Take the Red pill

2016-04-28 07:17

現実に対峙するというのは難しい。特に名乗るときに、会社名をその一部としているような人には。

Teslaの新型に対する予約がすごいペースのようだ。

ゴーン社長は、リーフ発売からほぼ半年後に当たる11年6月、16年度までに仏ルノーと合わせEVを累計150万台販売するとぶち上げた(もう誰も覚えていないだろうが)。目標と現実との乖離(かいり)はあまりに大きいが、累計150万台はテスラの方が先に到達しそうな勢いでもある。

 モデル3の好調な受注を目の当たりにして、日産の中からは「尖ったデザインを採用するなど、個性的なEVの商品化を検討した方がいいのかもしれない」(日産首脳)という声さえ漏れる。

引用元:テスラと日産、売れ行きの差に見るEV市場 (3ページ目):日経ビジネスオンライン

そもそもその「好調なモデル3」はまだ完成版が存在してすらいない。なのに今や電気自動車の先駆者日産や、GMは忘れられたも同然である。私が日産の人間なら

「テスラなんてクソだ。電気自動車に関しては日産には素晴らしい技術と実績がある」

と力説し、そしてよくて冷笑を受け取る。ほとんどの場合無視される。

話を少しそらす。

元三菱重工の社長、相川君がこんなことを言っているようだ。

「買う方もね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ」
「実際に乗っとる人はそんなに騒いでないと思うんだけどね」

引用元:「燃費なんて誰も気にしていない」“三菱グループの天皇”が放言 不正問題への取材で  | デイリー新潮

相川君はどこかドナルド・トランプに似ている。一見無責任な放言をしているようでありながら、その言葉には建前を超越した現実が見え隠れする。真面目な日産の人にはむづかしいことだが、いい加減現実を見た方がいいと思うのだ。

燃費やら、環境にいいやら、とかいう理由で車を選ぶ人間なんて、一人もいない。

ディカプリオがCMでそんな戯言を言っていたが、彼が気にしているのは地球環境ではない。「こんなに環境に気を使う俺ってスゲー!」である。

Teslaがなぜ売れるか?それはTeslaだから。何か新しく、すごいものだから。そして買う人間は「なんかすごい車に乗っている俺スゲー!」と言いたいのだ。地球環境がどうだとかどうだっていいんだよ。「個性的な車を検討したほうがいいのでは」とか寝言を言っている場合じゃない、、というか寝言しか言えないから日産で偉くなれたんだろうけど。そしてそういう妄想の世界に生きている人たちはこんな現実を見つめることもできない。

これに対し、日本勢に限らず自動車メーカーはごく最近まで、自動走行システム作りに消極的だった。理由は明快。自動走行システムは、事故や渋滞を減らす半面、壊れない車を増やすことになり、自動車の買い替え需要を減少させかねないからだ。

引用元:「次世代車開発競争」このままではニッポン敗北の予感… 30兆円規模の市場を作るというけれど (現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

どっかの先生が言っていたが、国内の新車販売台数と、国内の自動車事故の件数はほぼ等しい。つまり自動車産業というのは自動車事故なしにはなりたたない産業なのだ。それゆえ彼らは自動車事故を減少させる技術革新には反対する。

何度も書いたことだが、私は既存の自動車会社が大嫌いだ。私の脳が活動を停止するまでに彼らが床の上のゴミのようにこの世から一掃されるところを見たいと思っている。



なぜ出血を止めないのか

2016-04-27 07:10

最近シャープは「将来を考えた画期的な新製品」の発表に忙しい。破産の瀬戸際にあり、他に買収してもらわなければならない企業が行うことだろうか?という疑問が頭に残り続ける。

シャープは完全に機能を喪失しているから止められないのはわかるとして、理解できないのはテリー・ゴウがなぜこうした愚行をやめさせないのか、ということだ。

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話は突然変わる。最近読んでいるリーマン・ショック・コンフィデンシャルである。破綻の瀬戸際にあるリーマンを英国のバークレイズが買収するという案が持ち上がる。米国の金融機関が共同で支援する,あとはバークレイズがうん、と言えばリーマンは救われるとなったところで

「いやー、検討しなくちゃいけないことがたくさんあるから」

と英国政府がストップをかける。そこを読むと

「いやー、歩兵師団がこないと前進できなんですよねー」

と休憩していた英国機甲師団を思い出す。数km先では同じ英国空挺第一師団がドイツにコテンパンにやられているというのに。

この話にはオチがあり、破綻したリーマンから一番うまみのある部門だけをバークレイズが買収したのだ。つまるところ

「リスクを負って丸ごと面倒見るより、破綻後に欲しいところだけ手に入れる」

のが適切だと考えたのではなかろうかと誰もが思うだろう。(誰もそのことを裏付けてはいないが)

