世間は中年(以上)に冷たい

2011-10-31 06:32

このブログで何度か取り上げたミログである。Twitterのタグ#applogで検索するとあれやこれやのTweetが飛び交っている様が観察できる。

その中に一つ面白いやりとりがあった

Akihiko Kodama
@
僕はミログ社および のやったこと、その後の対応も多いに問題があると思ってますよ。ただ彼は二十歳そこらの意欲ある若者ですよ。今の叩きはただ溜飲下げてるだけにしか見えないし、社会としてこういう元気のある奴を伸ばそうとしないのは貧しい。
返信 

via: Twitter / @ChihiroShiiji: @akhkkdm @Chamiu_IT スーパーフリ ...

どちらの言い分に部があるかは皆様の判断にお任せするとして、思うのは

「若者は、それだけで擁護してもらえていいなあ」

である。
意欲のある若者は社会として伸ばせ、という声があがるが、意欲のある中年男は誰も伸ばそうとはしてくれない。その昔には未踏ソフトウェアという大変ありがたいシステムがあったのだが、今や応募できるのは25歳未満だ。

「過ちをおかした若者を擁護する」

声の背後にあるのは「若者なので、まだ世間がわかっていない。過ちから学んでくれるだろう」という暗黙の前提である。じゃあ中年には世間が分かっているのか、と言われれば笑止と答えるし、中年には過ちから学ぶ能力がないか、と言われれば「なんだそれは」と答える。

でもまあ私がなんと言おうと、若者は若者とというだけで擁護してもらえるわけだ。児玉氏の言葉を聞いていて

「こういうメンタリティの人が、辻政信を生き長らえさせたのだろうな」

とぼんやり考えた。今から我々が考えれば、「あそこで辻を葬っておけば何人の命が救われたことか」と思う。しかし当時は

「いや、辻は意欲もあり、優秀な軍人だ。若さ故行き過ぎがあるかもしれないが、それは大目に見てやろう」

ということだったのだろう。


Androidはプラットフォームではない。組み込みOSだ。

2011-10-28 06:56

またか、と同じ話を繰り返すわけだが、今朝新しいネタを見つけた。

via: the understatement: Android Orphans: Visualizing a Sad History of Support

このチャートの読み方。2010年までにU.S.で販売されたiPhoneおよびAndroid phoneがどのバージョンのOSを動かしているか、あるいはサポートを受けられるかを示している。
緑色は最新バージョンのOSが動く、黄色は一つ前、オレンジは二つ前、赤は三つ前のバージョンだ。

18機種のうち:

via: Androidバラバラ事件を見事にグラフ化-辛口解説つき

だからどうした?誰もOSのバージョンなんか気にしないよ。

ユーザに一番関係するのは、セキュリティの問題だろう。
上記棒グラフの中にある破線は、その機種がサポートされている期間。これが終わっているということは、仮にその時点でセキュリティのリスクがあってももう何の手当もしてもらえない、ということだ。

ちなみに米国での契約期間は2年間。ユーザとしては、せめてその間は最新のOSが動き、サポートがされることを期待すると思うのだが現実はそうなっていない。

またアプリの開発者にとっては、全てのバージョンのOSで試験をしないことには商品を出荷できない。もちろん「少数の古いバージョンにどこかで見切りをつける」ことは必要だが、それはどこなんでしょうねえ。。

この悩みは他のOSにも共通だ。元ブログには、iOS向けアプリを作っている会社の判断が掲載されている。今月になって要求するOSを4.2.1にしたのだそうな。これはそのバージョンがでてから11ヶ月後だ。

同じことをAndroidでやろうと思ったら、、どうするんでしょうねえ。聞いてみたいのだ。Androidアプリを開発する人って、どのOSとどの機種で試験をして出荷しているのだろう?

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なぜこういうことが起こっているか?元記事によれば、これらサポートされていないバージョンのOSでも、ハッカー達は起動に成功しているという。だからH/Wが対応していない、というのは理由にならない。

メーカー側の視点にたてば、膨大な費用をかけてOSをアップグレードさせる理由がない、ということなのだろう。ユーザは最初に契約した時点で金を払ってくれている。そのあとアップグレードしても何の見返りもない。つまり早く機種を時代遅れにしたほうが、次の機種を買ってもらえる、という考え方もあるだろう。

一方Appleは、古い機種であってもせっせとOSをアップグレードしている。これによってiPhoneを持っている人は、自分たちが次に新しいiPhoneを買うときも安心していることができる。

原文によれば

In other words, Apple's way of getting you to buy a new phone is to make you really happy with your current one, whereas apparently Android phone makers think they can get you to buy a new phone by making you really unhappy with your current one.

via: the understatement: Android Orphans: Visualizing a Sad History of Support

Appleのやり方が、今持っている携帯電話の満足度を高めることで次にも同じ携帯電話を買ってもらう、というアプローチ。逆にAndroidメーカーは今持っている携帯電話に不満を持たせることで、新しい機種を買ってもらおうというアプローチ。この対照は興味深い。

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先日Googleが新しいOSを発表した。Ice cream Sandwitchではハードウェアキーがいらなくなるのだそうな。あの忌まわしくも中途半端なハードウェアキーが。

携帯電話製造に関わる仕事についていないことを神に感謝しよう。組み込みOSなのに、「世界で一番普及したプラットフォーム」と過大広告されているAndroidを使うか。面白みの全くないWindows Phoneにいくか、実体がわからないTizenを選ぶか、はてまた愛するガラケーの世界に留まるか。これだけしか選択肢はないのだ。


歪曲できる現実と、そうでないものと

2011-10-27 06:40

Steve Jobsの伝記が発売されたらしい。その中からいくつかの話題が発生している。

会食が一段落した7月中旬、妻ローレンさんと2人で昼時に訪れた。ウミマス、タイ、サバ、穴子。好物を8貫頼んだものの、時折苦しそうに頭を抱え込んだ。半分食べ残したまま、鍋焼きうどんを注文。しかし、じっと見つめるだけだった。

 「食べて元気になりたかったんだと思います。あきらめてなかった。痛々しいぐらい必死で生きようとしていた」。高橋さんは、食べられなくても注文を続ける姿に、わずかな可能性でも挑もうとする気合を感じた。それが最後だった。

via: ジョブズ氏 : 寿司屋で友人と「お別れ会」週3度も 今年夏 - 毎日jp - Cybozu.net

そこまでして必死に生きようとしていたJobsだが、その生を奪ったのもまたJobs自身だった。

5日に死去した米アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、2004年に膵臓(すいぞう)がんと診断された後も医師の勧めに反して手術の予定を9カ月先延ばしし、マクロビオティックの食事療法で治療しようとしたが、後にそのことを後悔していたという。

via: CNN.co.jp:ジョブズ氏「死後の生を信じたい」、迫る死期が製品開発の原動力

食事療法ですい臓がんが治る、なんてのは怪しげな健康食品の類だ。彼の現実歪曲空間については多くの人が語っている。また我々も消費者として、彼のビジョンがどのように世の中を変えていくかを観てきた。

しかし

世の中には歪曲できる現実とそうでないものがある。「できる」領域で見事な力を発揮する人たちはその事実が理解できないようだ。

彼が以下に熱く語ったところで癌細胞を取り除くことはできない。

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Evernoteに保存した情報をたぐればこんな「スーパーエンジニア達」の言葉が目に付く。

メガソーラーどころかギガソーラー級ともなると、出力変動をどうバッファーするかも問題になってくる。蓄電技術が上がるとよいのだが。

しかし10年かければ出来るはずだし、実際にこれらの土地から放射性物質と不安が抜けるには30年はかかるのではないか。

via: 404 Blog Not Found:news - 東日本ソーラーベルトは誇大でも

ギガワットの出力を持つ太陽光発電の出力変動をバッファリングする技術が10年でできる?

