作ったかのような特徴も工夫も思想も感じられない代物だ。そしてこんなコメントもある。
He says that Steve Jobs tossed out the new design five years ago. He adds, "Now there is nobody to say 'no' to bad design."
via: Former Apple TV Engineer: New Apple TV UI is actually one Steve Jobs threw away five years ago | 9to5Mac | Apple Intelligence
こんな製品がでてきてしまうこと自体、何かよからぬことを意味しているのではなかろうか、と私は考えてしまう。
TV画面にメニューを並べ、そこから階層をたどらせる、、というのはどの会社もやっていることであり、そして誰も成功した人がいないやり方だ。Apple狂信者としては、AppleがTVセットを出すときには、「さすがApple」と思わせるようなものを出してくる、と信じたいが、この画面を見ているとその狂信が揺らいでしまうのを感じる。
Jobs told biographer Walter Isaacson that he cracked the code to the TV
via: Former Apple TV Engineer: New Apple TV UI is actually one Steve Jobs threw away five years ago | 9to5Mac | Apple Intelligence
Jobsが生前に解読したという「TVの暗号」が素晴らしいものであってほしいと祈るばかりである。
2012-03-28 08:51
最近知ったのだが、CES2012でMicrosoftがこんなキャンペーンをやったのだそうな。
CES 2012の会場で行われたWindows Phoneと他のスマートフォンの対決企画です。Windows Phoneを持ったMicrosoftの担当者と、AndroidやBlackBerryといったデバイスを持った挑戦者による対決形式で行われました。
内容は、様々なタスクをWindows Phoneと他のデバイスでトライし、どっちが早く完了するかを競うという非常に単純なものです。Windows Phoneに勝ったら100ドルがもらえるという、何とも豪快アメリカンな催し物なのですが、内容を追ってみると非常に興味深いので、見てみてください。
via: CES2012: 他のスマホと対決する「Smoked by Windows Phone」イベント - ななふぉ
CES会場ではWindows Phoneが圧勝したようなのだが、これをRetail Storeでもやっているらしい。もしWindows Phoneより早くタスクをこなしたら、$1000のPCとWindows Phoneがもらえるのだそうな。
それでもって起こったこと。
The Windows Phone Challenge, provocatively dubbed "Smoked by Windows Phone" by Microsoft, appears to have suffered its first defeat at the hands of a competing smartphone this weekend, and Microsoft's response has reportedly been less than sporting.
via: Smoked by Galaxy Nexus: Windows Phone challenge defeated by Android 4.0 | The Verge
話としてはこうらしい。「二つの都市の天気を表示する」タスクをどちらが早くこなせるか?が課題。でもってMicrosft Retail Storeの人は、この課題に向けスタートスクリーンに二つの都市の天気を表示させていた。
チャレンジャーは、Android (Nexus)で同じようにWidgetを表示させていた。しかし彼はそれに加えて、ホームスクリーンをアンロックしていたらしい。そのため、Power Buttonを押すだけで二つの都市の天気を表示でき見事「勝利」したと。
ところがMicrosoftの人は「二つの異なる州の二つの異なる都市の天気を表示しなければならない」と言出し、勝利を認めなかったと。この「騒ぎ」への最初のMicrosoftの反応は
Microsoft's Ben Rudolph, the man playing a central role in pushing the Smoked marketing campaign, has offered Sahas an apology for the hassle and a rematch on a random Windows Phone challenge.
via: Smoked by Galaxy Nexus: Windows Phone challenge defeated by Android 4.0 | The Verge
つまりランダムに選んだ課題で再戦しよう、というもの。結果として騒ぎはもっと大きくなり、この同じ人は2時間後に
Microsoft has been roundly bashed for this technicality since then, so Windows Phone evangelist Ben Rudolph has just taken to Twitter to apologize and offer Katta a new laptop and Windows Phone, as well as an apology
via: Microsoft apologizes over 'Smoked by Windows Phone' controversy, offers winner laptop and phone | The Verge
ごめんなさい。ラップトップとWindows Phoneあげるよ、というはめになった、と。
こういう「的を外した傲慢なキャンペーン」はSony でもやりそうだ。その場合、ソニーは決して負けを認めないだろう。そう考えれば、Microsoftの今回の処置は「悪くない」ものだといえる。
しかし
問題はそこにはない。Windows PhoneのUIがすばらしいものだ、ということは多くの人が認めている。しかし現実には全く売れていない。
なぜか?という問いに対する答えの一つがこのキャンペーンにあると思うのだ。
Microsoft製品は、企業に勤務するものにとっては税金のようなものだ。つまり使わざるを得ない。そしてそこでは「作業の効率性」がなによりも求められるのだろう。
しかし
携帯電話に対して、作業の効率性を一番に求める人間がどこにいる?最近iPhoneにウサギの耳のついたカバーをつけている女性をよく見かける。
あれをみれば
「最小、最薄」
に心血を注いでいるメーカーの人は血涙を流すだろう。そこまで苦労して小さくしたiPhoneに何の役もたたないうさぎの耳をつけているのだ。
しかし
それが消費者というものだと思う。企業に大量にお買い上げいただくときには
「Windows Phoneを使えば、Androidよりも生産性が30%アップ!」
でいいと思うけどね。
考えてみれば、Windowsはとても売れているけど、それはMicrosoftが一般消費者向けのマーケティングに長けているからではないような気がする、、というのはApple狂信者の妄想かな。
2012-03-27 07:01
最近Googleの「変化」があちこちで伝えられている。
私が情熱を持っていた技術企業Googleは、今や管理された広告会社になってしまった――。米Googleを退社し、米Microsoftに転職したジェームズ・ウィテイカー氏が3月13日(現地時間)、MicrosoftのMSDNブログでGoogleを辞めた理由を説明している。
via: Googleに「-1」:Microsoft入りした元Google社員がGoogle離れの理由を説明 - ITmedia ニュース
Googleの「特徴」でもあったGoogle Laboを廃止したあたりから、これは明白になってきた。
しかし、あれだけウンコOSでもWindowsは世界標準になった。いま、Androidは17年前のWindows95だ。ウンコでも我々はAndroidを知らないといけない。エンジニアはウンコを食べないといけない。
もちろん、Chromeはよくできているし、gmailも愛用している。Google IMEは賢いと思う。google mapなどの、各種のgoogleのサービスがないとぼくは、生きていけない。しかし、最近、Googleが出すサービスは、なんか頭がいいのか、悪いのかよくわからない。
via: 今のGoogleには、すでに総合的な技術力は無い...かもしれない。 - 村上福之の誠にデジタルな話
この発言の中にある「玉石混合のカオスさ」がGoogleの特徴であったとも思うのだ。しかし今やそれは変化を見せている。
Near the end of his life, Jobs was visited at home by Larry Page, who was about to resume control of Google, the company he had cofounded. Even though their companies were feuding, Jobs was willing to give some advice. "The main thing I stressed was focus," he recalled. Figure out what Google wants to be when it grows up, he told Page. "It's now all over the map. What are the five products you want to focus on? Get rid of the rest, because they're dragging you down. They're turning you into Microsoft. They're causing you to turn out products that are adequate but not great."