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さて、シャープを「買収する」テリー・ゴウである。彼はなぜシャープの無駄遣いにストップをかけないのか?一言でできるはずなのに。

と考えていてはた、と気がつく。

自分の金ならば、そんな無駄遣いは許さない。しかし他人の金だとしたらどうでもいい。

つまり

テリー・ゴウはロボホンとか作っている連中はそもそも「自分の金」だと思っていないのだ。彼は間違いなくバークレイズと同じ方法を狙っている。

だが、契約条項のなかには、出資期限となる2016年10月5日までに出資が実行されずに、破談となった際にも、鴻海はシャープのディスプレー事業を購入する権利を与ることが盛り込まれている。これは鴻海側の状況が変化し、破談になった場合でも実行されるという条項だ。

引用元:ASCII.jp:鴻海はどんなことがあってもシャープのディスプレーがほしい (1/2)|業界人の《ことば》から

最近ようやく学んだのだが、あれこれのどさくさに紛れ、最後に「一番大事なこと」を言う人は多い。この条項は間違いなくそれ。シャープが会社更生法を申請した場合、Foxconnは二束三文で、しかも排他的にシャープの液晶事業を手に入れることができる。そのためなら「前払いの1000億円」なんか安いもの。出資を実行しない理由なんていくらでもつけられる。間違いなくこれからもシャープは「予想以上の赤字」を生み出し続ける。それを使えば良い。

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シャープの人たちには気の毒だが

「一台20万円のロボホンが月に5000台売れる」

などと真顔で言う人たちに給料を払う会社がそうたくさんあるとは思えない。以下の記事は2011年のものだが。

ガラクタパゴス大失敗


しかし世の中は奇々怪々で、このガラクタプロジェクトを推進し、

社内の強硬な反対を押し切って「ガラパゴス」のネーミングをつけた

女部長は昇進してシャープの役員へ。

シャープの人事は奇々怪々


97 :名無しさん@12周年:2011/09/27(火) 18:25:37.48 ID:09ZjMG8h0

>>86

そういう不可解な人事はよくある。

ついでに言うと、そういう不可解な人事のある会社に未来は無い。

引用元:「ガラパゴス」大失敗のシャープ、CCCとの提携解消…ガラパゴス撤退で配信も縮小 : SIerブログ

これからシャープは避けられない結末に向かって、淡々と進み続けるのだと思う。


神を讃えよう

2016-04-26 06:49

私は宗教に興味はあるが、信じる気は毛頭ない。どちらかといえば、彼らと彼女たちの主張をちゃかすのに興味がある。それゆえ「ハゲとからかったらクマが子供を四十二人殺した話」とかヒトラーがなぜ自殺するまで生き延びたのか、とかネタをあれこれそろえている。

しかしながら

同時に私は狂信的なApple原理主義者である。Jobsがどうのという輩と一緒にしてもらっては困る。そもそも私が(以下13万4258行続くが省略)

この二つの事実は時として私に興味深い課題を突きつける。すなわち私は

「信仰ゆえの奇跡」

を体験したかもしれないのだ。

Appleが主宰するWWDCという開発者会議がある。2007年は牧歌的だった。「チケット販売開始」からしばらくたって購入できたし、開場すぐ近くのホテルを予約することもできた。

iPhoneはそれをすべて変えた。2013年には1分以下でチケットが売り切れた。それから乱数の神様がすべてを決めるようになる。2014年は当然のことながら「残念だったね。ストリーミングみてよ」というメールが届く。去年は不思議なことに当たった。

人間は乱数の中にもパターンを見出さずにはいられない。Appleが本当に乱数だけで当選者を選んでいるかどうかについてはいろいろ議論がある。「そうではない」という疑問をかきたてるのは、毎回「初めて参加する人」の割合が極めて高いこと。去年は80%だった。ベテランでもWWDCには参加する価値があると思っている。それゆえこの比率は

「初回参加者を優遇する」

ものではないか、という推定は根強く存在している。

私はもう3回参加する機会に恵まれた。若者に席を譲りなさいと乱数の神様が告げたとしても無理はない。いずれにせよ去年あたったから2年連続は無理だろう。

そんなことすら忘れていた土曜日、「ご注文ありがとうございます」というメールが届き血が逆流する。ああ、これは私のAppleに対する愛が乱数の神様に届いた結果だろうか。

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よくわからないが、今年はベテランの人で「当たりました」と言っている人が多い。単に応募した人が少なかったのか乱数の神様が方式を変えたのかどうかはわからない。

いずれにせよ、これが一様乱数の出力であろうが、補正項あり乱数の出力であろうが今年も私はWWDCに行くことになる。毎回「あーいろいろ大変。本当に行く価値あるだろうか」と思うが、帰るときには「来年も応募するぞ!」と固く心に誓っている。さて、今年はどんな発表があるだろうか。