太陽光、風力、地熱、小規模水力などの自然・再生可能エネルギーに積極的に投資し、10〜15年後(2021年〜2026年)までにそれらの発電コストが「火力発電よりも安い」「政府の補助金なしでも経済的に成り立つ」状態になんとしでも持って行く。これの実現可能性に関してはさまざまな意見があるが、今のペースで技術が進歩して行けば2013年〜2025年には達成できると多くの研究者が予想しており(参照参照)、「簡単ではないが十分に達成可能なゴール」としては設定するには適切なレベルである。

via: Life is beautiful: 脱原発への具体的な道筋

あと最短2年で自然エネルギーが火力発電より安くなる?過去何十年も開発されてきた自然エネルギーがあと10年で火力発電より安くなるという目標が「十分達成可能?」
(いや、その目標に向かって全財産自然エネルギー開発に投資する、というなら真面目に聞くけどね)

この二人はソフトウェア開発の世界で名をなした人たちだ。そしてソフトウェア開発というのはいまだに

「一騎当千」

がなりたつ世界でもある。想像だが、彼らは「俺にやらせればこんなのは簡単だ」と放言し、それを実際に達成するという経験を何度もしてきたのではなかろうか。

しかし

人間がソフトウェアを開発するのと物理法則を相手にするのは全然違うゲームだということを理解していないのだと思う。スーパーエンジニア達のこうした「軽すぎる言葉」を見るにつけ、一つの領域で突出した能力を持つ人間の言葉を過大評価してはならない、と思う。

Jobsの愚かな判断については別の感慨を持つ。彼の判断は全く愚かだった。しかしJobsというのはそういう人間だったのではなかろうか。それ故事業で偉大な成功を収めた。それ故癌で寿命を縮めた。この二つの事象は裏表であり、どちらか片方だけ取り出すことはできなかったのだ。

そして彼は彼の「判断」の結果を自分で受け止めた。安全地帯に身を置きながら方言を撒き散らす「スーパーエンジニア達」と同列に語ることはできない。


ガラスマの運命

2011-10-26 06:58

あまり信用していない携帯電話販売ランキングだが、こんなことになっているらしい。

トップ10はグローバルブランドのiPhone、GALAXY、Xperiaのみで構成されるという、フィーチャーフォン全盛時代には考えられない結果となっている。

via: 携帯販売ランキング(10月10日~10月16日):iPhone販売合戦、開幕 海外勢モデルで埋まるトップ10 (1/4) - ITmedia +D モバイル

日本の携帯電話は世界一高機能だの、「おさいふケータイ、ワンセグ、絵文字がないケータイは売れない」など言っていた人間は、今頃どんな顔をしているのだろう。

アイフォーンは絵文字が使えず、おサイフケータイ、ワンセグ放送受信機も搭載されていない。  アイフォーンに買い替えると携帯メールのアドレスが変わってしまうことや、電池の持続力の  短さなども災いし、購入層はアップル製品の愛好者などにとどまっているもようだ。
 乾氏は「新しい提案のある製品だが、日本向けに手直しせず発売した点で市場を見誤っていた。 一定のヒットはしたが、戦後処理も必要な段階だ」とアイフォーン商戦を総括。携帯が電話と メール機能にとどまっていた欧米と異なり、「日本はすでにネット閲覧や音楽再生機能を盛り込んでいる。アイフォーンの新規性は薄い」と市場環境の相違を指摘した。

via: 【携帯】 iPhone、絵文字やワンセグなく「日本では敗戦」。ドコモは攻勢...スマートフォン戦線★2

調べてみたら、この「乾シニアアナリスト」は藤原某と噂になっているのだそうな。デタラメを公言しても、この勝ち方。いや、うらやましい(棒読み)

さて、最近広告と言えば電車の中でしか見ない私だが、国内家電メーカーが一生懸命宣伝をしているのは知っている。Android+日本独自機能のガラスマがなぜ売れないのだろう。不思議に思っていたのだが、先日ようやく答えを見つけた気がする。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:21:41.11 ID:VHGxCh3K0
俺「じゃあ早速ネットをやってみようかな。俺、結構ネットやるからよろしく頼むよ。」

れぐざ「は、はい!わかりました!!え、え~とブラウザ・・・ですね。」

俺「おう、頼むよ。」




俺「ねえ。」


俺「ねえ。」

俺「ねえ。」

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/10/23(日) 21:22:55.43 ID:VHGxCh3K0

れぐざ「うんしょ・・・うんしょ・・・」



俺「・・・・・何やってんの?」



れぐざ「あっ!す、すいません!!こ、これ、すっごく重くって・・・うんしょ!うんしょ!」





俺「・・・・。」


via: VIPPERな俺 : 「は、はじめましてっ!IS04ですっ!REGZAフォンと呼んでください!」

世界の東芝が、そのブランド名を冠した「Regzaフォン」でこの始末らしい。こりゃ勝負にならんわ。(ソーシャルメディアの反応を見ても「そのとおり」といったものばかり)

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1980-90年代を知る私としては、日本の家電メーカーの凋落ぶりには目を覆いたくなる。先日のCEATECでも4kとかいうTVがやたらと展示されていたが喜んでいるのはこの人だけだと思う。

麻倉氏: 昨年は"3D CEATEC"という形容ができましたが、今年はまさに"4K CEATEC"でしたね。東芝はIFAで発表した「55LZ2」の日本版といえる「55X3」を発表し、ソニーは米国の「CEDIA EXPO 2011」でお披露目した「VPL-VW1000ES」を国内でもリリースしました。また、シャープが2012年の発売を予定している「ICC 4K 液晶テレビ」を参考展示して、いずれの展示も人気が高かったようです。例えばソニーのシアターはいつも120分待ちでしたね。

via: 麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:4KはBDの感動を4倍以上にする? CEATEC総括 (1/2) - ITmedia +D LifeStyle

彼らはあくまでも「線を伸ばす」ことしかしないし、できないようだ。コンテンツもユーザも置き去りで、きっと社内では「他社との比較表」などが大手をふってまかり通っているのだろう。

まあいいか。白物家電は未だに便利だし。


光速を超えるのだ

2011-10-25 06:35

ニュートリノが光速を超えた、というニュースが読売新聞の一面に乗ったときは冗談かと思った。しかしそうした

「科学のセンセーショナルなニュース」

が必要以上に大きく取り上げられるのもいつものことなのだろう。
こうした報道の常として、後の「訂正」は全く取り上げられない。先日こんな記事を読んだ。

光速を超えたはずのニュートリノの進路に黄信号が三つ点灯しました。

まずは先週グローニンゲン大から出た論文 [ここ] で、実験解析のエラーの可能性が指摘されています。

実験では、732km離れた発射地点と観測地点の両方の時計を、GPSで合わせていました。上記論文の著者ヴァン・エルブルク博士によると、どうもOPERA実験チームの解析では、GPSを積んだ衛星の運動の相対論的効果のうちで「ローレンツ収縮」と「検出器の相対運動」を入れ忘れていたらしい。それを考慮すると、ちょうど64 ナノ秒だけニュートリノが遅く到着してる勘定になる、というのです。

via: ニュートリノ減速す - Researchmap

もちろん専門家が間違っていたということは、大いにありうるし、大きな転換点を迎えたときはそうしたエピソードが満ち溢れている。しかし今回のニュースに対する専門家のコメントは以下のものに代表されているのかもしれない。

----- それにしても査読を通る前の生煮えデータの段階で、もういきなり記者会見ですか。「無名のギリシャ人選手100mを6秒92、驚異の記録」みたいな感じだね。「ジャマイカ人」で「9秒19」とかにしとけばまだしもねえ。

via: 光速を超えるもの - Researchmap

いや、もちろんギリシャからそうした驚異的な世界新記録が出てきてもいいんだけどね。

私が知りたいのは、そうした段階で「記者会見」を行った人たちの意図だ。まあいろいろ事情があるのだろうけど。

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もう一つ「大きく発表、こっそり訂正」の例をあげておこう。

【帯広】通信大手ソフトバンク(東京)が、帯広市の帯広競馬場に建設する太陽光発電実験プラントの発電規模が、最大で100キロワット程度になることが7日分かった。同社は当初千キロワット程度を想定していたが、プラント設置にかかるコスト面などを考慮したための「下方修正」とみられる。<北海道新聞9月8日朝刊掲載>

そういえば、最近「風力発電で、原発と同じ電力をまかなえる」とかいう話を聞かないねえ。とはいえ

「原発なくても風力発電でまかなえるそうじゃない!」

という意見だけはそこかしこに拡散しているのだろうな。


DCExpo2011にいったよ

2011-10-24 06:32

というわけで、DCExpo2011にいった。久しぶりの科学未来館。あの日と同じような曇り空。あの日我々を閉めだしていた東京テレポートのシャッターはちゃんと開いている。

