Facebookに私はこう書いた。
娘とベイマックスを見る。
見ようによっては、米国の大学ビジネスプロパガンダ映画なのだが、実際にそうだから仕方がない。(ちなみにクレジットには東京大学もでてくるよ)
あるいはBig Bang Theoryの成功を参考にした、と言えるかもしれない。しかし果たして日本から表情がなく戦闘しないロボットベイマックスが生まれるのだろうか。オタクを主人公にした場合のステレオタイプから一歩でもはみ出すことができるのだろうか?
あの低迷を極めていたディズニーアニメが、Pixarの買収によってここまで素晴らしくなるか。。(代わりにPixarブランドの映画が低迷を極めているが)CGの異常な進歩は言うに及ばず。
San Fransiscoに日本風要素をちりばめた架空の都市とか、、、見ているうち悔し涙が滲んできたというのは本当のところである。いや、大学関係者でも映画関係者でもない私がなぜ悔しいと思うのが自分でもよくわからないのだが。しかし敗戦直後に皇族の誰かが書いた「悔しいけどB-29は立派です」という言葉が頭をよぎったのも確かだ。エンターテイメントに貴賎などなく、それぞれ楽しめばよい、という一般論を自分に言い聞かせてはみるものの。
引用元:大坪 五郎
世の中には私よりも文章が上手な人がたくさんおり、他の人が書いた感想を読むことは時として楽しい。そしてこの映画に関していえば、私より上手に「なぜ衝撃を受けたか」を書いてくれている人が何人かいる。
ベイマックス観てきた。すごかった。凄すぎてゾッとした。出来が良すぎる。隅々まで違和感がない。ジャパニメーションの優位性だと思ってたものが完全に取り込み終わってる。「PCに配慮なんかしてたら〜」ってのが甘えにしか聞こえなくなる。「クールジャパン」なんて一瞬で踏み潰されるぞこれ。
ストーリーとかキャラクター設定とかのことはたくさん語ってる人がいる通りなんだけど、私は背景の美術の違和感の無さに終始絶句してた。ハリウッドやディズニーの作品で、和洋折衷の町並みが標識看板の一個に至るまで完璧。少なくとも日本の部分はそう見えた。
こんなもんでいいだろ、って嘲る感じが全くなかった、ベイマックス。予算があるといえばそれまでだけど、それを「不快感のなさ」にここまで注ぎ込めるのかと。格が違う。
引用元:ベイマックスの「政治的正しさ」とクールジャパン - Togetterまとめ
【横綱相撲】
ベイマックスって、ほんと横綱相撲なんです。
みんなが好きなものをバーッて並べて、奇をてらう事もなく、
シンプルに、真っ直ぐ組み立てた映画なんですよきっと。
映画のレビューとか見てたら「展開が見えた」とか言ってる人が居ましたけど、そういう問題じゃないんですよ。
展開が見えて当然なんです。だって、横綱相撲なんだもの。
真っ直ぐがっぷり4つに組んで、そのまま寄り切るっていう。
ベイマックスはシンプルに、真正面から「I love you」を言い続けて、観客の心を掴んじゃったっていう。
隠したバラの花束も、ヘリコプターの夜景も、高価なプレゼントがあるわけでもなく、シンプルに真っ直ぐな横綱相撲で寄り切っちゃった。
これってすごくないですか。
こんな相撲取られたら誰も勝てないじゃん。
引用元:ベイマックスが最高すぎて恐怖すら覚えた件 - ヨッピーがブチ切れまくるブログ
それが妙に評判良いんで見に行ったらズッコケました。限りなく100点に近い答案なんです。
しかも、表現として尖った部分が何もない。驚異的な映像が詰め込まれているわけでも、作家の狂気があるわけでもないし、アッと驚くストーリーテリングもない。なのに、頭からお尻までワクワクする映像が続くんです。
「あっ、日本のクリエイティブ終わったな」
そう感じました。だって、スタッフの中には天才って一人もいないと思うんですよ。秀才の集団。それが勉強に勉強を重ねて、頭に汗をかいて、切磋琢磨して物凄いものを作ってしまった。彼らは「チーム主義」でモノ作りをしている。だって、スタッフロールに脚本家が20人もいるんですよ。
引用元:『ベイマックス』を見て日本のクリエイティブは完全に死んだと思った
でもってこういう議論にはおきまりの「反論」がある。
すでに言われているが、いろいろおかしい。昔からディズニーが「チーム主義」で組織的に映画を作っているのは事実だが、それでも2000年代には作る映画作る映画ぜんぜん当たらない冬の時代があった。
それを救ったのはラセターという一人の「天才」だった。現在のディズニー映画には、彼の作家性が色濃く出ている。
引用元:すでに言われているが、いろいろおかしい。昔からディズニーが「チーム主..