止められない止まらない

2016-04-22 07:00

私の頭にはこう聞くと「かっぱえびせん」という言葉があのメロディーとともに甦る。

いろいろな会社の興亡を野次馬としてみてきて感じることだが、無能な経営者に共通する特徴の一つに

「止められない」

というのがあると思う。

信じられないことだが、富士通もシャープも未だにスマホを作り続けている。本業が儲かって仕方がない時に、気の迷いで手をだすならわかるが倒産寸前のシャープも作っているのだ。もっと言えばシャープは「新製品」の発表にも余念がない。

シャープは4月21日、4K対応テレビやBlu-ray Discレコーダーの新ラインアップとともに、新コンセプト商品となるAQUOS専用ネットワークプレーヤー「AQUOSココロビジョンプレーヤー」を発表した。人が近づくとテレビの電源を入れ、見逃し配信などの情報を声で教えてくれるスマートなセットトップボックスだ。

引用元:おすすめ番組をささやく「AQUOSココロビジョンプレーヤー」の気になるトコロ (1/2) - ITmedia LifeStyle

テリー。10月の「苦渋の決断」を楽しみにしているよ。シャープ社員には気の毒だが、そうするべきだ。液晶担当の本当に優秀な技術者だけは採用するべきだが。

さて、親愛なる三菱自動車である。彼らは未だに軽自動車からトラックまで作っている。

それに対して三菱は、規模が小さいメーカーであるにもかかわらず、ピックアップトラックや中型SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)、小型セダンなど幅広い車種を展開しており、研究開発費用はそれぞれに薄く広く配分せざるを得ない。こう考えてくると、三菱が軽自動車に避ける研究開発費用は、実質的には競合他社の半分程度しかないかもしれない。「カネ」という実弾がなければ、いかに士気の高い軍隊といえども、勝負に勝つのは難しい。

引用元:やり切れない三菱自動車の燃費偽装 (4ページ目):日経ビジネスオンライン

それが「勇敢な挑戦」なのか「思考停止」なのかは今回の一件で明らか。勝ち目がない戦いをずるずる続け、「補給はないが皇軍が負けるわけがない!」と電報だけおくるのは、インパール作戦以来の日本の伝統だ。さすが親方日の丸三菱。そりゃ偽装したのは部長かもしれないけど、経営層からの理不尽なプレッシャーなしに部長が勝手に偽装するわけがない。

戦線を縮小する判断というのは経営者にしかできない。それができていないということは経営層が無能ということ。そのしわよせを

1+1=3

1+1=1

「諸君、佐藤烈兵団長は、軍命に背きコヒマ方面の戦線を放棄した。食う物がないから戦争は出来んと言って勝手に退りよった。これが皇軍か。皇軍は食う物がなくても戦いをしなければならないのだ。兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん。日本は神州である。神々が守って下さる…」

引用元:牟田口廉也 - Wikipedia

とかいう標語で前線に押し付けてもねえ。多くの人はすでに忘れているようだが、もし軽自動車担当の部長が燃費目標を達成できなければどうなっていたか。

 RVRはグローバル展開するモデルとして高い低燃費化目標を掲げており、これを達成するため、車両の軽量化がキーとなっていた。諭旨退職となった管理職2人は、RVRの軽量化の責任者だったが、三菱自によると「目標重量を達成できないことが明らかになったにもかかわらず、重要な機関決定の場でも開発の遅れを報告しなかった」(同社執行役員)。目標としていた車両重量や燃費の目標を達成できないことが明らかになり、同社は新型車の開発スケジュール全体の見直しを余儀なくされた。

引用元:三菱自動車、新車開発の遅れを理由に管理職を「クビ」 異例事態に業界内で波紋広がる | ビジネスジャーナル

本来なら、ここで「本当のこと」を公表し、部長ではなく、経営層を刷新し、問題の根を断つべきだったのだ。しかしそれができたら三菱じゃないわね。そういうことをやらず、問題をうやむやにするからこその三菱。

そうした無能な経営者が知恵を集めても何も決まらない。PCは日本のメーカーの手にあまる製品になっている。随分前から。しかし例によってやめる、という決断をすることができない。

東芝と富士通、ソニーから独立したVAIO(バイオ、長野県安曇野市)が進めているパソコン事業の統合交渉が頓挫する公算が大きいことが15日、分かった。拠点の統廃合といったリストラ策などで折り合わず、決裂の危機に陥った。それぞれが独自に再編などに動くこともありそうだ。