via: The Real Leadership Lessons of Steve Jobs - Harvard Business Review
Steve JobsがLarry Pageに与えたアドバイスは"Focus"だったという。少しのことをとても上手にやること。AppleがiPhone,iPad(これらは基本的に一種類しかない)で驚異的な成功を収めていることをみれば、このアドバイスにも聞く価値があるように思える。
というわけで、PageはGoogle+にフォーカスしようとしたのだと思う。問題はそれが
「とても上手」
ではないこと。私にとってのGoogle+は
「Picasaの写真を共有するためのシステム」
でしかない。いや、高校の同期会の写真を共有するんだけどね。最近までいくつかのフィードを購読していたが、それももうやめてしまった。今やAKBのファン以外にGoogle+の存在価値があるとは思えない。
「広告会社」たることを選択したGoogleはこれからどこへいくんだろうね。私もGMailは愛用している。Google Readerは結局代わるものがないので使っている。というわけでここ数年Google依存は高まりも減りもしないのだけど。
2012-03-23 07:18
年をとると一年が早くなる。正月がきたなーと思っていると、いつのまにか年末になる。
毎年体が衰えていくことは確かである。髪の毛は年々白くなる。世の中は驚くほど変化することもあれば、そうでないこともある。
驚くほどの変化は、携帯電話で起こった。覚えている人がいるかどうかわからないが、ちょっと前まで日本では「ガラケー」が天下をとっていた。auのガラケーでアプリを作ることは可能だったが、それには
「auはアプリを作ってほしくないのではないか」
と思うほどの高い壁があった。私は未だに噂に聞く「auの開発環境」を観たことがない。そしてiアプリだの、javaだのStarだの、とあれこれやっていたわけだ。
しかし
iPhoneが日本で発売されたのは2008年。それからたった3年で状況は変わった。誰もEZアプリなど話題にもしなくなった。キャズムという言葉のはるか彼方にいたはずの私の姪までがAndroid Phoneを使っているのだ。2010年2月に、富士通でガラケーを作っている人は
まず最初にでてくるのが
"スマートフォンは話題にはなっているが、シェアはたったの2.3%"というチャートだ。つまりそんなものは気にする必要はない。主力はケータイだ、と言いたいのだろう。(少なくともこの後の説明で、スマートフォンとの関係を意識した説明は一切なかった)
via: ごんざれふ
と言っていた。それから2年たった今、彼は同じ説明をできるだろうか?
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というのは、今日書きたいことの半分。次は「思ったほど変わらなかったこと」である。
2009年9月に、ある人はこう書いた。
少し前のエントリーでも触れた事があるが、「このままHTML5が普及してくれればスマートフォン向けのアプリの大半はHTML+CSS+Javascriptだけで作れるんじゃないか」と感じ始めている私である。
via: Life is beautiful: で、実際のところHTML5でどのくらいのアプリが実装できるのか実験してみた
皮肉なことだが、この人がiPad上でリリースするアプリは未だにObjective-Cベースだ。HTML5ではいくつかおもちゃのようなデモを公開してはいるが。。
そしてなんだかんだ言ってFlashもまだ健在である。
「これからはHTML5」
と大声で公言していたGoogleですらまだFlashを完全に排除できないのだ。
スマートフォンの普及が進む中、iPhone には Flash が搭載されず、Android 版 Flash は開発停止になるなど、遅かれ早かれ Web 上から Flash が消えていき、リッチな表現は HTML5 に置き換わっていくことは確実となりました。
「これからは HTML5 だ」という印象を世間に強く与えたのが、2009 年の Google I/O でした。
Google はそれ以降、多くのサービスに HTML5 を取り入れてきました。しかし、いまだに Flash を利用しているサービスがいくつかあります。
この記事では、HTML5 化していない、または、できていない Google の 5 つのサービスについて、
- どこで Flash が使われているのか
- なぜ Flash が使われているのか
- 今後、HTML5 に移行するのか
を考察していきたいと思います。
via: Google がまだ Flash を使っているサービスでみる脱 Flash の難しさ - てっく煮ブログ
こちらは予想よりはるかにゆっくりと移行が進んでいるように見える。こうした「予想と現実のギャップ」は次の数字からも明らかだと思う。
「HTML5」が2012年に一般的なアプリの構成要素となるかというAppceleratorの調査に対し、79%がなるだろうと答えた。しかし、ブラウザで動作する全面的なウェブアプリの開発を計画していると回答したのは6%にすぎず、はるかに多い72%がハイブリッドアプローチを計画していると回答した。
via: 「Android」に対するプログラマーの関心が低下--原因は断片化 (CNET Japan) - Yahoo!ニュース
ここで言う「ハイブリッドアプローチ」がどのようなものかは、幅があるとおもう。本の一部だけネイティブコードで書き、残りはHTML5ですむものもあれば、ヘルプの中身だけがHTML5という場合もあるだろう。
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私がHTML+JavaScript+CSSで動くものを作ったのはもうだいぶ前のことだ。それからだいぶHTML5の環境も改善されているとは思う。
しかしiOS上でのCocoa開発環境に触ってしまうと、それらは「機能的に可能」としか思えない。私は年寄りだから、HTML5+Javascriptですごいものを作るという「重労働」は若い人に任せよう。新しいものを作り、それを目に見える形にするためであれば、Cocoaで十分だし、そのほうが楽だ。いや、年を取ると馬力がなくなってのう。。若い頃馬力があったというわけじゃないんだけど。。ごほっごほっ。
2012-03-22 06:38
仲良くしていただいているある准教授の方が、こういう感想を述べていた。
「いくつか面白いものがあったが、他は何年も同じようなことをしているような気がする」
思えば数年前のインタラクションは、WISSと同じように閉塞感が漂っていた。その頃は「ほとんど全て」が「何年も同じようなことをしている」状態だったのだ。ちょっと変わった入出力デバイスを作ってみました、こんなもの作ってみました、の連続。当時の私は「まあいろいろな人に会えるから、行く意味もあるか」と思っていた。
それに比べれば去年と今年のそれは面白かった。今年は特に最初の一般講演のインパクトがすごかった。全体を均してみると「まあそうですね」という感もあるのだが、やはり最初の印象は大事ですな。
その一方、インタラクティブ発表は(私が3日目を見ていない、ということを差し引いても)改善の余地があるとおもう。後世に残すことを主眼に今年は論文を6ページとし、査読を行った。その結果はどうだったか。面白いものと「なんでこんなのがでてくる」の比率は例年と変わらなかったように思う。また発表された採択率を正確には覚えていないが、140件以上応募があり、落ちたのは一桁だったように記憶している。小耳に挟んだところでは、
「ページ数が足りていない」
などの形式的な理由で落とされたものもあるときく。つまりインタラクティブ発表の査読は今回機能しなかった。単なる形式チェックに堕していたのではなかろうか。また発表の内容が伴わないものを6P述べたところで誰が参照するというのだろう。
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などと文句をつける点はあるものの、何よりも
「問題点を認識し、それを改善すべく大胆に取り組む」
姿勢は何よりも賞賛されるべきだ。全ての取り組みが成功するわけはない。だから「新しい取り組み」というのだ。来年は何か出したいと思う、、とか去年も考えたな。それでもって6Pと査読に怯えて逃げ出したのは私です。来年こそは、、と書きかけて考えて見れば今年ももう1/4終わっちゃうんだよねえ。。
2012-03-21 06:43
というわけで二日目の感想。
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展開ヘルプ
いや、これは面白かった。
やっていることは単純と言えば単純、増井さんらしいといえば増井さんらしい。まず
「ヘルプって使ってます?」
という問から始まる。使ってませんよね。(ここで既に現実を見るところからスタートしているわけだ)
というわけで増井さんの展開ヘルプは、ユーザが入力した内容に、少しでもマッチするルールをわらわらと表示する。このルールは正規表現を用いて手動で設定している。
すると減点主義の査読者は
「ルールベースでは知識の獲得が云々」
とか言ったりするわけだ。しかし増井さんはそうしたツッコミにも当然答えを用意している。プレゼンから引用すれば