などという話はどうでもよい。まず展示を見る。いくつか面白いものがあったが、「もうちょっと考えなくちゃ」というものもある。

ステージでは球型飛行体が飛んでいる。基本的にはラジコンのヘリコプターなのだ、と思いながらもこのインパクトはなんだろう。そこらへんに展示されていた「脳波インタフェース」と組み合わせれば、想像を絶するようなデモができるに違いない。

しかし(これは開発者のせいでは全くないが)この球体が

このような全く新しいコンセプトの飛行機を実現するために、低コストかつ短期間で機体を製作し、実証手法を用いて球形飛行体に関わる原理検証を行いました。

via: 空も陸も自由自在!球形飛行体(10月20日~22日) | DIGITAL CONTENT EXPO 2011

原理検証にとどまっているのが日本の防衛技術の悲しいところだ。富士演習場や福島原発の回りを飛び回り、我々を助けて欲しいのだが。

などと考えながら見ることしばらく。今日の最大のお目当ては「VOCALOID3 × LiveAR」である。案内には5時からとなっているが、4時半には開場する、と言われる。

4時半に指定された「イノベーションホール」に行くと、正面に巨大なスクリーンがありニコ生が流れている。会場には椅子が一杯にならんでいる。こんなところでライブやるのか?

あまり前だとみえにくそうだから、3列目あたりに座る。すると

「ここは待機の場所です。前からつめてお座りください」と言われる。

最初は5時20分頃案内ということだったが、会場の準備に時間がかかっているとのことで移動したのはその後だと思う。(時計をみていなかったので時間はわからない)準備ができたころで、前から一列づつ会場に案内される。向かうのはさっき球型飛行体が飛んでいたステージである。

最前列の人はニコ生にうつるかも、と言われる。せっかく早くから並んだので一列目に座る。ただし一番はじのほうだ。

しばらくしてステージに二人でてくる。あれこれ説明をしてくれる。誰かこのAR試したい人、ということで最前列にいる女性が指名される。後ろのほうにいる人達にARマーカーをつけた棒が配られる。その棒をふると、女性の手に光があつまる(ただし正面に設置されたスクリーンの中では)という塩梅である。ちなみにこの女性は「仕込み」であり、のちには芸人の人と司会をしてくれることになる。

というわけで芸人の人登場。最初に説明をしていた人が、芸名を忘れたのでちょっとむっとしていたような、していなかったような。あれこれ説明やらなにやらあったあとにコンサート始まりである。

さて

このARコンサートというのは、会場にいる人間にとっては実にノリにくいイベントだ。ステージには誰もいないのである。正面スクリーンを見ると(ちょっと遅れて)ボーカロイドのキャラクターが踊っているのだが、現実には誰もいない。最初のほうで、ダンサーが二人でてきて「3人で」踊ってくれたところはまあよかった。しかしその後ボーカロイド二人で踊られても、会場は置き去りである。

さらに上方のスクリーンにはニコニコ生放送の様子が映し出されている。こちらのほうは楽しそうだ。だからそちらばかり見ていた。なんのためのライブ会場やら。

とはいっても見るべきものがなかったわけではない。一番感心したのはカメラの人だ。カメラにもARマーカーがついており、おそらくは位置を計算したうえで、ボーカロイドを合成しているのだろう。彼は一心不乱にステージ中央を撮影し続ける。しかしその先には何もいない。何かマーカーでもあるかとおもうがそれもない。(あるいは何が彼だけに見えるマーカーがあったのだろうか)

あと写している間、彼は体を左右にゆらしている。考えて見れば、ライブのカメラの画像は少しゆれている。ああ、こうやっていたのね。足腰が実につらそうだ。

というわけで、ニコ生の盛り上がりと、おいてきぼりの会場のままライブは終了。最後は終了したことがよくわからず、どこで拍手したらいいかもわからなかった。

というわけで興味深いイベントではあるが、また観客としていこうとは思わない。ARの道は遠い。


インタラクション2012

2011-10-21 07:18

インタラクション2011というシンポジウムの査読者が公開されている。

ここに掲載されている「各査読者」のコメントの多くは驚くほど似通っている。(そうでないものもあるがそれは後述)

とまあこのような「新しいものに期待する」査読者たちが揃っているのだが、そのフィルターを通してでてきた結果があんなにつまらないのはなぜだろう。いや、去年の登壇発表の話ですけどね。

自分が査読をしたり、その後に議論したりしていて痛感するのだが、やはり複数の査読者による査読プロセスというのは

「角を削る」

作業なのだ。何が「そうきたか」と思えるかは人によって実にまちまちだ。私が飛び上がるほど感動した論文に

「新規性がない」

で1点がつくことなどしょっちゅう。結局まんべんなく高得点を取るのは

「現在認識されている問題領域に、現在提案されている解決策の改良版を提案し、きっちり検証した物」

ということになる。そうした地道な努力は正当な評価を得るべきだと思うが、それだけではつまらん。そもそもその問題領域自体に疑問を抱いてしまう場合には状況はもっと悪くなる。

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そう考えると、未踏ソフトウェアの選考の仕組みというのは画期的だったと思う。複数の査読者の同意を得る必要はない。担当PM一人の支持を得ればそれでプロジェクトにGoがかかったのだ。

となると、シンポジウムの選考プロセスもそのようにしてはどうかと思うのだ。3−4名の査読者を指名し、それを公表する。選考は総意ではなく、一人でも「5点」をつければそれで通過とする。あるいは一人の査読者が1セッションをオーガナイズする。参加する方もメリハリがついておもしろかろう。

ちなみに今年はデモ発表も6Pの論文を書かなくてはならないそうだ。

また,限られた会場内で最大限質の高い発表を実現すべく,インタラクティブ発表においても査読を行い,かつプログラム委員の投票によってインタラクティブ論文賞を事前に決定します.これによって,「よい研究とは何か」,すなわち,インタラクション研究のあるべき姿は何か,についての活発な議論が起こることを期待しています.

via: インタラクション2012

考え方を率直に表明し、その上で論文を募る態度は実にすばらしいと思う。これに賛同できない人間は論文を出さなければいいのだ。他にも発表の機会はたくさんあるし。

論文を精緻に記載することで、その内容を未来に残す、という主張は理解できるが同意はできない。XeroxのALTOの論文を読んだ人はいるだろうか?大抵の人は論文など読まなくてもその結果について知っている。Smalltalk-80しかり。私は未だに論文を読んでいないが初めて自分がそれに触ったときの感動は記憶から消えることがない。東大五十嵐教授のTeddy, 空間キーフレームの論文を読んだことはないが、そのデモを最初に見たときの衝撃も記憶に鮮やかだ。

つまりこういうことだ。いかに精緻かつきれいな論文を書いたところで、その内容にインパクトがなければ誰もそれを読まない。読まれない論文は存在しないのと同じだ。

というわけで今年もインタラクションは観客として参加することになりそうだ。いや、自分が査読通る自信がないだけなんだけどね。


ベゾス@Amazon

2011-10-20 06:47

最近本といえばAmazonで買うことが多い。中古で十分なことが多いからだ。物理的実体を持った古本屋は楽しいが、いかんせん品揃えが少なすぎる。Amazonのマーケットプレイスではたいていの本が見つかる。

さて、そのAmazonのCEOだが、かなり面白い人物のようだ。

かつて幹部としてアマゾンに勤めた人物はある社外研修の場面を思い出して語った。数人のマネージャーが従業員はもっとお互いにコミュニケーションを取るべきだと提案したところ、ベゾス氏は立ち上がってこう力説した。「だめだ、コミュニケーションは最悪だ」

 ベゾス氏が求めていたのは権力分散型の企業、さらに言えば組織としてまとまりがない企業だった。1人1人のアイデアが集団思考より優先される企業を欲していたのだ。ベゾス氏は全社的なルールとして「two-pizza team(2枚のピザのチーム)」というコンセプトを打ち出した。つまり、どのチームも2枚のピザで食事が足りるくらいの人数に参加者をとどめなければならない、ということだ。

via: セールスマンの誕生―アマゾン創業の舞台裏 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com

私は対人恐怖症の人なので、大抵の会社に行くと「もっと同僚とコミュニケーションをはかりなさい」と言われる。前職での評価面談などその話ばかりだった。(営業担当の浮気話と性病について2時間聞かされる"宴会"がどうコミュニケーションに役立つのか最後まで理解できなかったが)