引用元:国内パソコン:統合交渉が頓挫か リストラ策で折り合わず - 毎日新聞

とか書いていてふと思いつく。俺三菱自動車に応募したこともあったんだった。2次面接で話してくれた部長さんはいい人のように思えた。落としてくれたのは今にして思えばありがというというところか。もしあそこで岡崎で暮らし始めていたら今頃どんな人生を送っていたんだろうね。


三菱の歌

2016-04-21 07:23

何度か書いたことだが、私が最初に勤めたのは三菱重工だった。そして同期入社の友達とは未だに会っている。そしてそれからより小さいところ、歴史の浅い会社に勤め、三菱という名前が持っている意味について考え直すことが多い。

それとともにこういうニュースを聞くと「企業体質」というものが変わらないなあとため息をつく。

三菱自動車は2016年4月20日、軽自動車「eKワゴン」と「eKスペース」の型式認証取得において、国土交通省へ提出した燃費試験データを良好に見せるための不正操作が行われていたことが判明したと発表した。

引用元:エコカー技術:三菱自動車の燃費計測不正、シャシーダイナモの走行抵抗を軽めに設定 - MONOist(モノイスト)

三菱では「ストーリーを作る」ことが重視された。考えてみればあれ以来その言葉をあまり聞かないな。つまるところつじつまを合わせることであり、現実と乖離した建前を維持することであり、日本的な村の平和を守ることであった。

そうした「捏造」はどの組織でも大なり小なりあることであり、そうやって日々の村の平和は保たれる。問題はその村が外部と接触した時。かくして長崎造船所は「川向こう」の客に振り回され大赤字を出し、三菱自動車は「川向こう」の日産から指摘されようやく捏造に気がつく。

――内部告発でなく、日産から指摘されたことについては?

相川:現時点でなぜ内部告発がなかったのか、何とも申し上げられない。

――三菱自動車の体質は何も変わっていない。こういう体質はもう抜けないのでは?

相川:そういう見方があるのは重々承知している。(リコール隠しが発覚した)2000年以降、少しずつ、石垣を積み重ねるように改善をしてきたが、やはり、全社員にコンプライアンス意識を徹底することの難しさを私自身感じている。非常に無念でもあり、忸怩たる思いだ。

引用元:三菱自動車、変わりえない「隠蔽体質」の末路 | 自動車 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

内部告発がないのは当たり前で、内部告発をしようなどという人間はそもそも三菱でやっていけないからだ。そしてそうした企業体質が変わらないのも当たり前。つまり

「隠蔽は正義」

が三菱村の論理。正義を否定することなんて誰にもできないでしょ?おそらく今回の事件をうけ、車内に「コンプライアンス委員会」が発足し、社員研修が行われるだろう。真面目な三菱社員はそれに首を垂れて出席し、そして今までと同じように隠蔽を続ける。なぜなら「コンプライアンスを守りましょう」などというのは綺麗事の建前であり、聞き流せば良いことであり、隠蔽こそが行動指針であり正義だから。

隠蔽を上手に行う人間が評価され、出世する。大企業だから出世にはものすごい時間がかかる。長年積み上げられてきた体質はそう簡単に変わるわけがない。

何事も一般化するのは間違って居る。そう考えれば同じ自動車業界でもトヨタグループは「マシ」である。しかしこのニュースを聞けば「冗談だろ」としか思えない。

デンソーグループでは、真のグローバル企業としての持続的な成長に向け、性別・年齢・国籍などの属性を越えた、多様な価値観の中で「知」を最大限に活かすマネジメントの実現を目指している。このため、「多様な人材が活き活きと活躍出来る環境づくりが鍵」で、一人ひとりが未来志向・当事者意識を持って、意識変革・働き方変革に取り組むことを促進している。

引用元:デンソー、理想の上司を育成する「イクボス企業同盟」に加盟 | レスポンス(Response.jp)

かけてもいいけど、私の脳が機能を停止するまでに「三河の野蛮人」体質が変わるとは思えないよ。「川向こうの人」からみればここで目指している姿は「上出来のジョーク」としか思えないが、まあそれでいいんだよね。今日も惑星トヨタは平和だ。


AIバカ

2016-04-20 07:24

Facebookは面白い会社で、とっても正しいことをやることもあれば大きな間違いをやることもある。今までの例だとiOS上のアプリをHTMLベースで作ったのは明らかな誤りだった。

そして今年のFacebook F8で発表された「チャットボット」もその「間違いの一つ」として数えられると思う。Facebook Messenger上で企業に対してあれこれ注文できるのだそうな。でもってその性能はといえばこういうことらしい。

Sarah Perez記者がカンファレンスで発表された3種類のMessengerボットを自身で試した記事だ。Sarahはボットの能力の低さにすっかりあきれていた。