「できることを全部リストアップなんてできるんか?と言われるかもしれませんが、それをがんばるんです」
そもそも人間がやりたいことというのはそう多く無いのではないか。これは発表にはなかったことだが、最近あちこちで試みられている
Webをベースにした知識の投稿、共有
を用いれば確かにこうした問題の解決になるかもしれん。でもって自然言語処理は全然つかわないのだそうな。(主な理由は「よくわかんない」からだそうだが)
とここまでで作ったものの説明は終わりなのだが、まだ話は半分であった。以下発表資料から引用する
「大きな話しを聞きたい」
「新しい大きな方向性」が聞きたいんです
「すごいエディタつくりますた」→こういう発表発表されないですよね。
最近論文の題名が長い。増井の論文は短い。
小規模な評価は信用できない。大規模な評価ができたころには意義が終わっている。ページランクの効果が実証されたころには、Googleは天下をとっている。
近年査読を通る論文は「評価つき」ばかりになっているが、それと反比例するように計算機科学の人気は下がっている。ちなみに増井氏の体重は増加しつつある。
評価なし論文はありうるか→Yes 役にたたないシステムよりマシ
ダメな論文査読者が判断するのは無理。ほっておけば消える。
私は直後にこうTweetした。
いや、すばらしい。 というかこの論文を通してくれた事にも感謝。
via: インタラクション2012一般講演発表3まとめ #i2012 - Togetter
これに対して、プログラム委員長の宮下氏からこう返信が来た。
PC委員会として正しい判断ができたと思っています. RT @grgr56: いや、すばらしい。 というかこの論文を通してくれた事にも感謝。 #i2012
via: インタラクション2012一般講演発表3まとめ #i2012 - Togetter
この後何件が質問があった。最初の二人は「前半について」だったが、WISS2012のプログラム委員長五十嵐さんがさっそく後半について質問をする。
「ものすごくがんばって作って評価した論文と、学生が適当に作ったような論文と本当に同じに扱うんですか?」
もっともな疑問である。それに対してたしか増井氏はこう答えたと思う。
「それでいいんです。おもしろいものにはブックマークがつくからいんです」
この会話はここで打ち切りとなったが、二人の意見はそれぞれ耳を傾ける価値がある。
そのあと私はこう書いた。
増井さんと五十嵐さんの意見の斜め上に、クリエイティブな解決案を考えられんかなあ。
たとえば学会に投稿した論文は全部webで公開して、プログラム委員、メンター(謎)、参加者がそれぞれ発表論文を選ぶとかね。
あるいは全部ポスターにして、投票で登壇発表を決めるとか。
話は少しそれる。「フェルマーの最終定理」とか読むと、数学の世界では既にそのようになりつつあるようだ。というか査読自体に異様な時間と人数が必要なので、査読で発表論文を決めるというプロセス自体が成り立たないからなのだけど。
実は計算機科学の世界も既にそうなっているのではないか、というのが増井氏の主張だと思う。
というように議論といろいろな意見を表面化させる興味深い発表であった。こういうのが発表されるから、こうした場の存在価値があるのではなかろうか。
ちなみにこの次のセッションで
「ものすごくがんばっているのはわかるけど、結局何が面白いのかわからない。何に使えるのか作者も考えていない」
ものが発表されたので、増井氏の論点は実に明確になったのではないかな。私はこう書いた。
個人的に、使い道がわからない「こんな入出力つくりました」研究には興味が持てない
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ネットワーク将棋支援システム「SAKURA」の感想戦インタフェース
これに対しては以下のような要望を出しておいた。
将棋の番組を見ていると、指している途中でも「ここでこう打つとどうなりますかね」と実際の指し手とは異なる局面が展開することがある。そしていつのまにか元に戻っている。将棋に詳しい人ならあれわかるのだろうけど、素人は混乱する。
でもってそうした分岐を示すのなら、大解像度のディスプレイを使って、展開する局面を全部表示することはできないだろうか。すると
「あそこでこう指していたら、こうなっていたわけです」
という結果図と現在の状況を並べて比較することもできるとおもうのだけど。
ちなみに今のシステムは個々のPCで感想戦をすることを目指しているので大解像度の画面は使えない、とのこと。
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身体動作を用いて商品サイズを絞込む検索インタフェースの設計と評価
近年急速に増えた「とにかくKinect使いました」研究、といいきってしまおう。
Kinectの前で、人間が「これくらい」と大きさをジェスチャで指示する。するとシステムがその大きさを読み取って
「じゃあ40インチのテレビ」
というのを表示してくれるのだそうな。
朝のニュースには向いていると思うが、実用性は理解しがたい。そもそも自分がほしいTVの大きさを体で図示できる人間がいるだろうか?しかもそれは正確だろうか?そんなんだったら、巻尺もって測ったほうがずっといいのではないか?
そう聞いたところ
「想定する使い方は、リビングにこれがおいてあって、そのばでユーザが必要な大きさを測り、システムに入力するというものです」
という答だった。それは理解できるが、ユーザに盆踊りをさせるより巻尺使うべきだよなあと思うのだが。
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身体動作の重畳表示による動画上での一体感共有
WISS2011でこのシステムがデモされていた。なんだか画面に棒人間がひょろひょろ表示されている。そして懇親会の会場にシステムが置かれている。
でこれがいったいどうして「一体感共有」につながるのか?今回説明を聞いて作成者の意図だけは理解できた。
人間が踊っている場合、その踊りを棒人間の情報にして遠隔地と共有するというこちらし。画像を直接送る場合と比べて、プライバシーとかまあいろいろあるのだろう。
問題はそれは懇親会会場に置かれても、何が共有できるのだろうか、という点。
ちなみにこのプロジェクトは未踏ソフトにも採択されており、そちらでは
「ユーザがPCの前に置かれたKinectに向い体を動かす。するとニコニコ動画の画面上でアイコンが移動し、それを共有することができる」
システムを作っているのだそうな。ニコ動見ながら、一人のアパートで体を動かす場面は私には想像できない。その上、アイコンが動いて何が面白いのか理解できないし、やっているデモを見ても何のことかわからない。
しかし作成者は違う意見のようだ。理解はできたが、同意はできない研究。熱意だけはわかったけど。
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履歴分類の提示とアノテーションによるリファインディング支援
以前WI2で聞いた研究の発展版。ブラウザ上でのユーザの閲覧履歴は現在1次元で表示されている。(つまりリストがだらだらでてくる)しかしブラウザ操作を行う際には、いくつかトピックごとに行っているはずだ。例えば研究論文を探した後に、週末見に行く映画の情報を探すとか。
現在は閲覧履歴の情報を真面目につかってグルーピングしているようだが、「トピックの切り替えは検索もしくはブックマークから始まると考えてはどうか」と提案しておいた。実際ポスターに書いてある例ではトピック切り替えはGoogle窓への入力がスタート地点になっていた。
今回発表した人は今年で卒業とのことだが、今後の継続が楽しみな研究である。
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動画共有サイトでの視線共有の試み
WISS2011で見てはいたのだが、内容が理解できなかった研究その2である。デモされていたのはこういうシステム。ニコニコ動画をみているユーザの視線を検知する。複数のユーザからの視線情報を集め、それが重なったところがユーザが面白いと思ったところなのではないか、という前提に基づき一生懸命作っているらしい。
しばらくニコニコ動画の画面をみていたが、これは難しいと感じた。例えば相手が静的なWebページなら、ヒートマップなどを用いてユーザがどこに着目するかを検知することができる(それが面白い記事であるとは全く言えないけど)
しかし動画であれば、視線を動かさなくても動画は勝手に流れてくれる。更に悪いことに、ニコニコ動画だと背景をコメントが流れている。同じ「おもしろいコメント」があったとしても、あるユーザはそれを画面左のほうで着目し、あるユーザは画面右の方で着目するかもしれない。それは異なる位置にある視点だが、同じコメントをポイントしているのだ。そうした解析はどうやるのか。
そう聞いてみたが、あまりその点に関して検討はされていないようだ。そもそもユーザの視点がある位置が「面白いと思っている」位置なのか。ぼんやり見ているのと、食い入るように見るのと差異はあるのか。視線研究の難しさはそこにあると思っているがそうした認識もあまり感じられなかった。