しかしこの力強い言葉はどうだろう。コミュニケーションは最悪。求めているのは

「1人1人のアイデアが集団思考より優先される企業」

いや楽しい。

私が実際に(間接的にだが)聞いた話はこうだ。Amazonのエンジニアはそこそこ高い給料がもらえる。しかしCEOから

"サイトに問題がある。Fix it now"

とメールが届けば何をしていても直ちに直さなくてはならんのだそうな。

思うに彼は全くの... Steve Jobs なのさ。ファッションデザインセンス抜きのね。 Bezos はとんでもなく頭が切れる。誤解しないで欲しい。彼の前じゃ、普通コントロールフリークなんてヤクが極まったヒッピーみたいなもんだよ。

via: Steve Yegge の Google とプラットフォームに関するぶっちゃけ話を訳した(前編)

面白いのは実際Amazonはこの方法で成功していることだ。その道程は平坦なものではなかったと聞く。しかし成功しているのだ!じゃあチームワークやらコミュニケーションやらCEOは社員の面倒を見なくてはならない、とか言っている山ほどある書物はなんなのだ、という話になる。

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こう想像する。ビジネス成功の鍵についてかかれた本は多い。そうした本は、成功事例から共通する要素を抽出しようとする。そして多くの場合似たり寄ったりの結論を導き出す。

しかし

おそらく成功への道はもっとバラエイティに富んでいるのだ。誰かAmazon、そしてAppleの成功から「教訓」を抜き出すべきだ。ほとんどのビジネス本は、CEOによるマイクロマネージメントを肯定しないだろう。しかしAppleとAmazonはそれ故(あるいは「それでも」かもしれないが)成功した。ではここから学べることはなんだろう?


モバゲイスターズの誕生

2011-10-19 06:29

プロ野球のファンで毎朝スポーツ新聞を買い、野球のほかに競馬や風俗記事に目を通し、タバコを吸いながら出勤。
家に帰れば民放TVをつけながらガラケーのキーをいじくり回し、メール、チャットにソーシャルゲーム。

こんな生活を送っている人が日本には何千万人もいるのだろうな。

尾花監督の発言について、現在球団売却先の有力候補として挙がっている携帯ゲームサイト「Mobagee(モバゲー)」の運営会社ディー・エヌ・エー(DNA)は、「野球であろうがキックベースであろうが特に問題にしない。リーグ順位も問題ではない。何より大事なのは無料と見せかけて、どれだけ有料課金で搾取できるかどうかだ」と、球団運営に無関心なまでの寛容さを見せた。

via: 「キックベースなら勝てる」 横浜・尾花監督

そう考えるとDeNAがプロ野球の球団を所有するというのは実に理にかなった行動であるということがわかる。どうですか。GREEもこの際広島あたり買収してみては。

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日本では10年以上、相交わることのない2種類のネットユーザーがいたのだ。ガラケーを使う大衆と、PC を使う情報強者だ。私は、当然後者に属していた。そして後者からは、ガラケー文化がどうしようもなく低俗に見えたのは否定しがたい。

日本では階級の断絶がことさらに意識されることは少ないが、この2つのネットの文化の断絶はそれに近かった。


via: 分断された日本のインターネット - elm200 のノマドで行こう!

私もおそらく後者に属しており、ガラケー文化を嫌悪している。これは仮にガラケーが死滅することがっても変わらない。つまりiPhone上で

「ドリランド」

をプレーする人間と、ドリランドの広告を見て

「TOKIOも大変だな。仕事とはいえ」

と思う人間だ。

私が作る怪しげなものは、基本的に自分が使うためにつくっている。だから自分が使っていて意義を感じられない、と思うものを作るのは信じがたいことでもある。だからそういう仕事を何年か続けていると半死半生の状態になる。(これは過去の痛い経験(複数形)から学んだことだが)

しかし

いまのテレビマンは、大衆向けに自分が制作した番組を見ているのだろうか?いまのソーシャルゲームの作り手は、大衆向けに自分が制作したゲームで遊んでいるのだろうか...?

"Eat your own dog food" のテスト(自分で作ったものを自分は欲しいか?)は、ほとんどの職業人がパスできないだろう。

via: 分断された日本のインターネット - elm200 のノマドで行こう!

それとは全く違う原理で物を作る人達がいる。麻薬を製造し、流通させる人たちと同じロジックだ。それを自分で使おうとは夢にも思わない。なぜ作るかといえば他人から金を得るための手段だから。

こう考えると

Eat your own dog foodというのはかなり重要な原理なのかもしれない。と気がついたところで今日はおしまい。


ソーシャルゲームについて

2011-10-18 06:40

電車にのると、GREEの広告が眼に入る。TOKIOとかいう人たちが何かの宣伝をしている。
芸能の人とは大変だ。自分がどんな文脈で使われるか自分で制御することができない。いつもそんなことを考える。

DeNAだのGREEだのに考える嫌悪感についてようやくこの文章をめぐり合った。

おそらくソーシャルゲームのもっとも適切な比較対象は、カルト宗教団体だろう。そこで構成員たちは、活発な社会的な交流の中で、独自の価値と動機付けの体系に従って行動している。あるいは、マルチ商法の集団とも比較することができるだろう。ある集団を支配する価値観を外部の人間が理解できないとき、外部の人間は「うさんくさい」と感じる。そういう意味でソーシャルゲームは非常に「うさんくさい」のだ。社会的反発はこういう部分から来ている。

via: 「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」理解するための一冊 - elm200 のノマドで行こう!

その中だけで「理解」されるロジックの階層を作り上げ、そここから収益を得る。まさしくカルト宗教だ。DeNAとGREEはカルト宗教の総本山ということか。

だが、最近ソーシャルゲーム会社の幹部の方たちに会い、かれらの優秀さと人柄の良さに感銘を受けた。意外なことに、彼らは意欲的に生き生きと自分の仕事に取り組んでいるように見えた。

via: 「ソーシャルゲームはなぜハマるのか」理解するための一冊 - elm200 のノマドで行こう!

カルト宗教の幹部の方達も実にイキイキと自分たちの「使命」に向かって生きている、と聞く。(あったことはないよ)「カルト」と言えば、丁寧な反論が帰ってくるだろう。

ソーシャルゲームが、いびつな構造を持つとすれば、消費者は「大衆」なのに、生産者は「情報強者」という点だ。ここでは、自ずから、消費者と生産者は非対称な形を取らざるを得ない。これは、いまや滅びつつあるマスコミと同じ形だ。ある意味、ソーシャルゲーム陣営こそ、マスコミの正当な後継者なのかもしれない。

via: 分断された日本のインターネット - elm200 のノマドで行こう!

このマスメディアと、ソーシャルゲームの比較も興味深い。マスメディアの作り手とは、基本的に受け取り手を馬鹿にしている。そうでなければ商売がなりたたないことを知ってる。おそらくはソーシャルゲームの作り手たちもそうなのだろう。

我が家からは(奥様を除いて)地上波TVが駆逐されつつある。とりあえず状況は少し改善されている、と信じたい。(小市民だから私にとっての「状況」はすぐ近くのできごとだけだ)


Google社員の今年のボーナスは

2011-10-17 06:31

なさそうだね。。(いや、どっかで"今年のGoogleのボーナスはSNSの成果次第"とかいう記事を見た記憶があるので)

Only 3 of the 12 people listed on the Google Management Team page have ever made a single public post on Google+, totaling just 29 posts ever and only 6 in September.

via: the understatement: Google's Management Doesn't Use Google+

Googleの経営幹部が、Google+をほとんど使っていないというのだ。この記事が書かれた時点では3名がアカウントすらもっていなかったとのこと。

Webサービスを成功させるためには、いくつもの要素と運が必要だが「自分たちで使いフィードバックを得る」というのはその必要な要素の一つではないだろうか。自分たちですら使わないサービスに碌なものはない。ティム・クックやSteve JobsがiPhoneを使っていない光景など想像できるだろうか?
(Gates家のiPod,iPhone禁止はやりすぎだと思うが)

でもってこの記事に対する反論、とそれに対する再反論からいくつか。。

3. "Steve Jobs was really active on Ping?"

Ok, fair enough. But a music social network isn't even remotely fundamental to Apple's future whereas clearly Google thinks Google+ is central to its future.