引用元:F8カンファレンスでFacebookが大々的にプッシュしたボットだが、ありのままに評価することが重要 | TechCrunch Japan

自然言語をコンピュータとのインタフェースとして用いる際にはよほど気をつけなければならない。他の会社が理解しているこの原則をどうもFacebookは理解していないようだ。

まず第一に「言語」はコンピュータと人間との間のインタフェースとしては信じられないほど効率が悪い。画面に選択肢を並べて好きなように選ばせたほうがよほどましだ。そして第2にそもそもコンピュータには言語が理解できない。(人間が言語を理解する、と同じような意味で)そしてその解決の方向性すら見えていない。

彼らがこれが理解できないほど馬鹿なのか、承知の上で大ボラを吹いたのかはわからない。有名な将棋のプログラム、Ponanzaの開発者はこう言っている。

山本 人間に残されたのは、言葉と論理しかないんじゃないかな。

加藤 自然言語処理は、人工知能の次のフロンティアですよね。

山本 次どころか、最後のフロンティアだと思います。

引用元:人類に残されたのは、言葉と論理。アルファ碁が示した人工知能の可能性とは|Googleの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか?|大橋拓文/山本一成|cakes(ケイクス)

言語処理というのは、防衛産業と同じくらい(あるいはそれ以上に)気が長くないとできない分野だ。頭のいい人が何十年も取り組んでいるのにさっぱり進歩を見せない。嘘だと思ったらチャットボットと会話してご覧。あるいはGoogle翻訳で簡単な日本語を訳させてもよい。GoogleにはAlphaGoを作る力があるというのに、簡単な日本語すらまだ英語に訳すことができない。

しかしこの山本という人の発言には一抹の危うさが潜む。そう思って引用した対談の別のところを見て絶望した。

山本 いや、むしろ、人間のやっていることで囲碁よりむずかしいことって何かありましたっけ?(笑)

引用元:人類に残されたのは、言葉と論理。アルファ碁が示した人工知能の可能性とは|Googleの人工知能と人間の世紀の一戦にはどんな意味があったのか?|大橋拓文/山本一成|cakes(ケイクス)

調べてみると山本という人はこういう軽口をたたく人らしい。Ponanzaは先日トーナメント戦を勝ち抜いたプロ棋士を一方的に破った。それぐらい強いのだが、以前も引用したAlphaGoの開発者たちの言葉と比べる時彼我の実力差に唖然とするのは私だけではあるまい。

ハサビスも同意する。「人間と同等の汎用人工知能ができるのは、まだ何十年も先の話です。でも5年か10年後には、何かしら役に立つものはできると思います。ぼくたちはいま、梯子の1段目に上ったところです。この先10や20のブレイクスルーを起こさなければ、その梯子が全部でいったい何段あるのか、そして『知性とは何か』を解明することはできないでしょう」

引用元:DeepMind:AlphaGoをつくった「4億ドルの超知能」はいかにして生まれたのか? « WIRED.jp

いや、おそらく私は間違った考え方をしている。この山本という人は強い将棋プログラムを作るのに長けてはいるが、それだけなのだ。バドミントンにオリンピックに出場するほど長けている人の論理感が小学生並みであるように。

しかしこう考えることもできる。AlphaGoはこうした真っ当かつ深遠な試みが一部表に現れたものに過ぎない。対するに日本では将棋プログラムを作って「囲碁より難しいことってありましたっけ?」とはしゃいでいる。この彼我の実力差は表に現れているよりもはるかに大きい。


搾り取った金を海外に捨て

2016-04-19 06:52

リーマンショック・コンフィデンシャルという本を夢中になって読んでいる。リーマン崩壊の裏側で何が行われていたのか。あの時壊滅した投資銀行のトップの多くが、移民の息子だったり農園から這い上がった人だったことにも驚く。親が裕福で、ハーバード出てます、なんて人は一人もいない。

さて、読んでいて「こういうものなのか」と思うのは、お金の勘定の難しさである。悪い評判が立つと株の空売り屋が集まってどんどん株価が下がる、とリーマンは主張する。もっと大きな問題は彼らがわけのわからない商品をたくさん抱え込んでいたこと。ウォーレンバフェットが言うところの「大量破壊兵器」である。

などと読みながらこの記事を読むとまた別の感慨がある。

SPRINT'S NET DEBT VS. MARKET CAP

$31.5B vs. $13.6B

引用元:Sprint's Hidden Debt Bomb - Bloomberg Gadfly

ソフトバンクが買収したSprintの負債は3.1兆円、時価総額は1.3兆円。こういう指標はいくつもあり、そもそも比べることが正しいことかどうか誰にもわからない。しかし上記の記事では2019年に有効となるアメリカ会計基準の変更により、負債は(今のまま計算したとすると)5兆円になると主張している。