「キーコンポーネントなのだが、とっても難しい」ところを後回しにして、とにかくがんばってしまう研究をみることがままある。このインタラクションでもそうしたものをいくつか見かけた。私が理解できた範囲ではこの発表もそのひとつ。あたかも「超小型軽量の核融合炉」を後回しにして、ガンダムの頭とか手足とか作っているようなものだ。
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喜怒哀楽表現のための植物に特化したアクチュエーション手法
植物さんが、喜怒哀楽を現してもいいではないか、ということで細い釣り糸つけて、喜怒哀楽の感情に合わせて植物さんが動く。
気持ちはわからなくもないのだが、植物が「動かされている感」満載。植物だったら風にそよぐといった動きは自然なのだから、そよがせてはどうかとも思ったのだが。
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着ぐるみ演者の表情表出を支援する顔面入力インタフェース
キグルミの中の人の表情を検知し、それに合わせてキグルミの表情が変わる、というシステム。
これも実に「TV向き」だと思うが「中に入っている人は、顔が疲れないんですか」と聞いたら「とっても疲れます」と返答が。私は正直な人が好きです。
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場所や人数の制限を持たない体感型電子玩具 チャンバライザーの提案
子供のチャンバラを安全に行わせようという試み。ビームのないビームサーベルのようなものをもち、子どもが遊ぶ。真ん中からは何かの光線がでて、柄にあるセンサーに当たると反応する。
狙いはとってもわかるのだが、やっぱり「振り回す感」がないとちゃんばらとしては成立しないだろう。しかし子供に遊ばせたところ、別の遊びをしていたとのことなので、チャンバラではない全く別の遊び道具として成立するのかもしれない。
2012-03-19 07:44
というわけで今年も行きました。去年とおなじで午後一番にはインタラクティブセッションがある。それが終わり一般講演が始まるのを待っているといやな予感がする。そういえば去年も同じ時間帯に同じ場所に座っていた。幸いにも今年は何も起こらなかった。
去年の感想をものすごく短く言えば
・面白くなかった一般講演
・カオスで面白かったインタラクティブセッション
今年も同じ位短く言うと
・面白かった一般講演。特に最初のセッション。
・インタラクティブセッションは件数が減った。その分質が上がったかと言えばそういう感じしないし。。結果として(量)×(質)で質が変わらず、量が減った分全般的な面白さが減った。。ただし所用により「最も良い発表が集まった」3日目を観ていないので、そのため物足りないと思ったのかもしれん。
とかなんとか言っているが、去年と比較しても新しい試みをしていることは私のようなチンピラ参加者にも伝わってきた。来年は私も何か出したいものだが。
というわけで、一般講演、インタラクティブ発表含めて感想をだらだらと。
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Songle: ユーザが誤り訂正により貢献可能な能動的音楽鑑賞サービス
オープニングに論文賞の講演を持ってくる、というのは良いアイディアだと思う。特に去年の一件目が「出落ち」のような議論を呼ぶ発表だっただけに。
産総研後藤さんの発表。誰かと話していて気がついたのだが、後藤さんの研究発表を聞くのは久しぶりのような気がする。TVとか他の場面ではよくお目にかかっているのだが。
私がくだくだしく書くより、ある方のTweetを引用しよう。
後藤さんの提示したVisionに比較すると、まるでなってないビジョンは世の中に氾濫している。そういうのを提唱していい気になっている人間は是非後藤さんの講演を聴くべきだと思う。
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虚偽情報フィードバックを用いた生体情報の制御システム
拡張満腹感:拡張現実感を利用した食品の見た目の操作による満腹感のコントロール
この2件は凄かった。(とまとめてしまうのも失礼と思うが)両方とも「人間へのフィードバックを操作することにより、人間の生態反応を変化させる」研究である。
体温計が「平熱っすよ」と値を示し続けたら人間の体温はどう反応するのか。手に持ったクッキーを実物より大きく見せたら、人間が食べる量を抑制することが可能なのか。
結果が大変興味深いだけでなく、色々な議論を巻き起こす研究である。こうした議論こそがインタラクションというイベントの有意義な点ではなかろうか。
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握力・体温・感触を伝える遠隔握手用ロボットハンド
箱からロボットの手がにょきっと出ている。でもって私がそれを握ると、少し遅れて手を握ってくれる。
確かに手はあったかいし、手を握るその力は自然である。しかし問題はこちらが握ってから握り返してくれるまでのタイムラグだ。これが人間を相手にしたときとは異なり不自然に長い。
考えてみれば、人間が握手をする際にはお互い「予測」をして手を動かし始めるのだと思う。それを取り入れるのは難しかろうが、自然な反応を目指すとすればそれを避けては通れないと思う。
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senseObject: 日常生活の中のものの利用を契機としたスマートフォンの自動操作
日常生活では通信をわざわざ行うのは大変だから、自動的に情報とれるようにしてあれこれしましょう、という御話。例えば自転車の車輪が動き始めたら位置と時間をサーバーに送るようにするとか。
こういう研究は「やればできる」ことは解っているので、「これは面白い」というアプリケーションを考えるか、「こんなすごい方法があったか」というセンサーを考えるとかなんらか特長が欲しいところだ。私の考えでは「アプリ勝負」かとも思うが。
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鉄道移動を支援するためのインタラクティブデザインツールの開発
これは期待が高まる研究。現在「乗り換え検索」の類いのサービスは世の中にたくさんある。問題はそれが「検索の結果示された一つの解」だけを示していることだ。ところが
「一本遅らせたらどうなるのか」
といった代替手段の検討が全然行えないことである。私のような珍スポットマニアには切実な問題だが
「一日3本しか無い路線」
ということを知らないで乗り換え検索を行うと「あれ、出発時間を1時間変えたのに到着時間が変わらないぞ」と頭を捻ったりすることになる。
こうした問題を解決するために、一次元のリストで結果を兵頭するのではなく時刻表を検討する際に使う「ダイア図」で結果を表示してやろうという試み。これがあれば、ユーザはもっといろいろな代替手段を検討できると思う。現地到着を2分遅らせれば、出発は1時間後でもいい、なんてことはよくあるが、そうした情報も読み取れるかもしれない。
まだ実装は始まったばかりのようだが是非実用化してほしい研究。
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絵本作成支援システム「ミラクリ」
ブラウザ上で容易に絵本を作ることができるシステム。関連研究(というか製品)としては、「ピッケのつくるえほん」がある。(私も愛用してます)
「ミラクリ」は誰もが好きなキャラクターを登録して絵を作ることができる。逆にピッケは自由度をうまく制限している。
この「自由度」というやつは曲者で、自由度が高ければよい、という単純な話ではない。制限された自由度の中でも人間は十分に想像力を発揮しうるのだ。このように「自由度」に対して、異なるアプローチをとっている二つの試みがどのような結果になるのか興味深い。
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Kuroko:話者シルエットを活用するプレゼンツール
プレゼンに話している人間のシルエットを取り込もう、というシステム。いや、これに関して妙に熱く演説してしまった。反省しております。
というのは、私も同じ問題意識にたった物を作り始めているからであり、、12月にお披露目を目指しているが、こればかりは幸運に恵まれる必要がある。約束できるのは努力までだ。
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StepNavi: 歩行速度ナビゲーションシステムの開発
スマートフォンのナビが、予定時間と、現在の移動速度を検知して「もっと早くいけ」とか「ゆっくりでもいいよ」とか提示してくれるシステム。
問題は「歩いている人間がそうちょこちょこ画面を見てくれるか」ということ。視覚ではなく、音楽を用いる試みとして、寺田さんのウェアラブル環境のためのルールベースBGMプレーヤについてがある。というか安村先生、この研究知っているはずなのだが。
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なぞり動作で文章を動的に表示するソフトウェア「Yu bi Yomu」
文章というのは読む方向が決まっている。しかしそれをインタラクティブにすることはできないか?ユーザが自分が考える順番に提示させてもいいのではないか?
