無知のススメ

2016-01-29 07:00

ダライ・ラマはこう言った。

本当の幸せとは、心の平安である。心の平安には、外面的な要素は役に立たない。私たちの基本的 な姿勢、つまり外の世界とどのように関わっていくかを考えることが、心の平安を得る上で一番重 要である。

引用元:本当の幸せを求めて:チベットとコンピュータな日々:So-netブログ

年をとるにつれこの言葉に共感できる。しかしダライラマがこう語るのには理由があり、それはこれ以外の「幸福になる方法」が蔓延しているからでもある。

その一つに「無知で居続ける」というものがある。何か「うわ」と思ったものに出会った時、それについて調べたり過去にどういう例があったか、そもそも自分は何に驚いたのか、を調べたり考えたりすることなく、「これはすごい!大変だ!」と喚き続ける態度である。どうもこれは簡単に幸せになる一つの方法らしい。

先日コンピュータが碁のプロに買ったのだそうな。はてなブックマークからいくつか引用してみよう。

将棋での勝利から、わずか数年でもう囲碁でも勝つとは。。シンギュラリティは2045年よりも近いのでは?

引用元:はてなブックマーク - グーグルが最新人工知能使い囲碁ソフト開発 プロに勝利 NHKニュース

これは本当に衝撃で、新聞の一面扱いでもおかしくないクラス!!!なのに……一面の片隅にあるのは日経のみとは…

引用元:はてなブックマーク - グーグルが最新人工知能使い囲碁ソフト開発 プロに勝利 NHKニュース

面白いのは、このニュースに沸き立っているのが「中途半端に情報系を齧った人間」ばかり、という点だ。チェスでコンピュータが買った時にはもっと一般受けしたのだろうが、全く興味の無い人は「え?コンピュータ賢いから勝てないんでしょ?チェスはもう勝てないっていうし」でおしまい。そこに「いや、碁はね、組み合わせの数が」とか中途半端な知識を振り回す人間でなければこのニュースに幸福を見いだしがたい。

そして

このニュースを聞いて「シンギュラリティがどうの」とうれしそうに語る人の姿をみていると、戦争が起こるたび

「本当の情報を知る」

よりも

「頭の中にある間違った軍事知識をしゃべるのに忙しい」

人たちの姿を思い出す。これも一つの幸福になるやり方だ。

先日気がついたのだが、疑似科学を唱える人にも同じ傾向がある。自分が唱えている理論と同じ分野にはどういう理論があり、それがどのように検証されてきたか、とかは絶対に勉強しない。それゆえいつまでもおなじところに立ち止まって自説を主張し幸福感に浸ることができる。

---

と簡単に幸福になりたい人ばかりではないだろうから、一つだけ書いておく。先日某研究会で人工知能関連の研究者が集まったパネルディスカッションがあった。最後の質問タイムである人がこう問いかけた。

「ディープラーニングがどうのといったところで、結局認識精度が少し上がったということにすぎない。どういう意義、社会的インパクトがあると思うか?」

一人はいかにも政府に受けそうなことをペラペラと喋った。なんでも自然界の状況を認識、識別できるようになるから第一次産業に寄与するんだそうな。それはすごいですね。ところでその第一次産業に寄与するすごいロボットはあなたが作ってくれるんですか?そんなのは簡単な人工知能の応用問題ですか?

あとの人はみな「ごにょごにょ」と述べた。

「いや、これは従来にない画期的な進歩でシンギュラリティが」

とかは誰も述べなかった。私はこう書いておく。

「ゾウは碁を打たない」



Hard Ball

2016-01-28 06:54

先日「芸能人」は「剣闘士」という名前の奴隷だと書いた。以下のような感想は多くの人に共通することだろう。

が、スターが実は鎖に繋がれた存在であることを舞台監督が暴き立てることは、舞台そのものの夢を根底から突き崩してしまう。

 何を言いたいのかというと、私は、SMAPの面々が、あんなに憔悴した表情で、何かに屈服した姿を世間に晒してしまったことの影響を憂慮しているということです。

 私のような、夢とはあんまり関係の無いおっさんでさえ、あの映像には、閉塞感を感じて、しばらく塞いだ気持ちになった。

 座敷牢の天窓にフタをするみたいなああいう映像を、テレビ局が大得意で配信して、しかもその自分たちの仕事ぶりを自画自賛してやまないでいることは、非常に気持ちの悪いことだ。

 (中略)
 それでも、あの頃の未来が閉ざされるのを見るのはつらい。
 未来は、せめて予測不能であってほしい。

引用元:カナリヤたちの謝罪中継 (5ページ目):日経ビジネスオンライン

剣闘士はあくまでも見世物であり、足首に繋がれた鎖を見せてはいけない。思い上がった社会主義者たちはそんなことも理解できなくなったらしい。

日本の芸能界がサラリーマン式なら、ハリウッドは完全なる自営業式。タレントは、自分のキャリアを自分でコントロールし、その代わり、責任も、全部自分で持つのだ。

引用元:“SMAP騒動”は起こらない。タレントが自分で自分をプロデュースする“自営業”式ハリウッドの構造(猿渡由紀) - 個人 - Yahoo!ニュース

エンターテイメントの質において、日本は米国の足元にも及ばないことについてはいろいろ理由があるだろう。そもそも観客が、という意見もあろうが私は日本のエンターテイメント業界の社会主義的体質にその一番大きな理由があると思う。

個人が裁量と責任を持つ。その結果によりリターンの白黒がはっきりする。この方式は何事も「まあ平均から始める」我が国の思考方法に馴染まないことは明白。しかしそこから何かを学ぶ必要があると思う。エンターテイメント業界だけではなく、他の業界も。

いや、話を戻そう。何度か書いたことだが、

「予測不可能なガチバトル」

こそが最も長く続くエンターテイメントだ、というのは米国が得た悟り。そう思えばSMAPやベッキーがどうのより米国大統領選挙のほうがはるかに面白い。

不測の事態が起こったら?