「スプリントを買いたい、という他社からの問い合わせはあるか」という質問には「あまり買いたいという申し出はない。世の中の大半の人は、スプリントは大丈夫か、と思っているのではないか」と苦笑い。しかし、続けて「買いたいって話は来てないけど、売りたくはない」と強気の表情もみせていた。

引用元:迷走のスプリント事業に光 - ソフトバンク孫社長、あと2年で復活と宣言 (2) 2年後に改善の効果が見えるように | マイナビニュース

と孫氏が宣言している言葉はいささか割り引いて聞くべきなのかもしれない。彼らの財政状態は日本政府と同じようなものかもしれない。

でもって

国内では総務省と寡占3キャリアとの戦いが続いている。しかしよくもこう3社とも横並びのことをやるものだなあと感心する。なんだかんだと理屈はあるが、結局キャリア契約したときの料金が下がったなどという話はどこからも聞こえてこない。そりゃそうだ。ドコモもソフトバンクも海外に「捨てる」金が必要だから。今や日本国民は彼らのCash cowになっているのではなかろうか。



創造の難しさ

2016-04-18 07:10

なんども痛感することだが、人が作ったものに文句をつけるのは容易い。自分でものを作るのはとてつもなく困難だ。今自分が作っているものが行き詰まっているのからいうのではないよ。

Motor Trendは大胆な賭けにでた「Apple carの姿を独占報道!」と売り出したのだ。もちろんAppleの外側でApple carが何かを知っている人間などいない。では彼らはどうしたか。

BuzzFeedのエディターは、Motor Trendの記事タイトルを「専門家が頭をつき合わせてつくった、もっとも可能性なさそうなApple Car」と、勝手に直してポストしてます。

上のポストで言及されているとおり、今回Motor Trendが発表した一連のイメージは、アートセンター・カレッジ・オブ・デザインの学科長から教授、デザイナーたちを集めて議論し、つくりあげたもの。そうそうたるメンバーだったわけです。

引用元:酷評のApple Car予想デザイン。裏側にひそむ「アップル的」思想は正しかった? : ギズモード・ジャパン

要するにそうそうたるメンバーを集めて「Appleが車を作るとしたらこんなふうではないか」という絵を作ったわけだ。彼らがあれこれ議論しているビデオをみたが、真面目にやったことだけは間違いないらしい。

でもって出来がこれである。

Apple Car予想図

引用元:JALPONIK

これを笑うのは簡単だが、もう一度これを作ったのは、「そうそうたるメンバー」であり彼らは別にふざけてやったわけではない、ということに思いを馳せよう。つまりこれは難しい仕事、ということ。

仮にAppleが車を発表したとしよう。かけてもいいが

「このデザインはクソだ」

という人が世の中に山ほど出てくる。そしてこれもかけてもいいが

「ではこれを見る前に、自分がもっとよいデザインを作れるか」

と問いかけられたとき、本当にそれができる人はまずいない。今までAppleの新製品の「想像図」を作った人が多いが、それが「実物」を超えた例は私が知る限りない。

などとつらつらと書いてきて、実はこんなことは誰もわかっているのではないかとも思い出した。こうした「人が作ったものに文句をつける」というのは私のように創造の才に恵まれなかったもののせめてもの「腹いせ」ではないか、と。


人の顔をみよう

2016-04-15 07:17

もし私が将来詐欺にひっかかったらこの文章を思い出して笑ってほしい。しかし多分詐欺師には騙されると思うが、「人の顔つき」というのが多くを物語るなあ、というのが最近の信条である。

小保方氏の「偉業」を最初に聞いた時「これはすごい」と思った。もし本当ならすごい成果だ。そして小保方氏の映像を見たそして

「?」

と思った。映像とそれまで報道されていた偉業が全くかみ合わなかったのだ。耳の聴こえない作曲家とかiPS細胞で詐欺をやった男とかちょっとは顔を見ろよ、といいたい。でもって今日はこの写真。

ロボホン関係者

引用元:ケータイWatch

もちろんこの人たちが詐欺師というつもりはない。しかし彼らが胸をはって発表したものをみるとき私は「顔つきは何かを語る」と思わざるをえないのだ。

月産5000台という数字は明らかにされているが、年間では6万台の販売を目指し、「半年でなんとか黒字にしたい」とした。約20万円になるロボホンの本体価格については、「普通のスマートフォンとしての価格に、13個のモーターの価格が加わる。精一杯頑張った価格だ」と、採算性はギリギリという認識。「売れると思うか?」などとする問いには、「当然そう思ってやっている。満を持して発表した」と自信を示した。

 4月2日に発表されたように、シャープは鴻海(Foxconn)に買収され、契約に調印している。今後は鴻海傘下での事業展開になることについて、ロボホンの事業の存続性を問われた長谷川氏は、「鴻海からはシャープへの“投資”という話があったかと思う。良い文化は残していくという話だ」