この人はおそらく自分が何に反論しているか理解していないのだと思う。ラセターは確かに天才かもしれない。しかしこのベイマックスという映画はその天才を「量産」に乗せたというところに驚異があるのだ。
日本にも宮崎という天才がかつて存在した。彼はシナリオを一切書かず、自分で勝手に物語を作っていくらしい。それゆえ「理解ができない傑作」を生み出すことができたのだが、それ一代で終わってしまう。つまり量産ができないのだ。
Pixarブランドが地に落ちた代償として、Disneyはアナ雪、そしてベイマックスという傑作映画を連続して世に送り出した。そう考えると、この「当事者」の方のコメントにはうなずかされる。
こっちのチームっていうのは競争をくぐり抜けてきて互いの強みも何も分かった上でのチームだから。プロスポーツのチームみたいなもん。脚本家がたくさんクレジットされてたって、何も最初からみんなで会議して決めてくわけじゃない。全体のビジョンを監督と共有しながら、自分に最も貢献できるところをそれぞれが強くしてく感じ。貢献できなければ去るだけだし、必要なら助っ人を金で雇い入れることもある。
作家主義が作品において「負ける」とは思わないんだけれども(こっちの業界人は日本のそういう作品のファン多いよ)、日本の作家主義の最大の弱点は次世代を育てるのがうまくいかないことだと思う。作家の「サポート」だけをどんなに続けても作家に変われるとは限らないからなあ。
引用元:一応、アメリカのそっち系で仕事してるけれど、作家主義に対してこっちが..
つまりベイマックスはB-29なのだ。B-29には技術的に傑出したところや、突飛なところがあるわけではない。しかし先端的な技術を見事に一つの機体としてまとめ、しかも量産する。それで日本は正面から散々にやられた。
私は「悔しいけれど、B-29は立派です」という言葉を思い出したのはそう的外れではなかったのだ、と今にして理解できた。
いや、B-29などという古い例えを持ち出す必要はない。
【iPhoneの衝撃】
これと同じ事が以前に一度あって、それがいわゆる「iPhoneの発売」なんですけど、
みんなで飲んでた時に、家入さんがおもむろに当時発売されたばっかりのiPhoneを取り出して、
「いいだろー」って自慢してたんですけど、それを触らせて貰った時に思ったんですよ。
「あ、これ日本の携帯全滅するわ」って。
引用元:ベイマックスが最高すぎて恐怖すら覚えた件 - ヨッピーがブチ切れまくるブログ
ベイマックスは日本の作品をリスペクトする人たちによって作られたと同様の「いや、日本のだって負けてはいない」はiPhoneがでたときに散々聞かされた。
「いわゆるガラケー(ガラパゴス・ケータイ)として、従来の携帯電話を『海外の携帯電話を無視して独自の進化を遂げてしまったため、国際的な競争力や存在意義を失ってしまったもの』などと揶揄して評する人は多いが、これは全く見当違いだ。iPhoneにせよ、アンドロイドにせよ、iモードをはじめとする『ガラケー』を研究し生まれてきた。」
引用元:iPhoneはガラケーをもとに開発された? - Ameba News [アメーバニュース]
かつて「世界最先端。iPhoneには驚く要素は何もない」といっていた日本の携帯電話メーカーはほぼ絶滅状態にある。本を書いて意見を述べるのは個人の自由だ。「日本はこうやれば太平洋戦争に勝てた」という本が最近でているらしい。父は「あの現実を知らないからなあ」とポツリと述べていたが。