高濱:その時はその時。出馬を断念したジョー・バイデン副大統領が急きょ立候補する可能性もあるでしょうし、無所属で立候補する可能性を探っている元ニューヨーク市長のマイケル・ブルンバーグ氏が大統領選に加わる可能性が高まるかもしれません。まさに政治の世界は「一寸先は闇」です。

引用元:ヒラリーが予備選直前で失速、緒戦2州で敗北も (3ページ目):日経ビジネスオンライン

最近Apple TV経由で大統領選挙のニュースを見ることが多い。そして思うのだ。トランプは確かに過激な発言をする。しかし単純な馬鹿では無い。彼を鳩山や菅や渡辺(みんなの党)のような人間と同列に語るべきでは無い。

というわけで一つ予言をしておく。

もしトランプが共和党の大統領候補になった場合、誰かが米国の新聞に全面広告を出す。

We love and respect USA.

Please do not disappoint us.

さて11月まであれこれ楽しみだ。


消費税はすでに30%

2016-01-27 06:44

アメリカに出張に行き、帰ってくるといくつかの光景に違和感を覚える。その一つが「屋外に無防備に置かれている華奢な自動販売機」だ。アメリカに持って行ったら3日とたたないうちに全部盗まれることであろう。販売機ごと。

それはなんだかんだ言っても、相対的にアメリカよりは安全な日本の象徴であるようにも思う。しかしそれで物を買うことは基本的にはない。だってバカバカしいもの。

その昔一本100円だった。3%の消費税がつくというからきりのいいところで110円になった。5%にあがるときに120円になり、今や定価は130円。いつから消費税が30%になったのだ。となりのドラッグストアがあいていれば、500mlのペットボトルが88円で買えるのに。しかし売る側は維持したくてしょうがないのだそうな。

コンビニの台頭もあり、自販機の販売比率はすでに1996年ぐらいからずっと下がり続けてきました。かつて、飲料業界では不採算機を撤去しようという動きもあったのですが、自販機はたとえ販売本数が減っても利益の6割以上を稼ぐ“ドル箱”なので、既存の台数は何とか死守したい。

引用元:自販機離れに悩むメーカーがとった「苦肉の策」 (NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース

いい加減にしろ、この◉◉、と思わず放送禁止用語を使いたくなるようなロジックだが、これも社会のそこかしこに存在している「歪み」なのだろう。裏を返せば飲料業界というのは消費税30%に利益の6割を依存している「実はすでに死んでいる業界」なのかもしれん。

我が国のことだから変化は常にゆっくりとおこる。今や電車の中で新聞を広げる人が絶滅しかかっているように、そう遠く無い将来「安全な日本の象徴」が消える日がくるかもしれぬ。


日本の「一流企業」のプレゼン

2016-01-26 06:58

何度か書いたことだが「型」にはまるのが日本の強みでもあり、弱みでもある。そしてこの人たちに言えば、それが「弱み」としてでているとしか思えない。

NECのプレゼン資料

引用元:PC Watch

引用元のページを見てもらうと、「日本の一流企業」が作ったプレゼンテーション資料がたくさん掲載されている。(ここではNECの例を挙げたが別に彼らが突出しているわけではない)こんなゴミを人前で提示できる人間は脳死しているとしか思えない。

まず第一にこんなもの大画面で見せられても誰も読みはしない。絶大なる忍耐心を持って読んだとしても何も書いていない。そもそも何も言うことがないのなら黙って「プレゼン資料のコピー」でも配布していればよいのだ。きっと色使いとかフォントとかアイコンは社内の「デザイナー」に作らせたのだろうが、私としてはそのデザイナーに心から同情する。

「2016年のPC事業の販売計画は前年比10%以上の成長を見込んでいる」との質問には、7社が○。WindowsのOEM先である他社に配慮したのか、あるいはSurfaceをPCと捉えなかったのか、日本マイクロソフトだけが×。

引用元:2016年、PC市場は10%以上の成長が見込まれる!? ~JCSSA、新春セミナーでハードメーカー9社が事業戦略を披露 - PC Watch

新春セミナーだから「おめでたいこと」を言わなければならないという「型」がある。だから「10%以上成長」とか言うのだろうが、これも一種の才能だと思う。みなさん、とりあえず「本当のこと」を言うところから始めませんか?とかいう問いかけが通じるような人間は、この席には座れんだろうな。