デモしていたのはiPadアプリ。ユーザが画面をなぞるとその下にある文字が一定時間表示され、消える。これを使うとユーザが好きな順番で、文章を読むことができる。
一番面白かったのが、このインタフェース用にかかれた詩。いろんな方向から画面をなぞるといろんな読み方ができる。文章というものを再定義するような新しい可能性を感じさせてくれる素晴らしい試み。
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家計簿を「思考の道具」とするインタラクションデザイン
これは非常に興味深い試み。通常家計簿というのは、表形式で入力され、そのままの形で閲覧する。
しかし項目を2次元に配置したらどうなるか?各項目の金額の大きさを長方形の面積に対応させる。すると、何が膨大な支出になっているか一目瞭然。
さらに面白いのは、いろいろなユーザに使ってもらうと、並べ方が人によって全く異なる、という点だ。つまり本来ユーザは支出をいろいろな軸で認識しているのだが、既存の家計簿インタフェースはそれを全部表に押し込めてしまっている。
この研究を見るとそうした問題点が浮き彫りになる。
例えば、「標準的」な家計簿からどこが逸脱しているか、それを示すのに最も適切な「ビュー」を用いてシステムが指摘するようなことができないだろうか、とかいろいろ発展も考えられる。是非今後深化させていってほしい研究。
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タブレット型デバイスによる協調購買インターフェースの提案
遠隔地にいるユーザ同士が、iPadを使ってあれこれ楽天の商品を閲覧して、、という試み。
そもそも複数の人でショッピングをする時の楽しみとはなんだろう?ある美大の卒業展示で「ショッピングの楽しみは、友達との会話」という発言を聞いて私は驚愕した。
しかしこのインタフェースにはそうした直接的なコミュニケーションの要素は全く入っていない。デモをみていても「ああ、つながるのね」ということしかわからない、何を目指しているのかわからないシステムだった。
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2つの学会発表録画を同時視聴するためのシステム
最近の学会では、話しを聞いている参加者が、チャットをすることが広く行われている。そのログを用いて、「盛り上がっているところ」を検知する。そして二つの学会の動画を同時に流した場合でも、その「盛り上がっている」ところを見逃さないように時間をずらしたり、あれこれする、というものだ。
そもそも二つの学会を同時に見たいなどとは、、とは問わないことにする。一番の問題は「チャットのログから学会の盛り上がった場所を検知できる」という仮定だ。
なぜこれが問題か?例えばこうだ。
・そもそも学会発表が盛り上がったときにチャットの発言が多くなるものなのか?画面を食い入るように見つめていては、チャットができない。
・逆に、「どうしようもない退屈な発表」のときはチャットの好チャンス。皆で下を向いてチャットに熱中する。その際前の発表について語られることもあれば、全く関係ない話題で盛り上がることもある。(たいてい「失礼だよ」と誰かに怒られる)
・ちなみに発表する側からみると、この「発表中のチャット」というのはあまり愉快なものではない。こちらは一生懸命アイコンタクトを取ろうとしているのに、みんな下を向いてしまうからだ。
というわけでそもそも「学会のもりあがりとチャット量」の間には相関があるのか、時間遅れがあるのか、はてまた逆相関があるのかが分からない。そこを「チャットが多いときは盛り上がってます」と断言されても素直に「そうですか」と納得はできない。
そこで提案しておいたのは「被験者にボタンを持たせておき、学会発表のビデオを見せる。盛り上がっていると思ったところでボタンを押してもらう。そうして"盛り上がり"とチャット量のデータの関係をみては」
という検証方法だった。
この「被験者にボタンを持たせる」というのは、米国の大統領選のディベートで行われているし、コメディ番組の事前評価でも行われている。ユーザは手のボタンを押せばいいので、下を向いたりする(つまり画面から目をそらす)必要がない。
そうして前提条件を検証しておけば、この研究にも意義がでてくると思うのだが。
ちなみにこの「重要な前提を全く検証せずにとにかくがんばっている」研究は二日目にもいくつか出くわすことになる。
2012-03-14 07:10
スパムメール送信システム、「はてなボトル」に切れて以来、はてな依存をだんだん薄めていたのだが、今回の件で「はてなにアカウントを持っていること自体危険かもしれぬ」と思うようになった。
2011年9月に、新しい収入源の開発と、ウェブサイトを訪れた際に最適な広告が表示されることでより価値の高い情報が手に入ることを目的に、はてなブックマークボタンで収集した行動情報の第三者への販売を開始しました。
ブックマークボタン本来の目的は、「ブックマーク数が分かる」ことと、「簡単にブックマークできる」ことです。このボタンの表示から得た訪問者の行動情報を第三者に提供することは、ボタン本来の目的から考えて間違った情報の使い方でした。
当初はこうした行動情報の提供を行わない仕組みで提供開始したボタンを、途中から仕様を変更した点や、仕様変更の際に、事前に十分な告知を行わなかった点も間違っていました。ウェブサイトの閲覧者が、はてなブックマークボタンが設置されたページを訪問した際に、行動情報を取得されないよう設定が簡単にできるオプトアウト機能を準備しなかった点も誤りでした。
via: はてなブックマークボタンから収集した行動情報の第三者提供をやめます - はてなの日記 - 機能変更、お知らせなど
言葉は難しいが要するに
「黙ってあなたの行動情報を外部に売るようにしてました。てへっ」
というわけだ。そういえば、mixi もこれに類する仕様変更に切れて退会したな。しかし今から考えれば、mixiは
「事前に仕様変更を告知する」
という点においてはてなよりはるかに良心的であった。
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いや、それだけならば「よくある失敗」として苦笑いする程度で済んだかもしれない。しかしはてな社長の「反省の弁」を聴こう。
ブログやTwitter、はてなブックマークのコメント欄などに書き込まれた皆さまのご意見を読みながら、この数日間、スタッフたちと議論を重ねました。その結果、根本的に、はてなブックマークボタンを使って、行動情報を第三者に提供する事自体が誤りである、という結論に達しました。
via: はてなブックマークボタンから収集した行動情報の第三者提供をやめます - はてなの日記 - 機能変更、お知らせなど
この「謝罪文」にすっぱり抜けているのは、
「なぜそのような誤った判断をすることになったのか。どこに問題があるのか。それを改善するために、何をするのか」
である。つまりこの文章を読む限り
「同じようなことをまたやりますよ」
と言っているようなものだ。
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はてなの近藤社長は大変チャーミングな方だと聴く。ほんの少しだけ言葉を交わしたことがあるのだが、その会話からもそうした印象を受けた。それは事実かもしれないが、上場を目指すのであれば「会社」としてしっかりしてもらわなくては困る。
今回の「謝罪文」を読んで、はてなから退会した自分の判断が正しかったと確信するにいたった。
もっと早くそうするべきだったのかもしれないが、「はてなアンテナ」を最後まで使っていたのでね。
未だにRSSで更新情報を取得できないサイトはいくつか存在する。そういったサイトの更新情報を取得するのに使っていたが、他のサービス(例えば、私が敬愛する珍寺大道場は小嶋氏のTwitterをフォローしていれば更新情報は所得できる。
教科書的なものの言い方だが、気に入らなければすぐに他のサービスに乗り換えられるのが、webサービスのいいところ(提供する側にとっては悪夢だが)だ。あとは「はてなブックマーク」の人気エントリーだけ代替手段が見つかれば完全に脱はてなができるのだが。
2012-03-13 06:38
というわけで、ほとんどの人は名前を聞いたことがないであろうCMMだ(最近はCMMIというらしい)
インドの企業にソフト開発を外注しようとしたとき、久しぶりにCMMという言葉を聞いた。
思うにこうした「ソフトウェア開発のお墨付き」というのはお役所的大企業、もしくはそれを相手に商売をしようという会社にとって意味があるのではないだろうか。今Google先生にお伺いをたててみると、何社かが誇らしげに
「CMMI レベル●取得」
とかリリースを出しているようだ。それも数年前の話であり、2011年にもなって誇らしげにリリースをだしているのは、NTTデータくらいのものだが。やはるこうした「偉業」が意味を持つ世界もある、ということだな。
もちろんスピードの早い業界で生きている人にとってCMMなど何の意味もない。
CMMIなんかで飯が食えるのはアプレイザーだけでしょうしね。
ま、個人的にはくだらんと思います。
GooleやApple、FacebookってCMMIやってるの?