4. "Google+ is really popular!"

Yes, it seems to be off to a good start. But management being disconnected from the company's products bodes poorly for the long term - just ask HP.


via: the understatement: Google's Management Doesn't Use Google+

3.JobsはPing(まだ覚えている人いる?)でActiveではなかった:確かにそうだ。しかしPingと違い、Google+はGoogleの重要なサービスだと位置づけられている。(だから私が先ほど挙げたように、JobsがiPhoneを使っていないことがあり得るか?と比較するべきだ)

4.Google+はもう成功してるよ!:確かにそのとろい。しかし経営幹部が製品から切り離されていると、長期にわたっては失敗する確率が高い。

戦闘機メーカーの幹部が戦闘機を操縦するべきとまでは言わないし、経営幹部のF/Bが間違っていることもあるだろう。しかしGoogle+がGoogleによって使われないというのは明らかに問題を示している。Google+とGoogle社両方に関する問題を。

The trouble with Google+ is that there's no vision behind it. Instead, there's a feature list that someone tried to turn into a single, one-size-fits-all product. That's a recipe for failure, as Yegge bluntly argued:

via: Google engineer calls Google+ a "pathetic afterthought" and "knee-jerk reaction" | ZDNet

このような反応がGoogle社内からでてくるのは不思議ではない。

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しかしFacebook便利だねえ。最近昔の友だちが次々と見つかる。正月に高校の同期会があるのだが、Facebookのおかげで今からあれこれ会話して盛り上がることができそうだ。


サラリーマンとしてのSteve Jobs

2011-10-13 06:51

今頃お役所ないしはお役所企業では朝礼で(お役所企業だからそういうものがある)

「君たち。Steve Jobsを目指せ!Jobsのように独創的なアイディアをどんどん提案してほしい!」

とか言っている人がたくさんいるのではなかろうか。

いつかTVでみたのだが「造反の勧め」なる紙にかかれた何かがあり、お役所企業ほどそれを「奨励」しているとのこと。

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Steve Jobs、それに日本では織田信長の生涯を思うとき、この人達には絶対「サラリーマン」はできなかったのだなあと思う。生まれながらにして「最初からリーダー」以外できない人だったのだ。

考えてみてほしい。織田信長や、Steve Jobsが能力はないが、いばることだけは大得意の上司の元で働く姿が想像できるだろうか?

そういえば、以前働いていた会社の社長(親会社から片道飛行で落ちてきた人)は

"俺はBill GatesよりSteve Jobsになりたい"

とか言っていたなあ。社長、酸素欠乏症(以下略)

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でもってそのSteve Jobsだが、以下の言葉がぴったりくる人だったと思う。

私が接する機会があったSteve という人は、チャンスを感じたらすぐさま出来ることから手を付け、手段を選ばず、そして途方もなく粘り強く、最後まで絶対に諦めないでやり通す、といった感じの人でした。今までのやり方がダメだと思うと周囲が唖然とするほど平気でそれをかなぐり捨てました。「ビジョナリー」や「独創的」な人というより、手段を選ばないエキセントリックな人、といった趣でした。

via: まつひろのガレージライフ

「これはいける!」と彼の中でスイッチがはいると、あらゆる手段を使ってそれを「自分が満足できる高い水準」で形にする。そして製品化する。それをやることに類まれな才能と情熱を持った人ではなかったか。

このスイッチがはいる瞬間というのが、例えばPARCでGUIをみた瞬間だったり

おそらく最初にCREATIVE Labsの社長に会った時にSteveの頭の中にスイッチが入ったんでしょう。それともすでにFadell 氏にアプローチされ、すでにスイッチが入っていたのか... いずれにせよSteve は思ったことでしょう。今が市場に参入するべき時期で、アップルならどの会社よりもずっとうまくやれると。

via: まつひろのガレージライフ

だったりしたのだろう。

覚えている人はいるかどうかわからないが、iTunesは最初買収した他社のMP3 Playerをベースにした製品だった。とにかくTime to marketを重視した結果だと思うが。

そして初めてiPodにビデオ再生能力がついたとき、Jobsはプレゼンで

「動画再生昨日はボーナスだ」

と繰り返し述べていた。その様子からして彼自身iPodに動画再生機能が必要ではないと思っていたのだと思う。しかし今やiPod touch,(iPhone)には動画再生機能が不可欠だ。

iPodはやがて Firewire を捨ててUSBをサポートし、ウィンドウズのサポートを開始し、カラー化を果たし、動画の再生やPodcastをサポートし始め、やがて iTunes ストアが出来上がりました。これらひとつひとつが本当に一歩ずつなんです。まずはiPodが売れて、じゃあ次はウィンドウズの客に売れないかな?って感じでした。現実的なステップを一歩ずつ確実にモノにしていく。それがアップルのやり方ですし、Steve 自身のアプローチだと思います。

via: まつひろのガレージライフ


思えば、Appleを追放されたときのJobsと復帰した後のJobsで変わったのはこの

「現実的なステップを一歩ずつ確実にモノにしていく」

点だと思う。Macintoshがあれほど革新的な製品でありながら、Appleの経営が傾いてしまったのは、一つにはこの「一歩ずつ確実に」ができなかったからではなかろうか。

復帰後のJobsも依然として独善的な人ではあっただろう。しかし現実からのフィードバックを取り入れることを学んでいたのではなかろうか。

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もう一つAppleにしかできないこと、はその異常なソフトウェア開発能力である。以前書いたことだが

OSに何が使うかの検討がはじまってから1年ちょっとでMac World Expoでデモ。その間にOS Xをスリム化し、Core Foundation以外の部分を全て作り直している。またGUI部品もタッチパネルを用いた携帯電話向けに全て作り直し(ここでの作り直し、というのは「製造」ではなくて「デザイン」からのそれである)その半年後に商品として消費者の手に届けている。

via: ごんざれふ

こんなスピードで携帯情報機器用のOSを作る(ベースとなるOS Xが存在しているにしてもだ)ことができる会社が他にあるだろうか?もちろんMicrosoft,Googleには可能だと思うが日本の会社には逆立ちしても無理だと思う。

その力の源は

そしてこのアップルという組織は、世界中から才能を集める吸引装置のような役割を果たしています。アップルで働いていると、「人生の中でこんなに頭のいいヤツには会ったことがないぞ」と思わせてくれる人々に次々と遭遇することができます。また「こんなにアクが強いヤツにも会ったことないな」と思わせてくれるご仁も沢山います。あるいは「お前は個性的って言う以外は別に取り柄がないな」という人も山ほどいます。何かが秀でている代わりに何かが著しく欠けているような方も沢山います。アップル以外ではまったく通用しないであろうほど常識に欠けている方々とか...こうして書いていて思い出す面々はどの人も実に個性的です。

via: まつひろのガレージライフ

というところからくるのではあるまいか。引用記事にあるとおり、社内政治にその力を浪費してしまう点もあるだろう。しかし「畏怖の対象となる」CEOをおくことにによりそれら

「アップル以外ではまったく通用しないであろうほど常識に欠けている方々」

の力を束ねることでしか、こういう無茶苦茶な開発はできないのではなかろうか。

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こう考えてみると、日本の会社が「AppleをSteve Jobsを目指せ」なんてのは、ラグビーのW杯で優勝を目指すほどバカげているように思えてくる。所詮生まれながらの体格とか違うんだからさ。

別にラグビーのW杯ばかりがスポーツじゃない。柔道だって、水泳だって、体操だってサッカーだって日本は立派に戦っている。現実から学ぶのはいいことだが、「それになれ」ってのは戯言のたぐいだ。


Androidケータイにアプリをインストールするのは情弱

2011-10-12 06:33

誰も読んでいないからといってつり気味の題名を書いてはいけません。

しかし現実の危険は冗談で済まされるものではないようだ。

app.tvではアカウント登録時にプライバシーポリシーおよび利用規約に明示的に同意を得たユーザーに対して、アプリ情報などを取得・送信していたが、開発過程の瑕疵によりアカウント登録前の時点で情報送信が開始される誤作動があったと説明。

via: Android端末情報を許諾なしに取得・送信、ミログ「app.tv」がサービス停止 -INTERNET Watch

このミログ社の「説明」に対する批判は、こちらをみていただくとして問題はこのようなアプリケーションが堂々と流通している、という事実である。この企業も、Applog SDKが問題視されるまでは、大手をふってビジネスをしていたのだ。