9番目の惑星

2016-01-21 07:14

去年の6月、WWDCのLunch time presentationで聞いたことだが論文として発表されたようだ。

9th planet

引用元:Washington Post

これだけ起動がでかく、かつ偏っていると実際に発見できるかどうかは運次第、ということになる。一番近いところにいてくれたとしても冥王星の何倍も遠い。

この巨大な惑星は、遠い昔木星によって吹っ飛ばされこんな遠いところに行ったのだ、、という説があるのだとかなんとか。いや面白い。私が子供の頃、木星の衛星の数は12だった。火星の絵はまだ運河の名残を示していた。

それからいろいろなことがわかり、謎は何十倍にも膨らんだ。どこかの本で読んだセリフだが

「私が恐れているのは宇宙を理解できないことではない。理解不能なほど無茶苦茶なことを恐れている」

実際に惑星の研究で生計を立てている人たちにとってはそれぞれの発見が文字通り命にかかっているのかもしれないが、私のような野次馬はのんびりと見ていれば良い。

しかし

ふと思うのだ。我々は宇宙はまあ人間の寿命の間くらいは不変に近いものと決めてかかっている。しかしある日誰かが気がつくかもしれない。我々は恐ろしい崖の数mm手前に立っていることを。

多分私が生きている間は大丈夫だと思うけどね。


平成の剣闘士

2016-01-20 07:05

SMAPなる人たちが売れ始めた頃、すでに私はそうしたアイドルに興味を持たない年代になっていたので、彼らに対して思い入れはない。あちこちで名前を聞くから売れているとは知っている。

少し前にその人たちが解散すると聞いた。随分長い間やったし好きにすればいいと思っていたがどうやらそう話は簡単に進まない。おそらく利害を持ついろいろな陣営がいろいろな「関係者の話」を流す。それを報道するのは「スポーツ新聞」おそらくどの新聞は誰と結びつきが、とかいろいろあるのだろう。

そして彼らはフジテレビの某番組で「謝罪」したらしい。その様子は確かに異様だった。

芸能界はヤクザのフロントエンド、なんて言葉はせいぜい揶揄程度にしか言われておらず、大半の人も「まあそうなんだろうけど」ぐらいだった思うが、今回のスマスマ謝罪会見で「あ、芸能界はヤクザなんだ」と痛烈に知れ渡り、それを取り巻く芸能報道もヤクザの太鼓持ちなんだと子供でも分かる状況に。

引用元:西岡さんはTwitterを使っています

40歳を超えた男性たちが、自分で職業を選択することすらできない。見ていて理解できた。彼らは現代の奴隷なのだ。皮肉なことに以下のセリフは某ドラマの中でSMAPのメンバーが言っていたらしい。

古代ローマの奴隷の定義を知っている?
古代ローマには贅沢な暮らしをしていて何の不自由もない医者や教師といった
インテリの奴隷もたくさんいたんだ
彼らは鎖に縛られることもなく
主人からは貴重な人材として丁重に扱われた

しかし
彼らは奴隷だった

では奴隷とローマ市民の違いはいったいなんだったのか?

奴隷の運命はすべて主人が握っていたんだよ
彼らに自分の運命を決める権利はない

つまり「自分の運命を自分で選択できない人間」
それが「奴隷」なんだ
貧富の差は関係ない

ドラマ「独身貴族」

引用元:古代ローマの奴隷の定義 | ちょっと長い名言集~前進するあなたへ~

彼らに対する「賞賛」「歓声」は「剣闘士」に向けられたそれと同列。剣闘士たちの「ショー」に大金をつぎ込む人たちは剣闘士の胴元に養分を補給している。つまりそうした人たちは剣闘士の殺し合いに歓声をあげていたローマ人と同じレベルにある。個人が自分の資産をどう使おうと自由だが、自分たちがヤクザを太らせているという事実は自覚するべきだと思う。

それでも

「奴隷」を夢見、それになるためにすべてをかける若い男女は後を絶たないし、これからも減ることはないのだろう。それほどまでに「聴衆からの歓声」というのは魅力的なものなのだろうか。

剣闘士だった奴隷は観客の喝采を浴びた経験が忘れられず、引退してもまた剣闘士に戻る者もいた

引用元:剣闘士 - Wikipedia



Apple TVの未来

2016-01-19 07:06

先日Goromi for YoutubeのAppleTV版を公開した。とはいってもここにリンクを貼ることもできないし、そもそも新しいApple TVを持っている人はあんまりいないようだ。

会社のブログで、AppleTV上のアプリ開発に関する「名文」を書いたのだが、悲しいくらいに反応がない。これは私の文章がダメなのではなく、まだApple TVを買っている人が多くないからにちがいない。そうにちがいない。(血走った目で繰り返す)

そもそもAppleTVのApp Storeでアプリを探すのは簡単ではない。Top無料アプリとかいつまでも同じようなものが並んでいる。だからGoromiなんか公開しても誰も使わないだろう、と思っていたのだが不思議なことに長年公開しているiPhone/iPad版と同じくらいのユーザがいるようだ(どちらも一桁だが)

Apple TV上でGoromiに出くわすためにはおそらくYoutubeといれて検索する以外の方法はないと思う。iPhone/iPadで同じことをやると無数のアプリがリストされ、その遠く彼方にGoromiがでてくるが、どうやらApple TVではまだそうはなっていないようだ。それゆえ「娘がデザインしてくれた斬新なアイコン」に「左手で書いたような紹介文」であってもダウンロードしてくれる人がいるのだろう。

そんなApple TVだが

「もっとよくできるはずだ」という靴の上から足をかくような感じを味あわせてくれるデバイスでもある。今朝こんな記事を見かけた。

Everything is segregated into apps, which means to watch TV, I have to constantly switch between the Home Screen and an app just to check the channels and content inside each sandboxed application.