ま、それがすべてを物語ってる気もしますね。。。
via: CMMIって意味あんの? まじで? たぶん、大多数が勘違いしてると思 - Mic_Kの思うところ
別のコメントを引用する。
CMMを正当化する最も強固な理由は、それが品質と生産性を向上させ、同時にリスクを低減するということである。
(中略)
しかし、我々に衝撃を与えるのは、それよりずっと起こりそうな別の解釈があることだ。それは、組織が「成熟」するにつれて、次第にリスクを避けるようになる、ということだ。CMMのレベルが上がったことを証拠で示せ、との厳しい監視下にいる組織に、真の挑戦は期待できそうもない。
ピープルウェア p245
この本の日本語訳を行った人たちは、どうやらCMMにからんでいるらしく、訳者コメントのところでこの意見を「修正」しようとしているのが笑える。
しかしここで注意しなければならないのは、世の中には
「決して新しいことはやらない」
ことで仕事を貰っている会社がいくつもある、ということだ。挑戦というのはリスクがつきもの。リスクを疫病のようにおそれ、それを避けるためならなんでもする、という組織は多い。実際我々の生活に「リスクを伴う革新」がそうたくさん存在してもらっては困るのだ。日常はあくまでも平穏無事な日常。そこに少しの挑戦があるくらいで丁度いい。
2012-03-09 06:48
新しいipadが発表された。基本的にはiPad2の線をぐいっと伸ばした製品である。Retina Displayの威力ばかりは見てみないと分からないが、iPhone4を初めて使ったときの驚きは今でも憶えている。
もちろんこういう楽しい意見も存在する。
結論:652gという新しいiPadの重さは、深刻な悩みだ。カジュアルに使ったり、背中に背負ったり、タブレットケースに入れたりする分には心配ない。多少重くなったところで、大きな問題ではない。しかし、片手で使うことを考えれば、新しいiPadの重さは好ましくないし、競争力もない。
via: 新型iPad 対 Androidタブレット――タブレット競争を勝ち抜くのは? (Computerworld) - Yahoo!ニュース
こうなると次のiPadがどうするのかがとても興味深い。今や薄さは極限に近い。軽さについては改良の余地があるのだろう。
iPad(2013)はどうしてくるのか?それは今年発売のiPhone5(あるいは単に"iPhone"になるかもしれない)にも言えることだ。興味は尽きない。あるいは「もっと線を伸ばす」製品になるのかもしれないし、何か別の線を引いてくるのかもしれない。
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同じ日にこんなインタビューが掲載される。
Xperia Sはフラッグシップ機であり、ポートフォリオの頂点に立つモデルとして非常に高いスペックを実現しています。ディスプレイはスマートフォンの中でも高解像度の720×1280ピクセル、サイズも4.3インチと大きく、ソニーのモバイルブラビアエンジンやExmor R for mobile対応の12メガピクセルカメラを搭載し、特に画質と映像はフラッグシップとして恥ずかしくない仕上がりになりました
via: Mobile World Congress 2012:「スマートフォンを越えた体験をお届けする」――新生Sony Mobileが目指すもの (1/2) - ITmedia +D モバイル
ふーん、としか言いようがない。でもっていつものソニーらしく。
もう1つが、コンテンツ、サービス、端末を連携させて、他社にない体験をお届けできるのがSony Mobileだと思っています。ソニーグループの資産を活用することで、ゲーム、音楽、映画、ブックなどのコンテンツをいかにスマートフォン上で楽しんでもらえるかを考えていきます。
via: Mobile World Congress 2012:「スマートフォンを越えた体験をお届けする」――新生Sony Mobileが目指すもの (2/2) - ITmedia +D モバイル
お楽しみは「これから考える」のだそうだ。しかしソニーの人間ってどうしてこうカタカナ語を並べるかね。
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でもってSiri日本語バージョンである。予想したこととはいいながら、2chにたくさんスレッドが立ち「こんなことしゃべらせた」というコンテンツがネット上に溢れている。
84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/03/08(木) 23:01:48.37 ID:hv68Es0v0
会話っつっても似たような問いかけならデータベースにある数パターンが返ってくるだけだからな~
92 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2012/03/08(木) 23:03:53.86 ID:QrPbpSck0
>>84
ちがう!!
尻たんは生きてる!!