引用元:ロボットの未来は“スマホの先”にあった――ロボホン発表会 - ケータイ Watch

彼らの言葉に対して、一番説得力があるのはこのコメント。

本当は液晶事業""だけ""欲しい鴻海の気持ちがよく分かる。

引用元:はてなブックマーク - ロボット電話「RoBoHoN」5月発売で198,000円。対話や歩行ができ、映像投写も - AV Watch

交渉が延長された際「液晶事業は鴻海が優先的に買い取る」という内容が契約に追加されたとのこと。シャープに勤務する人には同情を禁じえないが、私がFoxconnなら間違いなくその発動を狙う。

彼らには気の毒だが、Foxconnが真っ先に切りたいのはこういう人たちだろう。この状況においてこんな製品を高い金を払って発表している人間、それにその「新製品発表」を許可するシャープの経営幹部たち。


ビジョンのある会社

2016-04-14 07:05

私のサラリーマンとしての最大の欠陥は場所と場合をわきまえない発言である。とはいえ今働いている会社の人はここを読んでいないだろうから書いてしまおう。ちなみに会社の機密に「普通に」ひっかかることは書きませんよ。

ビジョナリーカンパニーという本がある。私が読んだのは10年以上前かな。ストックデールの逆説とかいくつか印象的な点があった。そこで「すばらしい例」としてあげられているある会社の名前が頭に残っていた。

さて、それからリーマンブラザーズが破綻したりあれこれあって2016年。リマンショックの裏側を描いたドキュメンタリーを夢中になって読んでいる。その中に「あれ、どこかで聞いたことがある?」という会社がでてくることに気がついた。ファニーメイである。

よもや、と思って会社の貸し出し本棚に行ってみる。実はこの本棚は「貸し出し」と「寄贈書」の二つに分かれている。寄贈書の方は、ちょっというと「買ったけど読まない本」のすて場所のようになっている。そこに「ビジョナリーカンパニ−2」が2冊も存在していた。そういえば、私が今働いている会社はビジョンを大切にしているのであったな。この本がマネージャーの課題図書になっていたのかどうかは知らん。

さて

今朝読んだのは米国版住専、ファニーメイが破綻し連邦政府が介入する場面だった。そのファニーメイはビジョナリーカンパニ−2でこうかかれている。

ファニーメイの経済を支えているのは、住宅ローンの債務不履行リスクを判断する能力がどの機関よりも高いことである。この理解に基づいて、民間金融機関が貸し付けた住宅ローンを買い取り、元利返済を保障した証券にまとめ、リスクに見合ったスプレッドを上乗せして金融市場で売却する。この事業についての深い理解に基づいた単純で、賢明で、正しい分母であり、明白ではない分母である。

ビジョナリーカンパニー2 P167

国民すべてが住宅を所有できるようにする目標に向けて、同社が重要な役割を果たしている点が、ファニーメイにとって情熱の源泉となっている

ビジョナリーカンパニー2 P177

「国民すべてが住宅を所有できるようにする」

それは美しい理想なのだが、じゃあ住宅ローンは誰が支払ってくれるのか?大丈夫。住宅は絶対値上がりするから売ればいいんだよ。全部が不良債権化することはありえないから、

「腐った魚や野菜は混ぜてスープにすれば、また売れる」

というのがリーマンショックの本質だった。スープはより広い顧客に売られ、腐った素材についたボツリヌス菌が毒素を吐き出し始めたところで大勢の人が食中毒になる。そうしたマルチ商法まがいの手法をこれだけ持ち上げたらそりゃビジョナリーカンパニー3でまるまる一章言い訳に費やすのも頷けるというもの。というかこのくだりはここ数週間で出会った最も愉快な文章だった。

というわけで

このビジョナリーカンパニーという本はまるまる「なぜビジネス書はあてにならないか」のケーススタディの材料になりうると思うのだ。いまそうした目で読み返してみると、いくつかの言葉が思い当たる。

平均への回帰、がその一つ。彼らが調査した期間は確かに優秀な株価をもっていたかもしれないが、少し範囲を広げただけでそれらはすべて平均(以下)に回帰してしまっている。つまりそれは単なる「突発事項」だったのかもしれない。

もうひとつは

この本の著者が経営者にインタビューし、その言葉を真に受けているという点。経営者が自社について語る言葉がどの程度真実かは、自分が働いている会社の社長の言葉を思い出せば想像がつくというもの。というか人間が自分を評価する言葉ほどあてにならないものはない。この点に関しては別に私が語るまでもない。韓非子は「人の言葉を聞き、行動を観察しそのギャップに着目すべきだ」と書いている。不幸にしてビジョナリーカンパニーの著者は「国民全員が住宅を持てるようにする」という言葉の本当の意味について深く考えなかったようだ。