引用元:Feature Request: Apple TV 4 needs a way to watch TV shows from multiple sources in one universal app | 9to5Mac

「一発でホーム画面に戻るにはどうすればいいんですか?」というのは先代Apple TVのFAQになっていた。(多分)あまりにその声が大きいので、今のAppleTVには専門のホームボタンがついている。しかしこのコメントにあるように、それでもホーム画面との行き来が頻発するのには閉口する。次のバージョンアップで、iOSのようなアプリの切り替えが実現するらしいのだが、

「もっとよくできるはずだ」

という感じは消えない。しかもこれはアプリの切り替えだからApple以外に改善できない部分でもある。

いずれにせよ

Apple TVのおかげで我が家のTVは蘇った。奥様がわけのわからない番組を垂れ流すだけのデバイスではなく、子供達と楽しんでみることができる対象になったのだ。いやYoutubeが面白いんですよ。ダースベーダが踊りまくるシーンとか。

とか書いていてふと思いついた。

今iPhone/iPadではアプリのランキングが示されている。Apple TV上ではチャンネルや提供者の枠を超え、「コンテンツのランキング」が示されるようになるかもしれない。そうなったらコンテンツ提供者にとっては大事、ユーザにとっては万々歳の事態だ。今まで「ユーザに何をみせるか」はコンテンツ提供者側が一方的に決めることができた。それゆえ「事務所の力」とかそいういう社会主義的なロジックがまかり通っていたのである。

しかしそれがユーザがつけた星やら、フィードバックの数で評価されるようになる。それにより、「何を見せるかのコントロール」を一部であってもユーザの手に取り戻す。いや、これは楽しいことになりそうだ。そう簡単にはならないと思うけど、そうした可能性を感じさせてくれるだけでもこのApple TVというデバイスは楽しい。


某自動車部品メーカー子会社の思い出

2016-01-18 07:12

某自動車部品メーカーの子会社で働いていた時、いろいろ不思議な事象に出くわした。彼らの「刈谷の田舎者」という自虐と、「トヨタグループの一員」であるという部外者には理解のできないプライドが同時に存在している様は、同じ会社で働きさえしなければユーモアをもって眺められたかもしれない。

しかし私が接した他の大企業と際立って異なっていたのは、「自分のアイデンティティと会社の一体化」の度合いである。彼らのほとんどは見事なまでに会社と一体化していた。それゆえ「◯◯◯ー流のやり方」というのは-その内容を誰にも説明できないが-彼らにとってはヤハウェの言葉と同じように神聖不可侵なものだった。

「皆が最近感動したことを発表し合いましょう」という会議が定期的に開催されていた。そして参加者全員で「多数決」で最もすばらしい感動エピソードを決定し、勝者にはなにか表彰があったと思う。この催しについて自由に意見をかけというから

「多数決で感動の勝者を決めるのは実に◯◯◯ー流である」

と書いた。(当時の私は今よりも愚かだったのだ)この言葉はいたく◯◯◯ー出向者の機嫌を損ねたようで数ヶ月後に呼び出され

「批判は許さない。排除する」

と通告された。

なぜこんな昔の話をするかというと、最近こんな言葉を目にしたからだ。

Paul曰く:
人は、その人のアイデンティティの一部となっている事について、実りある議論はできない。
これすなわち、自分のホームに近い話題ほど論理よりも感情が優先されてしまうということ。

引用元:golang - [翻訳]なんでGoってみんなに嫌われてるの? - Qiita

私がやったことは敬虔なイスラム教徒に対して「コーランっておかしくね?」というような類いのことだったのだ。会社としての◯◯◯ーに◯◯◯ー社員が一体化している度合いというのは、敬虔なイスラム教徒がコーランと一体化しているとの同等と知るべきだった。私は物理的に断首されないだけ幸運だったと思わなければならない。

最近は聞かないが、ロッキード事件のころは「会社の生命は永遠です。その永遠のために、私たちは奉仕すべきです」と遺書を残しビルから飛び降りた敬虔な社員もいた。いや、そんなのは昭和の頃の話だと笑うのは間違っている。世の中には変化した場所と、そうでないところがまだら模様に入り組んで存在している。いまでもそうしたメンタリティをもった人はたくさんいるだろうし、そうした人間の存在を常に意識の片隅においておくことは有益だと思う。




JobsとMayerを分けたもの

2016-01-15 07:05

米国Yahooが解体されようとしているらしい。状況がこうなるとCEOには批判の声が強くなる。

Now, morale has sunk so low that some employees refer to Ms. Mayer, Yahoo’s chief executive, as “Evita”

引用元:Yahoo’s Brain Drain Shows a Loss of Faith Inside the Company - The New York Times

今や彼女は社内で「エビータ」と呼ばれているのだそうな。

上に引用した記事を読みながら「MayerとJobsを分けたものはなんだったのだろう」と考える。Mayerに対する批判的な言葉はそのままJobsに向けられてもおかしくないもの。そしてAppleの成功とYahooの解体が二人の能力だけに負っているわけでもない。