via: 「結婚して」→iPhone「まだお互いのこと殆ど知らないですよ」...日本語版「Siri」さん可愛すぎわろうたwww
広告代理店にいくら金を払ってもこの「宣伝効果」にはかなわないだろう。
ここらへんはその製品を作った人たちを「何が」動かしているかにもよるのだろう。昨日iPadプレスイベントの様子を録画で観た。一つだけ言えることはあそこでプレゼンをしていた人たちが
「これは素晴らしい製品だ。是非皆に使ってほしい」
と心から信じていることだ。Steve Jobsほどのスムーズさはない。しかし熱意は変わることがない。まだ数年は大丈夫そうだ。
2012-03-08 07:00
これまたうろ覚えで書くのだが、コンサルタントの秘密にこんな一節があったように思う。
「言葉が意味を成さないときは、音楽を聞いてみるの」
他人からわけがわからない非難を受けることはままある。そういう時に私のような人間はついロジックで対応しようとする。これはとても間違っている。B-29に竹槍を振りかざすくらい間違っている。
脳の働きについてわかってきた(らしい)事を知るたび、「意識」やら「ロジック」というものが後付なのではないかと考えることが多い。先日こんな記事を見つけた。
あらゆる感情はデータの要約、つまりわれわれが意識の上ではアクセスできないすべての情報処理を手早くまとめたようなものだ(ファム教授はこれを、感情は無意識の領域を覗き込むための「専用窓」のようなものだと表現している)。複雑な事象について予測を立てるときには、この余分な情報がしばしば重要になる。これが情報に基づく推測と、単なる偶然との違いだ。
via: 感情が「理性より賢い」とき « WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム
無意識したで行われている大量のデータ処理、それを無茶苦茶に要約したものが「感情」というわけだ。
「筋は通っている話なのに、この不快感はなんなのだ」
と思うことがある。今思い出せるのは採用面接でそう感じたことだ(複数回)もちろんそういうのは身を結ばない。しかしおろかにもこの「不快感」に注意を払わず、そこに(不完全な)ロジックで考え就職してしまったことがある。社名をNTTソフトウェアという。そこでどんな悲惨な目にあったかは、いつか書いたな。
この「感情」は言葉ではなく「音楽」として表れる。だから、何かわけのわからないことが起こった時には、ロジックではなく音楽に耳を澄まさなければならない。
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そう考えると「音楽」というものはつくづく面白いものだと思う。普通に考えれば生存やら生活に必要不可欠はものではない。ビタミンでも炭水化物でもないのだ。
それなのに「産業」としてちゃんと成り立っている。その「音楽」を聞くために大枚はたく人がたくさんいる。(もちろん音楽に従事している人にとっては、"大枚はたいてくれないぞ"ということなのかもしれないが)
歌詞のない音楽-それを聞いたときに何を受け取るかは受け取り手次第だ。しかしそこには大きな幅がある。それ故そうした音楽は飽きること無く、長い間「楽しめる」パートナーとなりうるのではなかろうか。
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先日フェルメールの絵を観てきた。同じ会場に展示されていた同時代の他の絵と比べるとフェルメール(のいくつかの作品)の特異性は明らかだ。何も語っていないのだが、見ている人間に何かを感じさせずにいられない。日常の一瞬を切り取りそのまま提示する。
これはどこか一部のクラシック音楽(バロックや古典派)と通じるものがあるやもしれん。それらの音楽は何も語っていないのだが、聞いているものに何かを感じさせる。
こうした境地は、瞑想というか坐禅と相通じるものがあるかもしれん、と話がとめどもなく発散したところで唐突に今日は終わるのである。
2012-03-07 07:13
先日こんな記事を読んだ。
私事で恐縮だが先日僕は会社をクビになった。
申し込みの書類を受け付けたりする事務として12月1日から働き始めた。ひとまず3ヶ月のトライアル雇用ということで入社したが、3ヶ月待たずしてクビになったのだ。ウケる。
via: @nifty:デイリーポータルZ:僕がクビになった日
思い返せば、大学に入学するまでは連戦連勝だったなあ。。そこからは連敗が続いたわけだが。
この記事にはこんなブックマークコメントがついている。
一度ガチで首を宣告されてるので、読んでて胸が苦しくなった。広く伝えたいのは、会社を首になるから全てが終わるという事はなく、人生は続くということと、会社を首になるのは恥ずかしいことではないと言うこと。
via: はてなブックマーク - @nifty:デイリーポータルZ:僕がクビになった日
俺も「クビにすんならしろやwww」程度の厚顔無恥態度でいたらマジでクビになった。宣告されたときは割と大丈夫だったが、帰りの電車で一人で冷静になったら、想像以上にショックを受けてることに気付いて泣いた。
via: はてなブックマーク - @nifty:デイリーポータルZ:僕がクビになった日
私も「クビ」宣告を受けたことがあると思っている(どうも相手はそのつもりではなかったようだが)↑のブックマークコメントを読んでいると昔の記憶がよみがえる。相手がどんな人間であったとしても、働いていたのがどんな会社であってもこれはこたえる。
幸いにして、それから職を探し、今でもサラリーマンを続けているわけだが、自分があの経験から何かを学んだのかどうかはよくわからない。
ただし今はこのことは本当ではないかと思っている。
これまでの研究で「ほとんどの感情の変化は長続きしない」ということがわかったからです。宝くじにあたる幸運とか、下半身がマヒするなどの悲運に出会ったとしても、激しい感情の高まりはやがて蒸発していきます。感情は驚くべき速さでその事件が起こる以前の状態に戻って行くのです。
3:1 の法則 p138
その感情が長々と続くとすれば、それは自分がそうしているのだ。
心理学者はこのような思考形態を「反芻」と呼びます。ネガティブ思考とネガティブ感情が頭の中に繰り返し現れるのです。状況をあらゆる方向から見つめて、自分では「しっかり考えなくては」と思っていますが、実際には思考はどこにも向かいません。きりのない問いかけの轍にはまり込んで、打ちのめされて気力を失います。考えても、答えがみつかるどころか、自信がなくなっていきます。
このような思考はネガティビティの炎をかきたてます。「反芻」するときは、すべてをネガティビティの歪んだレンズを通してみるのです。ネガティブのやり方はアンフェアです。まっすぐに考えることも、広い視野でものをみることもさせません。
「人はネガティブ感情を持つと、わざわざ選んでネガティブ感情を呼び寄せる」ということが、研究の結果、明らかになっています。
3:1の法則 p233
2012-03-06 07:08
DEWS と呼ばれていることから存在は知っていたのだが、参加するのは初めて。平たくいえば「データベース学会の全国大会」なのだな。というわけで、査読はなく誰でも発表できます。結果として内容は玉石混淆。
データベース学会というから、
「データベースの最適トランザクションの理論的考察」
みたいなものばかりかと思えば、そうではなくWebサービスの話とかが多かった。
しかし
やはり根は「データベース学会」なのだろうか。そのサービスは何がうれしいのだろうか、という問題よりも
「こんな難しいアルゴリズム使って、こんな有意差がでました」
的な発表が多かったように思う。もちろんそうした領域に特化した研究もいいと思うのだが、そこまで割り切っているようにも見えない。
人間を相手としたインタラクションでは、システムがいかにアルゴリズムをひねったところで、情報の精度には限界がある。それ以上なんとかしようと思えば
「精度向上を図ります」
という決まり文句ではなく、インタフェースでなんとかしなければならない。しかしそうした概念はあまりないようだった。
というわけで、二つだけ「これは」と思った発表について書いておく。(あと細かいところをごちゃごちゃと)
好き嫌いラベル付き食材分量を考慮したレシピスコア算出方式: 中川 明莉沙, 高畑 麻理, 中島 伸介 (京都産大), 上田 真由美 (京大)
私は「レシピ推薦に関する研究を見るとかなりの高確率でわめきだす」人間である。理由は単純。うちの奥様の「レシピ決定」プロセスと、それらの研究が前提としているプロセスがあまりにもかけ離れているからだ。
冷蔵庫の残り物をどうしよう、とかたまたま特価になっていた肉を使ったものとか、とにかくレシピの決定プロセスというのは偶発的であり、謎である。
そうした現実を無視して「栄養バランスを考えたレシピ推薦」とかものすごいデータ入力料を前提に述べられても「はあ」としか思えない。
しかしこの研究は大変いいと思った。その人が好きな食材、嫌いな食材を入力させる。それで「嫌いな食材がはいったレシピは推薦しない」だったら、また私はわめきだすところだが、そうではない。
「嫌いな食材がはいっていても、少しだったら気にしない」