KDDIは、auのAndroid搭載スマートフォンでご利用いただけるアプリケーションを集めたアプリマーケット「au one Market」と、株式会社ミログ (本社: 東京都大田区、代表取締役社長: 城口 洋平、以下、ミログ) が提供する、「AndFriends (アンドフレンズ)」(β版) を2010年12月8日 (木) より連携します。

via: 〈お知らせ〉 「au one Market」と「AndFriends」の連携について | 2010年 | KDDI株式会社

(本リリースは、ミログ社のサイトからは削除されている)

昨日見たTweetの中でこんなものがあった。

ある種の職についている人はAndroid持つの禁止になると思う。 結構マジで。

via: Takashi Matsumoto (F0ro) は Twitter を利用しています

仮に会社がAndroidケータイを貸与しているとすれば、それはかなり愚かな行為だと思う。そういうところは会社がユーザアカウントを管理するのかな?でもって「システム部門」がインストールしてよいアプリを審査するとか。

このように「まずいアプリ」がリストアップされたり、他にもリストはあるが、ほとんどの人はこのような情報も見ないだろうし。

WWDC2007に出席したとき

「Androidにはマルチタスクがあるのに、iPhoneにはなぜないかって(当時はそうだったのだ)Androidはタスクマネージャーを使わないとタスクの管理ができない。何を停止させてよくて何を停止させちゃいけないかなんて、ケータイ使う人にコンピュータサイエンスの学位を要求するつもりか(場内笑)」

という場面があった。しかし現実はまさにそのようになっている。おそらくAndroidの開発者ですら、何が危険なアプリで何がそうではないか区別ができないと思う。

怪しげなアプリをいれるから、そんな目に会うだって?このプレスリリースをみて「怪しい」と判断できる人はすごいと思う。

■アニメ・ドラマのタイトル型アプリをAndroid Market™で配信

 フォアキャスト社とミログ社とアニメ・ドラマをタイトル毎でアプリ化して提供する配信プラットフォーム「app.tv」を共同開発しました。日本テレビのコンテンツなど10社以上のコンテンツホルダーも参画し、42アプリの提供を開始します。今後はテレビ局、コンテンツホルダーとも連携し、年内に300アプリの提供を予定しています。

via: 株式会社ミログ | ニュース | 日本テレビグループ と「app.tv(アップティービー)」を共同開発。

ほら。日テレグループも共同開発だよ!ちゃんとしたアプリじゃなきゃ、日テレのコンテンツ配信できるわけないじゃないか!

Androidケータイ持ってて気軽にアプリをインストールできる人はすごい。私にはとてもできない。

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今後はどうなるのか?私の姪たちがこのような事実を知ることはないだろう。だから、彼女たちは相変わらずのんきに使い続ける。NTT Docomo様も相変わらずAndroidを強力に推進するようだし。

少しでもこういう状況に気がついた人は、他のP/Fに逃げる。でもってAndroidを使っている人は、情弱定食としていいように情報を使われ続ける。。ああなんてソーシャルゲーム市場と親和性がいいんだ。そのうちGree Phoneとかモバゲーフォンとかが発売されるとしたら間違いなくP/FはAndroidだろうし。


悠長な災害情報システム

2011-10-11 06:33

金曜日はCEATECにいってきた。びっくりするほど人が少なかった。その割には、ところどころ50分まちの行列とかできている。なんだこれは。

NTT-Docomoで、Twitterを使った災害時の情報システムが展示されていた。話を聞けば

「RTされても、それが取り消されたり、訂正の言葉が流されれば元のTweetの信頼性を下げるようにしています。これで3−4時間後には信頼度の高いTweetを表示できます!」

とのこと。
今年にはいってから2度帰宅難民になっている男としてはからまずにいられない。そんなに悠長なシステムが何の役に立つのですか?すると相手は

「いや、これはたまたま3時間に設定しているだけで15分でもいいのです」

とか

「リテラシーの高い人は自分で情報を選別できますが、リテラシーの低い人はそれができません」

とかとにかく立派に説明をする。

少し前、某学会でもこういう発表をみた。それをやっているのは京大の学生さんで、まあ震災も経験していないだろうから、と聞き流した。

そこで説明している人に聞いてみる

「震災の時どこにいましたか?」

聞けば、会社にいたという。じゃあそのときに3−4時間後に情報がでてなにかの役に立ちますか?というとさすがに相手はだまった(答えるのが面倒になっただけかもしれんが)
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何度か主張しているが誰にも賛同してもらえないアイディアだが、こういう災害情報システムは、普段から用意しておくことが必要ではなかろうか。

例えばこんなことをやる。

・デマと分かっている情報をRTしたアカウントを抽出する
・「拡散希望」と書いていあるTweetをRTしたアカウントを抽出する。
・そのアカウントをフォローしているアカウントを抽出する

これだけでかなり「アカウントの信頼度分布」が計算できると思うのだ。(問題は「拡散希望」をネタでRTする人だが)そうやって普段からアカウントの信頼度を計算した上で、災害時に信頼度のフィルタをかける、というのならまだわかる。

ただ話はもっと複雑だ。こうやって静的にTweetをしぼってしまうより、とにかくわらわらたくさんみせてくれた方が助かることもある。先日の台風では、電車の路線ごとにTweetをリアルタイム表示してくれるサイトがとても役にたった。もちろん間違いもあるのだが、それは多数のTweetをみていれば、こちらがフィルタリングすることができる。

「横須賀線動き始めました」とTweetした人が、「超拡散希望」RTの常連者であってもそれは何の問題もない。実際に駅にいるのであれば、デマが交じる余地は少ないからだ。かくのごとく人間というものはややこしい。
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しかしここで直面しているのはもっと深刻な問題だ。

「自分の経験から役に立たないと分かっているシステムの研究をなぜやるのか?」

もちろん社命であればなんでもやるんだけどね。


Steve Jobsはダメな奴だった

2011-10-07 06:57

昨日からブログを読めば「LCからの付き合い」だの「初めてIIsiに触ったときの」とか全く最近の若いものはなっておらん。私なぞ1984年から(という年寄りの戯言はこちらに書いてあります)

私がSteve Jobsという人間の存在を意識しだしたのは、1989年ではないかと思う。当時の上司の勧めで「スカリー」という本を読んだ。



スカリーとは誰か?当時JobsはAppleにいなかった。代わりにAppleを率いていたのはジョン・スカリーだったのだ。NextでJobsはがんばっちゃいたが、全然うれていなかった。Appleを21世紀までひっぱっていくのはスカリーだ。そう思っていた。

この本は、スカリーの自伝だからSteve Jobsのことはダメダメに書いている。曰くサーバー製品の開発がなかなか進まないので、事情を調べた。どうもジョブスはサーバーがソフトウェア主体の製品であることが理解できていないようだ。他にもダメダメなエピソードがいくつかあったが忘れた。

その後私はアメリカで2年暮らした。友達が遊びに来たのでSan Fransiscoを案内した。その時たまたまどこかのコンベンションセンターで

"Next World"

というイベントをやっていた。ほら。ちょっと前までMac Worldってあったでしょ?それのNext版。

人はだれもいない。ふと友達が言った。

「Jobsだ」

みれば、どこかで見たような人がいる。それまで見た写真では髪フサフサ、髭全くなしだったのだが、この時のJobsは髭が生えていたように記憶している。友達は「サインでももらおうか」といったが、私は「いいよ」とその場を後にした。今更地団駄踏んでくやしがっても遅い。

さて、日本に帰ってきてしばらくたった頃、スカリーは誇らしげにNewtonをアナウンスした。これはすごい。ハード製造も切り離して、これが新しいビジネススタイルだ。しかし日本語版は「水泳ができるころにリリースします」と言われたきりいつまでもでてこない。そのうちスカリーはスピンドラーにとって変わられた。

そのスピンドラーもいつしかアメリオにとって代わられ。。そして米国の雑誌では

「Appleはどこに買収されるべきか?」

などというコラムが載っていた。IBMに買収された場合、Motorolaに買収された場合、それにSonyに買収された場合。そうだよなあ。SonyがAppleを買収してくれないかなあとその時は真剣に考えたものである。