今マッキントッシュ物語という本を読み始めている。

この本が書かれたのは1994年。つまりiPhoneの影も形もなく、Windows3の登場やら、スカリーの退任により「どうもAppleの先行きは危ないのではないか」という懸念が表面化したころだ。

しかし

その頃のエピソードであっても、Jobsと(伝え聞く)Mayerのスタイルには何が決定的なちがいがあるように思う。

Mayerと働いたことがある元Googleの幹部は2度こう言ったとのこと。

"This is a great day for Google, and a nail in the coffin for Yahoo."

via: The Truth About Marissa Mayer: She Has Two Contrasting Reputations - Business Insider
Googleにとっては素晴らしい日。そしてYahooにとっては棺桶に釘が打たれた日。

・Mayerは文字通り一日24時間、週7日働く。
・99%の人間より頭がよい
・他人を使うことができない。だから、彼女の才能を組織の力にすることができない
・彼女にとって「マネージメント」とは脅すか、恥をかかせることだ。
・彼女に5分間会うために、彼女のオフィスの外には人が並んでいた。GoogleのVPも並ばされた。

引用元:ごんざれふ

部下に対する「厳しさ」の元にあるものが違うのではないかな、とぼんやり考える。与えられた問題に対してベストの解決方法をとる人間と、そもそも自分で問題を作り出している人間との違いが。

なにか大きなプランを立てて、それを社員にやらせるということではなく、どんなアイデアがあるのかを聞き、アイデアを実行するように許可するのが私の役割。

引用元:Yahoo!のメイヤー氏とFacebookサンドバーグ氏が「Dreamforce 2013」で講演 -INTERNET Watch

これは自己評価だから割り引いて聞かなくてはならないが、おそらくJobsはこうした姿勢はとらなかったと思う。そして危機に瀕した企業を救うのにおそらくこうした姿勢は正しくない。

残りの銃弾が一発しかない時に「どこを狙うのか意見を聞いて、それに青信号を出す」人がCEOではいけないのだ。


大日本帝國娯楽提供公社

2016-01-14 06:57

少し前のことだが、NHK紅白歌合戦の視聴率が低調だったのだそうな。

日本のエンタテイメント界というのは、完全に供給者側の都合により運営されている社会主義に基づく業界だ、というのは前にも書いた。今回の紅白歌合戦はそれを再確認させるものだった。

和田なんとかという誰からも嫌われている歌手は延々登場してくるし、数年前にひどい失態をした女優は再び司会をする。権威があるらしい「最後に歌う人」は私が大学生だった頃に流行った人だ。女性はまだしも男性は「あれ?この人まだ歌手やっていたの?」という人。

エンタテイメント界はメディア界と深く結びついており、(というか大きく重なっており)その世界もかなり社会主義的である。香山なんとかという精神科医が一時あちこちに出演していた。最近その人がデモに向かって中指たててわめきちらす写真が公開された。例によって社会主義国家で真実の声が聞こえるのは匿名掲示板でしかない。

こんなヘイト剥き出しな奴を
若者向けの人生相談コラムの回答者に使ってる
中日新聞て・・・・・

93: フォーク攻撃(九州地方)@\(^o^)/ 2016/01/10(日) 18:45:26.68 ID:7hcXzVtjO.net
人を罵倒したい欲求を解消するためにカウンターとか言って暴れてるだけ
こんな人がカウンセラーとかできる訳ないだろ
己の怒りをコントロール出来ず路上で発散するような人だぞ

96: エルボードロップ(庭)@\(^o^)/ 2016/01/10(日) 18:47:25.72 ID:mTqE0lMO0.net
こんな奴がBPO委員なんだぜ?日本のマスコミがいかに腐ってるかよくわかるよな

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : 【画像】 香山リカさん、中指立ててヘイトを撒き散らす - ライブドアブログ

名古屋の国民新聞、中日新聞はこの人をコラムの回答者として雇用し、BPOなる審議の委員もしているんだそうな。

個人でどういう政治活動をしようが、(法律の範囲内で)その人の自由だが、その人を正式に雇用したり委員として登用したりする集団の理論には嘆息を禁じえない。しかしこれも社会主義的な「供給者の理論」にのっとれば是となるのだろう。

と思って調べてみたら現役の「立教大学教授」なのだな。

現代心理学部 映像身体学科
現代心理学研究科 映像身体学専攻
教授

香山 リカ

引用元:香山 リカ|教員紹介|教員/研究施設|立教大学|現代心理学部

日本の大学も社会主義的な理論に基づいた業界だが、それを改革しようとする試みもまた社会主義的なところからでているからなんとなく的外れに終始している印象がある。

こうした人間がどのようにして様々な役職を兼任するようになるのか。そうした社会の仕組みはとても興味深い。おそらくこの人間に役職を与える組織にはなんらかの共通点があるにちがいない。



若い女性起業家万歳!