推薦システムなのだそうな。これのどこが気に入ったか。人間の嗜好の幅を広げられるのではないかと思うからだ。「嫌いなものを推薦しない」システムでは人間は蛸壺にはまっていくばかりだ。嫌いと思っていたが、おいしいじゃない。そういう発見を促すようなもの。情報推薦システムの根っこはそうであってほしいと思っているのだが。
2段階GrabCutを用いた注目物体の視認性を向上させたサムネイル生成:新井 啓介, 武井 宏将 (早大), 山名 早人 (早大/NII)
これは実に「目的から、手段から評価まで」きっちりそろった発表だった。スマートフォン上でサムネイルを見るとき、そのサイズは限られる。そのため、
「中心となる物体を自動で切り出し、それを拡大して背景の上にのせる」
という試み。よくみると不自然なのだが、サムネイルとして一覧するのであれば、実に効果的だ。評価実験の結果でも、自分が興味をもつものに辿りつくまでのクリック数と時間が半分に減るという結果がでている。
この発表に大変感心したのはdeim2012の発表の多くが
「問題設定、あるいは評価があまりにもおざなり」
といったものが多かったせいかとも思う。まあそんなネガティブな話はどうでもよくて、是非どっかに売って欲しいような実用的な研究だった。
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他に感想をばらばらと
・「意外性のある推薦」という言葉を何回か訊いた。しかし「そもそも意外性とは何か」というところでここ数年停滞しているように思える。
・地域特有の話題発見につながるスマートフォン向け検索サービス: 発見探地図エリアダス:というAndroidアプリはなかなか「実用的」に思えた。しかし名古屋で表示してもらったところ、あまり関係のない単語も表示されていた。会社が公開してるアプリらしく、ものすごく真面目で面白みがない。画面遷移が多すぎるところを改善したほうがいいと思うのだが。
iOS版は、、ときこうと思ったがNTT相手にこの質問は禁句に違いない。実際アプリのログをとってもよい結果がでている、ということだったがダウンロード数は2000なのだそうな。なかなかアプリを公開してもたくさんの人に使ってもらうのは難しい。
・一日目のナイトセッションは「パネルセッション「若手研究者・技術者のリア充」」私は「非リア充」なので「けっ」と思って参加しなかったのだが(そもそも夜眠いし)これは失敗だった。Tweetから引用する。
会場の笑いがだんだん元気なくなってきているような.怖いです... #deim2012
「次にあらふぉーで必要になってくるのは?」 #deim2012
mtsmr 2012/03/03 22:09:41
リアルすぎる・・・リアルすぎるよ・・・ #deim2012
nakamura 2012/03/03 22:10:06
「経済力と忍耐は足して70%であればいい」わわわわ #deim2012
mtsmr 2012/03/03 22:10:39
きっとそうだわ...たしかに、ダンナさん忍耐強そうやし... RT @nakamura: これはリアルなKWI家なのだろうか #deim2012
mayum1n 2012/03/03 22:12:00
さすが旦那さん RT @mayum1n きっとそうだわ...たしかに、ダンナさん忍耐強そうやし... RT @nakamura: これはリアルなKWI家なのだろうか #deim2012
nakamura 2012/03/03 22:12:21
大人ってこわい #deim2012
tekuno47 2012/03/03 22:12:32
絶対に無理だ・・・ #deim2012
nakamura 2012/03/03 22:13:12
結婚ってつらい #deim2012
KiyotakaGoto 2012/03/03 22:14:12
これを観た男子学生の多くが結婚を諦めるのではないだろうかというくらい怖いプレゼンだった #deim2012
「いや、聞きたかったです」と言ったら「聞かないほうがいいと想いますよ」と言われた。それくらいリアルで怖いプレゼンだったらしい。いったい何が話されたのか。
・最終日の神戸大学寺田さんによるTutorial.実世界でセンサーを使って様々なデータを集めアプリケーションを考える試みが大変おもしろかった。確かに音楽を使う分野では数十ミリ秒のディレイがどうしようもなくうっとうしく感じる。それを除去し、なおかつ信頼性のある処理はどうすればよいか。
そうした分野で寺田さんが着実に成果をあげていることがよくわかるプレゼンだった。感動しました。
2012-03-02 06:48
仄聞するところによると、Siriが発表されたおかげで
「なぜ同じのが出せないんだ!さっさと出せ!」
とNTTの中の人は大変だったんだそうな。気の毒に。
でもって親愛なるDocomoの「しゃべってコンシェル」である。何が違うかと言えば
「サービスとユーザーとの導線を確保している点。コンテンツとの連携ができるのが、まったく違う」と説明した。
「日本語に対応している点がSiriと違う。しゃべってコンシェルは日本のユーザー、日本のコンテンツに特化しており、その目的はdメニュー内にある多種多様なコンテンツに話し言葉でアクセスしてもらうこと。
via: 「Siri」とは何が違う?:ドコモの音声エージェント「しゃべってコンシェル」、開発の狙いとは - ITmedia +D モバイル
要するにメニューのショートカットなわけだ。であるからして
dメニューという国内向けサービスへの橋渡しが前提のため、英語などの多言語化は検討していない。方言への対応も、今のところ考えていないという。
via: 「Siri」とは何が違う?:ドコモの音声エージェント「しゃべってコンシェル」、開発の狙いとは - ITmedia +D モバイル
も当然だろう。ただ気の毒なのは、しゃべっているうちに、ロジックの矛盾が明らかになってしまっている点だ。
「こうしたサービスは実際にリリースして多くユーザーに使っていただかないと、精度が上がらない。夏までにはパーソナル対応などの個人適用を行い、またQ&Aに応えるような機能も追加する。今は詳細を明かせないが、ある質問をすると気の利いた答えが返ってくるようになる」
via: 「Siri」とは何が違う?:ドコモの音声エージェント「しゃべってコンシェル」、開発の狙いとは - ITmedia +D モバイル
多くのユーザに使ってもらわないと、というのなら世界展開のSiriのほうがずっと有利じゃないですかねえ。でもってこれもいつものことだがリリース時に「今は詳細を明かせない」なんていっちゃだめだよ。最初のインパクトを出さなくちゃ。
それでもって
引用先の写真を見てほしい。いいかげんこうした
「ひな壇に所属と名前を書いた紙をたらして、皆が行儀良く座る」
発表スタイルはやめたらどうかと思うのだけどね。
2012-03-01 07:18
さあ、最近さぱり映画評をこちらに書かないけど、皆さん忘れてはいけません。「ごんざれふ」は映画評サイトでもあるのですー! (ぱちぱちと自分で手を叩く。周りには誰もいない)
ロス・アンジェルスで最近何かあったようですが気にしない。この「ごんざれふ賞」は一つの項目を複数の作品、もしくは人が受賞できるのが特徴です。だって決められないんだもん。今年からそうしましたー!(ぱちぱち)
ちなみに第2回の結果はこちらを御覧ください。
では行きましょう。
作品賞:マネーボール & ミッション:8ミニッツ
悩んだけどいいものはいい。どうせ個人が勝手に決める賞なんだからもう複数受賞にします。泣くよ。本当に。ミッション:8ミニッツをみて「もう失敗してもいい」と臨んだWISS2011のプレゼンは本当に失敗しましたけど、それでも悔いはないや。
主演男優賞:ブラピ@マネーボール & ジェイク・グレンホール@ミッション:8ミニッツ
これも決められない。どっちもすばらしい。
主演女優賞:ルーニー・マーラ@ドラゴン・タトゥーの女
いや、映画の中のベッドシーンである「おわっ」となったのって初めてですよ。続編希望。なるべく早くね。
助演女優賞:エル・ファニング@スーパー8
最近お姉さんのほう見ないけど、妹を全力で応援だ。いや、この映画の見所って彼女だけなんですけどね。
最優秀まじめにやっているんだけどお馬鹿だけど嫌いじゃないよ作品賞:スカイライン
いや、ほんとラストはとってもお馬鹿なんだけど、嫌いじゃないですよ。自分が父親だからかもしれないけど。続編は、、作らないほうがいいかな。
意外によかったね賞:世界侵略:ロサンゼルス決戦
いや、期待0だったんですけどね。海兵隊のリクルート映画なんですけどね。でも嫌いじゃないですよ。
そして栄えある
見てしまった中で最低映画賞:カーズ2
いやー、これには驚いた。「あの」ピクサーがこんなゴミ映画を作るとは。是非この背後にある話しについて知りたい。あるいはこんな考えがふと頭をよぎる。いつの日か
「あのAppleがこんな製品を出すなんて!」
と驚愕することになるかもしれん。
というわけで明日以降みる作品は次のごんざれふ賞の対象作品。皆さん。今年もがんばっていろいろな映画を作ってくださいね。では来年までさよーならー。
(ぱちぱちぱち、と手をたたきながら男は歩き去る。下を向いたままで)