さて、JobsがAppleに戻り、あれこれの変化が起こり始めた。互換機路線をスクラップにした。私はこれに激怒した。魅力的なハードをつくろうと思えば、互換機を認めるしかないじゃないか。(当時は真面目にそう考えていた)

次にiMacを発表した。これは気に入った。しかしなんでLocaltalkのコネクタまで削除するかな。あれがあれば今のMacからデータ移すの簡単なのに。(当時Ethernetは金のかかるオプション品だったのだ)これだからJobsは、、とそう考えていた。

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当時のJobsはいやな奴で、ダメな奴だったのは間違いないと思う。一緒に働いたことのある人の記事を読むとそうとしか思えない。

スティーブの下で仕事をしてみて一番最初に思ったのは「ああ、本で書かれている通りの人だ」というものです。

本読んでいた時はさすがにそこまでひどくないだろ、と思ったんですが、本当にその通りの人でした。

via: 追悼 Steve Jobs - [モ]Modern Syntax

そんな折、まさかの Steve Jobs 復帰。

社内の様子は一変しました。最初は熱狂としかいいようのない興奮で迎えられたSteveでしたが、ごく短期間の間にその熱狂は「恐怖」とでもいうような感情によって置き換えられました。

via: Steve Jobs の思い出 | まつひろのガレージライフ

そしておそらくは最後までいやな奴でダメな奴だったのではなかろうか。

我々はともすれば、「偉人」=「人格の立派な人間」と思いがちである。思うに少年少女向けの偉人伝がそうさせているのではなかろうか。

しかしそんなことは全くない。いやな奴でダメな奴がどれだけ世の中の方向を変えたか。SteveJobsという人間がいたことで何が起こったか。リアルタイムで体験できたことは全くの幸運だった。

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Steve Jobsは

「個人が存在することで、どれだけの変化が起こりうるか?」

を身を持って証明した。

Steve Jobsが存在しない世の中を考えてみよう。

・未だに我々はメインフレームのCUI端末を前にしていたかもしれない。
・携帯電話は二つ折のままだったかもしれない。そしてゴミのようなサービスの対価としてキャリアに300円ずつ払っていたかもしれない。
・音楽のダウンロードサービスは存在したかもしれない。しかし一曲1000円で一回再生するごとに50円課金されたかもしれない。

冗談ではなく、本当にそうだったかもしれないのだ。Jobsがこれらの変化を成し遂げた、というのは間違ったものの言い方だ。しかし「Jobsがいなければこれらの変化は起こらなかった」と思うことはそう的外れではないかもしれない。

ではこう考えてみよう。

Jobsがすい臓ガンにかからなければどうなったか?

2005年のスピーチで

「あと何十年かは死に直面しないことを願う」

といっていることから、その当時はまだ何十年かは生きるつもりだったのだろう。例えば65歳まで、9年間AppleのCEOを務めたとしよう。

今までと変わらないペースでものすごい新製品を創り上げたかもしれない。あるいはどこかの時点で、Apple最大の資産が負債になったかもしれない。人間の運命というのはわからないものだ。

しかし

すい臓がんににかかり、死に直面する、という体験がなければあのstanfordでのスピーチはなかったに違いないと思うのだ。

そして、例えば私の子供の代になったとき、そこに存在しているテクノロジーはあたかも

「必然があって登場した」

と子どもが考えても私は驚かない。私たちは歴史を見るとき、常にそれは「必然であった」と解釈しようとする。Steve Jobsがいなくてもパーソナルコンピュータは生まれ、GUIが普及し、スマートフォンが今のような形になっていたと(iPhone登場前に、Smart phoneといえば、どのようなものだったか覚えている人はいるだろうか?)論じられるだろう。逆に過度に神格化されているかもしれない。どちらにしても私の感覚とはずれていくだろう。

しかし

あのスピーチが意味するところ、言葉の力は私の子供にも等しく伝わって欲しいと願っている。時代が、文化が少しずつ移り変わっていってもあのスピーチが持つ意味は変わらない。そしてこれはまさしく、Steve Jobsという個人が発した言葉である。

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Jobsのプレゼンには学ぶ点が多い。iPhone発表時の2007年Mac World Expoのそれはすばらしい。しかし私にとって一番印象深いのはWWDC2005でIntel Chipへの移行を宣言した際のプレゼンである。

理由を述べよう。新しい製品を出すことは基本的によいニュースだ。つまりHome field advantageがある状態。しかしこのIntel Chipへの移行は

「これまでPower PC > Intel といってきたことの誤りを認め、負けを認める」

といった内容だったのだ。完全にAway, 2chの言葉を借りれば「玉音放送」だったのだ。

しかしこのプレゼンを見た後では

「Intel への移行、いいじゃないか。これでMacはもっとよくなる」

と単純に信じることができた。これがJobsの持つ「現実歪曲空間」というものだと思い知らされたプレゼンでもある。

死を望む者はいない。天国へ行くことを望む人でさえ、そのために死にたいとは思わない。それでもなお死は我々すべてが共有する運命だ。それを免れた者はい ない。そしてそうあるべきなのだ。なぜなら死はほぼ間違いなく生命による最高の発明だからだ。死は生命に変化をもたらす主体だ。古き物を消し去り新しき物に道を確保する。現在は皆が新しき物だが、いつかそう遠くない将来皆は徐々に古き物になり消し去られる。芝居がかった表現で申し訳ないが正に真実だ。

via: スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での卒業式スピーチ - himazu archive 2.0

古いものは死に、新しいものが生まれる。生きている私たちは新しいものを作り続ける。そしていつか退場することになる。その時には皇帝の言葉を思い出そう。

それゆえ、なんらかの瞬間を人生の目的と考えてはならない。過ぎ去った巨大な深淵のごとき時を振り返り、無限に続く未来に思いを馳せるとき、人生が三日しか続かなかろうが、三世代にわたって続こうが、少しも差はないと知るだろう。

運命によってわれわれに割り当てられたこれらの瞬間、瞬間を正しく認識し、満足をもって世界を眺めよう。熟したオリーブの実が枝から自然に離れて地に落ちるときのように、われわれを育んだ土壌を、木を讃えようではないか。

-マルクス・アウレウス・アントニヌス 自省録

via: スティーブ・ジョブズの逝去に関するApple取締役会の声明

iPhone4Sについて

2011-10-06 07:20

いや、楽しい。

外野のいろんな観測はさておいて、iPhone4のデザインがそのままだったことに少し安堵感を覚えている。

iPhone4を最初に見たとき「これ以上どこを進化させると言うのか」と思った。アンテナ問題などはあったが、それでも実に美しくミニマルなデザインだったと思う。3Gと比べてみればそれがよくわかる。また初代iPhoneが登場したときに存在していた

「ああ、ここが直れば。。」

という点はあらかた解消されていた。処理はもたつくことなく、マルチタスクも導入された。Flashは死んでいるからもういいや。

そのデザイン、機能を一年で捨ててしまうのはもったいない。少なくともあと一年弱はあの美しいデザインのiPhoneを見ることができるわけだ。

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さて、というわけで「今回の目玉」Siriである。Engadgetによれば、元はDARAPAのプロジェクトだったのだそうな。

Siri はもともと DARPA が CALO という名前で進めていたエージェント開発プロジェクトの成果(のひとつ)で、同名の企業のもとでベンチャー化され、1年半ほどまえにアップルが企業ごと買収していました。

via: iPhone 4S は音声エージェント Siri 搭載、アプリ版は終了 -- Engadget Japanese

日本語に対応していないから、我々が日本で試すのは先になる(そもそもそんな日はこないかもしれない)しかしこの新しいインタフェースがどのような評価を受けるかには興味がある。

音声インタフェースの良い点は、キーボードを打つ手間がいらないことだ。逆の問題はユーザが何ができるかわからないことだ。現実世界の音声認識というのは、人間のそれとは遠く隔たっている。つまるところ、システムが用意した質問しか認識できないのだ。Siriはそれにある程度のファジーさを許容するようになっているが、それだけである。あるサイトには、認識されたフレーズの一覧が載っている。(以下に引用したのは一部)

Address Book

Querying Contacts

Finding Contacts

via: iPhone 4S: What can you say to Siri? | TUAW - The Unofficial Apple Weblog

Appleがやることなので「ボタンを押せば、問い合わせ可能なフレーズの一覧を出す」といったこともちゃんとやっている。実際に使われている場面のプロモーションビデオも真面目につくっている。