2016-01-13 07:04

と無条件に言う人は後を絶たない。私には、なぜそうも愚かでいられるのかが不思議だ。

2.技適問題で世間を賑わせたUPQが早くも新製品「A01X」を投入 ━━中澤社長のキャラで「顔の見える端末メーカー」の強み生かす

引用元:石川 温の「スマホ業界新聞」(石川 温) - ニコニコチャンネル:社会・言論

「社長のキャラで」って、、別にこういう事象は日本の特技というわけではない。アメリカでは最近こういう人が話題になったのだそうな。

Theranosは話題の医療ベンチャーで、CEOが19歳、スタンフォード大学の化学工学2年生の時に大学をドロップアウトして創業した。「指先を針で突いて出しただけの少量の血液で200種類以上の血液検査が迅速かつ安価に出来る」というのが売りで、昨年の6月には$308 million、約360億円を調達し、時価総額は90億ドル、と言われる。

エリザベス・ホームズは株式の半分を所有しているとされ、「史上最年少の自力でビリオネアなった女性」と話題になった。しかも彼女は非常に目に優しい

引用元:投資コミュニティから世間に富を再配分している(かもしれない)Theranos

「非常に目に優しい」って、、まあ書いているのが「頭がいいフリをするのは簡単」と言い切るコンサルタントだからなあ。でもってこの女性のビデオが怖いのだ。先日TEDで「ウソを見破る方法」というプレゼンをみたが、このビデオにはその特徴がいくつも現れているように思う。

とはいえ

この「若い女性詐欺」の分野においても、遺憾ながら我が国は米国に遠く及ばないのはいかがなことか。

そして昨日、当のWall Street Journalが開催するWSJD Liveというコンファレンスでエリザベス・ホームズの登壇した。記事が出る前から予定されていたものではあるが「来ないんじゃ」という大方の予想を裏切って本人登場、激しい反論を繰り広げた。

引用元:投資コミュニティから世間に富を再配分している(かもしれない)Theranos

彼女の反論はまあ言い逃れの類だったようだが、それでもUPQの「技適ってませんでした。サーセン」ビデオとはケタが違う。

まあエンロンみたいな「徹底的に詐欺をやります!なんなら電気止めます!」企業がでてくるよりはいいかもしれん。震災後に民主党が通した太陽光発電の悪法のおかげでどれだけ損害を被ったかはいつか誰かが計算すると思うが、あの程度で済めば御の字ということなのだろうか。


民意による製品開発

2016-01-12 07:11

Appleが3.5mmオーディオジャックを廃止ししようとしている、という噂に対して21万票の反対が寄せれたのだそうな。でもってこういう漫画が描かれる。

民意によるiPhone7

引用元:Joy of tech

「ユーザの声」を素直に反映させるとこういう製品ができあがる。これを冗談だと思う若い人もいるだろう。しかし私のような年寄りになるとこれを見た瞬間この写真が思い出された。


SONYのCLIE

引用元:こうあるべきという共通認識

左側に写っているのは、冗談ではなくSONYがかつて販売していたCLIEと呼ばれるPDAである。今でも覚えているが発売からしばらくした頃のCLIEはすごかった。ありとあらゆるものが搭載されており、その分厚さからものすごい存在感が漂っていた。そして何の役にも立たなかった。

いや「機能」はCLIEのほうがはるかに「豊富」だったんだよ。もちろん携帯電話ではなかったから通話はできなかったけど、それ以外にできることは山ほどあった。

「民主的」に民意、あるいは社内の関連部署の意見を「集めて」製品にするとこういうものができあがる。私の考え(あと本で読んだこともあるが)その会社が出してくる製品、というのはその会社の体質をそのまま反映していると思う。SONYの「民主的」な体質はこの頃からのものなのだろうが、それが行き詰まっていることが明白になったのはようやく最近のことだ。10年前はこのゴミのような製品をだしながらこう解釈してもらえたのに。

CLIEの撤退は表明したもののPDA的な製品からの撤退を否定しなかったソニーは、PC中心主義に屈することなくどんな次の一手を打ってくるのだろうか。楽しみだ。

引用元:CLIE撤退に見るPDAの悲劇 - (page 2) - CNET Japan


素人:玄人 単純:複雑+単純

2016-01-08 07:22

スローガンとかを多くの場合軽蔑する私だが、時々好きな言葉に出会う。「素人発想・玄人実行」というのはその一つだ。

いきなりこの言葉だけ出されてもなんのことかわからないと思う。だから例をあげよう。まず「素人発想・素人実行」から

ログバーいわく、iliは「世界初のウェアラブル翻訳デバイス」。スティック型の端末についたボタンを押して翻訳したい内容を話すと、それを自動で翻訳、音声にしてくれる。

(中略)
同社の発表によると、スタンドアロン型のため、翻訳の処理のためにネットワークに接続する必要はなく、大音量でもクリアな音声を確保。言語辞書は、一般的な会話に加えて、買い物やトラブル、レストランなどでの翻訳に対応するという。

引用元:ログバーの新プロダクトはウェラブル翻訳デバイス「ili」、コンセプト動画には批判も | TechCrunch Japan

こういうゴミのような発表にもメリットはある。これが「素人発想・素人実行」の最たるものだ。

私はドラエもんを見ない人なのだが、なにやら「ほんやくコンニャク」なるものがこれに相当するのだそうな。でもってこれを「未来を感じる!」と断言する人は詐欺に騙されないように気をつけたほうがいい。

「こんなことができればいいのにな」と素人の素朴な要望を大事にする。これが素人発想。問題は「ではなぜそれが実現されていないのか」と考えること。素人の発想は誰もが思いつくことであり(玄人は無理だが)それが実現されていないのは

・奇跡的にその発想をもったのが自分だけだった

・実はそれが実現できないものすごく複雑な理由がある

のどちらかであり、ほとんどの場合後者である。Steve Jobsの言葉にこういうのがあるらしい。

「私たちが言いたかったことは、ある問題に直面してそれが簡単に解決出来る単純な問題に見えても、実際にはその問題の複雑さがわかっていないということが多いということです。単純化しすぎるのです。」

引用元:地獄のサンフランシスコ

機械翻訳の現状と、その微分係数を少しでも知っているひとならばこの製品がよくて

「電子辞書に載っている会話例を音声認識で検索し、発声する」

レベルの製品だと気がつくはず。そしてその有用性は「会話例を発声してくれる電子辞書」にも劣る。音声認識がちゃんとできるわけないからね。

なぜ誰もが欲しがる「翻訳コンニャク」が実現できないのか。それには長い長い話が付属している。それはあまりにも長く、ここで書けないので

<ステマ>

ユーザインタフェース開発失敗の本質」を是非「購入して」読んでほしい。

</ステマ>

ひところ話題になったencahntmoonとかいうのも「素人発想・素人実行」の例であるし、多くの「相対性理論は間違っていた」という疑似科学も同じ考え方に基づいている。

さて

「やっぱりこの問題は難しいんだ。素人は黙ってろ!」

で話がおしまいかといえばそういうことではない。Steve Jobsの言葉にはまだ続きがある。

「今度は本当に複雑な問題だとわかり、非常に複雑な解決方法を考え出します。しかしこれもまだ途中なのです(中略)

本当に偉大な人物はそれでもまだ研究を続けて、問題の鍵となる基本原理を見つけ出すのです。そして本当にエレガントな解決策を見つけ出します」

引用元:地獄のサンフランシスコ

これが「素人発想・玄人実行」である。それはあたかも「素人が発想する内容を、素人が考えたような単純な方法で解決した」もののように見える。しかしそうではない。その裏に存在するものすごく複雑な問題を解決するための「恐ろしい何か」が存在しているのだ。それは高度なアルゴリズムかもしれないし、高度な設計技術かもしれないし、あるいは「確かにそれができればいいというのはわかっているけど、本当にやるとは」かもしれない。

iPhoneのインタフェースは今見れば「当然」と思えるかもしれない。しかしそれは少しでも「組み込みOS」について知っている人であれば畏怖を覚えること間違いなしのソフトウェアテクノロジーとハードウェアテクノロジーに支えられている。2007年1月に

「こんなの日本メーカーならすぐできる」

といった人たちはそれがわかっていなかった。そして多くの日本家電メーカーは「これは複雑で難しい問題だ」と認識した時点で引き返してしまっていたのではなかろうか。彼らは素人ではなかった。しかし偉大な製品を作ることができなかった。

難しいことを認識する、すなわち現実にしっかり立脚することと「素人の夢」を追い続けること。この矛盾する両者を併せ持つ人、組織にしか偉大な製品・サービスは作れないのかもしれない。




More choices, continues

2016-01-05 07:24

自動車業界の「ネット接続規格」には本当に困惑させられる。まずトヨタ様からこんなリリースが出ている。

トヨタ自動車(株)(以下、トヨタ)は、フォード・モーター・カンパニー(以下、フォード)およびその子会社リビオ社と、同社の「スマートデバイスリンク」(以下、SDL)の展開で協力すべく、共同で仕様開発・運営を行う枠組みを構築することで合意した。今後、他の自動車会社やアプリ開発会社にも、参画を呼び掛けていく。また、トヨタとしても今後、SDLを用いた車載システムを商品化する予定。

引用元:トヨタ、「スマートデバイスリンク(SDL)」を用いた車載システムを商品化 | トヨタグローバルニュースルーム

これでトヨタが採用する「車載機器のネット接続規格」はいくつ目になるのかわからないほどだ。しかも「今後SDLを用いた車載システムを商品化する予定」となっており、いつ何が搭載されるかわかったものではない。Fordの側からはこんなリリースが出ている。

LAS VEGAS, Jan. 4, 2016 – A first wave of automakers and industry suppliers – led by Toyota Motor Corporation – is adopting Ford SmartDeviceLink software – a huge step toward giving consumers more choice in how they connect and control their smartphone apps on the road.

SmartDeviceLink is the open-source software on which the Ford SYNC® AppLink™ platform is built. It provides consumers an easy way to access their favorite smartphone apps using voice commands. Automotive suppliers QNX Software Systems and UIEvolution also are adopting the technology, with plans to integrate it into their products.

引用元:Toyota Adopts Ford SmartDeviceLink Software; Other Automakers, Suppliers Join to Accelerate Industry Standard | Ford Media Center

こちらはもっと素直に

「トヨタがFordの規格を採用した!大勝利!」

となっている。同じようにQNX,UIEvolutionsもFord規格を採用するとあり、大Ford様のリリースに私が元勤めていた会社の名前がでるだけでも素晴らしいことなのだが、じゃあ世間一般でどんなニュースが流れたかというと

Ford has announced that CarPlay will be coming this spring to all 2017 models equipped with its Sync 3 infotainment system.