しかしこのインタフェースがどの程度普及するかはよくわからない。そもそもSiriは単独のアプリケーションとして配布されていた。もちろんそれに改良は加えられているのだろうが、元のアプリはそれほど話題になっていなかったように思う。

この機能をきっかっけにして「音声インタフェースがいつまでも普及しないのは何故か」についてより多くの人が考えてくれるといいのだが。


20%ルールを機能させるために

2011-10-05 06:41

クリエイティビティを加速させるために就業時間の20%は好きな物を作っていい!とはよく聞くところ。そしてそれが全く機能しないのもいつものことだ。

じゃあどうすればいいのか?私の観察によれば結局は人の指向なのだと思う。

―― プロレタリアート的なものと、1人で前衛的なものを作ることは、割とニアリーイコールですよね。でもそれに反駁して、商業主義というか、みんなが喜ぶ娯楽を作りたいんだという方々が、虫プロに集まった。これは次元の高い/低いではなく、志向の問題ですね。

 手塚先生はある種、前衛的なアートをやろうとしていたけれど、肝心のスタッフは前述の理由でわざわざ移籍してきた集団なので、「そんなこと言われても、僕たち困るよ」という反応になってしまう、と。

via: ASCII.jp:アニメ業界は手塚治虫から何を学べるか?|まつもとあつしの「メディア維新を行く」

手塚治虫は、虫プロで、そうした前衛的な個人製作を奨励したが、誰も作れなかったと。

ただ、間違いないのは、虫プロの設立に関わった人たちの多くが、東映動画に在籍していたわけです。その人たちは、非常に際立った特徴を持っていた。当時、東映で始まった組合活動が嫌でしょうがなくて移籍した人たちなんですよ。逆に、組合活動大好きなのが、宮崎駿さん、高畑勲さん、そして大塚康生さんだったりする

via: ASCII.jp:アニメ業界は手塚治虫から何を学べるか?|まつもとあつしの「メディア維新を行く」

そうした人たちは労働運動が大嫌いで逃げてきた人たち。逆に労働運動大好きだったのが今をときめく宮崎その他なのだそうな。

私は労働運動に何の関心もないが、物を作らないと窒息しそうになる。だからここのロジックには賛成できないが、言わんとしている点には同意だ。つまり20%ルールがあろうがなかろうが、作る人間は作るし、作らない人間は作らない。もしあなたが会社の管理職で

「なぜうちの社員は、20%ルールがあるのに新しく物を作らないんだろう」

と悩んでいるとすれば、多分物を作らない人間ばかり採用しているからだと思う。
そもそもこの「勝手な物を作る」というのは正しいサラリーマン像とは相容れないものだ。回りの意見に関わらず、
「これがいい」
と主張し、回りが集団で何かを作っているときに
「俺は之を作る」
と勝手に創りだす。ほら、いやなやつでしょ。採用したくなくなるでしょ。でもそういう人間でなければ勝手に新しい物なんかつくらないんだよ。

このように

「殺虫剤を巻きながら、"うちの庭にはスズムシやコオロギがこない"と嘆く」

姿勢というのはまあ会社のお約束なのだが、「制度」を作ればこうした「創造性が花開く」と思い込む姿勢にはいささか興味を覚える。


自由なAndroidバンザイ!

2011-10-04 06:37

Twitterのフォロー数をどんどん減らしてから、精神衛生がだいぶ向上した。Twitterのログを見ていると、2chというのは実はとても理性的で面白い場所なのだなあと思えてくる。
というわけで、Twitterのログを引用するのは気がひけるのだが、言いたいことを端的に表しているので引用。

というか、インターネットとかオープンソースとかそういうタダなものを使っているくせに文句を言う奴は、全員、インターネットから出てけ、OSS使うなと言いたい。
»
Naoki Shibata
AppLogに文句を言う奴が多くて が可哀想。リスクとって新しいことやろうとしてる人を叩きすぎ。嫌ならAppLogにパーミッションあげなきゃいいし、まだ不満ならGoogleに文句言えばいいし、それでも納得できないならandroid買うなと言いたし。

via: Naoki Shibata (shibataism) は Twitter を利用しています

まあこういうメンタリティの人はどこにでもいるし、言っていることに突込みどころは満載だが、現実に起こっている問題には無視できない危険性がある。今朝みたDocomoのポスターにはこうあった(意訳)

・Docomoは日本で一番スマートフォンを多く売っているキャリアです
・Androidは世界で一番多く使われているスマートフォンのプラットフォームです。

私の姪も嬉々としてAndroidスマートフォンを使っているのだが、それを作っている人たちの根本的なメンタリティは上記の引用に端的に示されている。

カレログというストーカーアプリも上記引用の元になった

Applogというユーザーの情報をぶっこぬいて送信するライブラリをアプリ開発者にばら撒いて報酬を支払ってくれる会社があるようです。

via: Applogがあなたの端末にインストールされてないかどうか調べるツールを作りました。:村上福之の「ネットとケータイと俺様」:ITmedia オルタナティブ・ブログ

というライブラリも大手を振って公開され、ダウンロードされているのだ。そしてそれに対して文句をいう人は

「インターネットから出て行け」

といわれておしまい。いや、自由は素晴らしい。
こういう状況を見ると、(私がApple原理主義者であることを差し引いても)Androidを使った端末でアプリをインストールする勇気はでてこなくなるのだが、、みんなそんなことは気にしていないんだろうね。

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というかAndroidはどこに進むのかな?本来Linuxのように

「自分が何をしているか把握できるひとだけが使う」

システムであるべきが、いつのまにか「無料で使えるOS」としてやたらばらまかれるようになってしまった。

Gomola(Google + Motorola)が垂直統合し、管理をきちんとして再生の道を歩むのか、今まで通り情弱定食の無法地帯として存在していくのか。Androidを使う気が全くない私でも少し気になる。


AmazonのSilk

2011-10-03 06:59

考えてみればAmazonというのは面白い企業だ。物販で収益をあげるためには、大規模な倉庫とデリバリーシステムが必要。じゃあ最適化された流通業かといえば、EC2のようなサービスを影響したりする。推薦エンジンで真っ先に名前が挙がるのも相変わらずAmazonだ。

でもって先日発表されたKindle Fireについてその価格ばかりが話題になっているが、Silkというブラウザも非常に興味深いようだ。

However, when Silk is run in cloud mode, it can off-load some of the the parts of the browsing and rendering process to EC2. In cloud mode, EC2 acts as a sort of cache plus proxy for browsing, and it also can dynamically take over parts of the page rendering pipeline from the client. Let's look at each of these features in turn.

via: Cloudline | Blog

誰がなんと言おうと、ブラウザ上で表示される"アプリ"はネイティブアプリより遅い。いろいろな理由が挙げられると思うが、一つはブラウザ上のアプリは

「インタープリタ」

であることが重要な理由だろう。結局端末上でHTMLだのJavascriptだの送られてきたものを解釈して実行しているわけだ。しかし端末上の処理能力には限界がある。特に携帯情報端末では。

でもってこのSilkという仕組ではEC2サーバーが、動的にキャッシュを行ったり、ページレンダリングを行うらしい。特に表示対象となるページが既にEC2上でホストされている場合には、非常に高速かつ容易にそのページをサーバー側でレンダリングして端末側に渡すことが可能になる。

引用した記事によれば、Opera miniは既にこのようにサーバー側で一部の処理を行っているらしいのだが、Silkはそれを動的に変更できる点が違うと。

実際にどの程度効果があるかは、使用してみないとわからない。しかし興味深い方向性であることは間違いない。次の意見にも全く同意だ。

Right now, the only company that could conceivably match Silk is Google--there's no way Apple will get anything like this off the ground in the next two years. So the ball is in Google's court to get Chrome up-to-speed, assuming that the search giant wants to do this big of a fundamental rethink of its flagship client app.

via: Cloudline | Blog

未だにサーバーサイドのサービスで実績をだしたことのないAppleには到底真似のできない技術だ。逆にサーバー命のGoogleにしてみれば

「なんでGoogleがこのサービスを作っていないんだ」

と地団駄踏む様な話かもしれない。あるいは「いやー、あれはうまくいかないんだよ」と実際のデータを元にのんびりしているかもしれない。

というわけで実際にSilkがどの程度効果を持つかについては、Stay Tunedというところであろうか。