引用元:CarPlay finally coming to Ford cars this year, including upgrades for last year’s models | 9to5Mac

9to5Macが「世間一般」などというのはApple原理主義者である私くらい、と多少認識はしているが、反省はしていない。これをみれば「おう、とうとうFordもApple CarPlayを採用か」と思う。

つまり

どこもが「自分のところの規格が採用された!」と勝ち鬨を上げているのであり、何がなんだかさっぱりわからない。もういいよ、iPhoneの電源とスタンドとCDプレーヤーだけ用意してくれれば、とか私などは考えてしまう。

これがどんな形で「事実上の標準」に収斂しているのかさっぱり見えない状態だ。というかディスプレイオーディオにスマホを接続するのが正解だと思うのだが、我が国で今車を買おうとすると自動的にゴミのようなカーナビが搭載されており、それでたっぷりとお金をとられる可能性も高い。はてどうしたものか。



ユーザインタフェース開発失敗の本質

2016-01-02 08:01

という本をAmazon Kindle ダイレクトパブリッシングで出しました。

iPhoneはユーザインタフェースが圧倒的な商品力に結びつくことを示した。しかし「ではiPhoneのようなものを」と新しいユーザインタフェースを開発しようとし、失敗した例は枚挙にいとまはない。なぜ失敗するのか。ありがちな8っつの失敗パターンを分析。
-ユーザビリティ原理主義
-アルゴリズム原理主義(及びロンギング原理主義)
-すごいデバイス原理主義
-多機能原理主義
-人に「自然」なインタフェース原理主義
-エージェント原理主義
-ユーザの声原理主義
-メタファー原理主義

その上でその根底にあるの4つの根源的な問題について述べる。

問題その1:フレーム問題
問題その2:記号接地問題
問題その3:真面目に道を極めると会社が滅ぶ:イノベーションのジレンマ
問題その4:「革新」に対する矛(ほこ)と盾(たて)

最後に「ではどうすればいいのか」についていくつかの事例をもとに論じる。

引用元:Amazon.co.jp: ユーザインタフェース開発失敗の本質: Kindleストア

いつのまにか10年以上にわたってユーザインタフェース関係の仕事に携わることになりました。そして多くの失敗を見たり、体験したりしてきました。

何にでもパターンを見出そうとするのは、統合失調症の症状でもあるようなのですが(すくなくとも映画ビューティフル・マインドではそうだった)この本ではその「失敗するパターン」をまとめました。

例えば

画面に可愛いキャラクターがでてきて(最近では実態をもった女性型ロボットが)「素晴らしい会話のデモを見せる」というパターンは何十年も前から何度も繰り返されています。だいたい「2−3年後の実用化を目指している」という言葉とともにアナウンスされるのですが、その「2−3年後」は永遠にやってこない。

あるいは

「徹夜してすごいデバイスを作りました!何に使えるかはこれから考えます!」というものも毎年どこかでみかける。そしてその「何に使えるか」が見出された例はiPhone以外に見たことがない。

ジェスチャー認識を使ってます!音声認識を使ってます!人にやさしいインタフェースだからいいんです!という試みも後を絶たない。しかし本書を読めばそれらが「むちゃくちゃ不自然なインタフェース」であることが理解できるでしょう。

こうしたパターンは何度も何度も繰り返されます。ある尊敬する研究者がインタラクション系のイベントを評して

「毎年同じようなことをしているなあ」

とつぶやいたのを聞いたことがあります。

卒論が、修論がかけるからいいじゃないか。あるいは学生の研究なんだから一生懸命がんばればいいじゃないか、という見方もあるでしょう。しかしそうした失敗パターンは学生の研究に限られるものではありません。「スーパーコンピュータ」と呼ばれたPS3の失敗を覚えている人は多いでしょう。他にも日本を代表する一流企業の社員が

鉄道の逆説

そのものを口にすることもある。

そうした失敗パターンの背後にあるものは何なのか。「人工知能」の研究は何十年にもわたって行われており、その「失敗の本質」についても研究されているのに、それを無視する人の多さには驚くとともにそれ自体研究に値するのかもしれません。そしてこの章には珍しく本書オリジナルの

「Private版イノベーションのジレンマ」

が挙げられています。「新しい提案をどんどんだせ!」という言葉を間に受け、提案した数々の自信作が全くわけのわからない理由からボツにされる。なぜだ。会社で働いたことがある人ならば、あるいはこのジレンマにつきあたったことがあるかもしれません。

という具合に

散々気が滅入るような話が続く。こんな話読んでいられるか、と放り出しそうになるのを(電子書籍をどうやって放り出すかは考えないことにして)少し我慢して最後まで読んでいただきたい。

「ではどうすればいいのか」について記述した4章の弱々しさには笑えること請け合いです。というかこの本を最後まで読んでくれる心の広い人であれば、「散々読ませておいてこれかよ!」と怒ることはなく、投げっぱなしのラストを読み、生暖かく微笑んでくれることを私は確信しております。

最後にAmazonに寄せられたレビューを引用しておきます。

(いい加減やめていただけないかしらそれ)がライラの(偽らざる本音)であり
(自分に絶望したをやりとおす方法)と(自分に絶望した者に対し嫌悪感を抱かない方法)はなんなのかを
人間と天族の口から吐かせることで(自分に絶望した)を(おしまい)にするのがライラの目的であり
これを実現させるためにライラは開発に手を出したのである

引用元:Amazon.co.jp:カスタマーレビュー: ユーザインタフェース開発失敗の本質