不幸なことにこうした「知恵」は「失敗した後」にしか思い出さないんだよね。




信仰をマネタイズしよう

2016-04-13 06:49

ある会社で働いていた時、新規事業のアイディアをあれこれ出した。私は「宗教をビジネス化する」ことを提案した。仮想空間に信者が集う。ごく稀に教祖が降臨する。そして信者というのは「搾取されればされるほど喜ぶ」と。

このアイディアを聞いたコンサルタントの人はおそらく真面目な信仰を持っている人だったのだろう。実に複雑な顔をした。結局そのアイディアはボツにした。

それからおよそ20年。そのアイディアはおもがけない形で世の中にでることになった(嘘です)

このゲームの変わっているのは、全プレイヤーの内プレイヤー上位100人のみが彼氏になれるというシステム。まず、好きなメンバーを選び、その推しメンと親密度が上がると彼氏の前段階の「アンダー彼氏」になれる。その後、アンダー彼氏がゲーム内で期間限定のイベントで成績を競い、上位100人のみが彼氏になれるというわけだ。つまりプレイヤー同士で争奪戦になるそうに仕組まれている。

引用元:痛いニュース(ノ∀`) : 乃木坂46のスマホゲーが鬼畜すぎると話題に 全プレイヤー中、上位100人のみが参加できるリアルイベント開催 - ライブドアブログ

このゲームを考えた人間は本当に天才だ。最近ガチャ規制がどうのという話が聞こえてくるが、そんなことなど全く問題ではない。頭の狂った小金持ち同士が、信仰心を競い札束で殴りあう。対価として得られるのは「ゲーム内彼氏」という意味のない称号と彼氏限定イベントへの参加権利。おそらくそこではペットボトルにはいった烏龍茶と、バナナ半分が振舞われるにちがいない。

このアイディアだったら、あのコンサルタント氏も同意してくれたにちがいない。ああ、もったいないことをした。

これだけリスクが少なく収益性の高いビジネスはそうあるものではない。AKBとかそういうグループのビデオを見ると、少女たちの「媚びた笑顔」をみて不愉快になる。握手とかまあ半分風俗のようなものだが、この方法なら指一本触れさせることなく大量の金を巻き上げられる。

なぜこのビジネスが成り立つのか。そして問題があるとすれば何なのかを考えることは実に興味深い。似たような「意味のない称号を手にいれるため札束で殴りあう」という図式はもっとたくさん存在しているのではなかろうか。そして現実の世界では満足を得られない人たちに、一時の偽りの幸せを与える、と抽象化すれば、類似の例をいくつも見つけられるようなきがする。

先日ある場所で

「収益とはいただいたありがとうの総和を示すもの。だから収益を上げることは、ありがとうをたくさん集めること」

というコンサルタントの言葉を聞いた。いや、コンサルはうまいこと言うなあ。



健全な批判を育てるために

2016-04-12 07:02

というわけで話は昨日の続き。和をもって尊しとなすの我が国によくおこりがちな間違いというのが

「皆で手をとりあり、微笑みながら沈没する」

というもの。やさしさに包まれながら船が沈む。というわけで必要なのは

「氷山にぶつかる。舵をきれ」

と空気を読まず叫ぶこと、それを許す文化の醸成ではないかと思うのだ。

本来ならメディアがそうした役割を担うべきなのだが、彼らは独自の「ほほえみに包まれた沈没船」を作り上げていることが明白。

でもって

健全な批判を育てたいと思う。話をぐっと矮小化しよう。なぜそんなことを考えたかというと、映画「ちやはふる」のYahoo掲示板を見ていたからだ。おそらく誰かが高額の宣伝費を「口コミ」に注ぎ込もうと考えたのだろう。今までに類を見ないほど宣伝としか解釈しようのない「口コミ」が集まっている。普通の人はほとんど見ていないので、平均点は上がり放題。

いや、掲示板とはそうしたものではないか、と思われるかもしれないがやりようはあると思う。私がいつも興味深く思うのはプログラマーならみんな大好きStackoverflowの評価システムだ。SPAM的な操作を排除し、真に「役に立つ情報」が評価されるような評価システムを作り上げている。

映画評に関してあんなシステムが作れないかと思っているのだ。いや、もう存在しているんだろうか。集合知は正しいが、衆愚は間違って居る。衆愚を避け集合知を生かす方法ってまとまりつつあるのだろうか。

経済評論家でもいいのだけど、「TV局からみて使いやすい人間」にしゃべらせるんじゃなくて、「まともなこと」を言う人の意見が聞きたい、と思うのは少数派なんだろうか。


今の日本に必要なもの

2016-04-11 07:25

すいません。題名はウケ狙いでつけました。少しだけ反省しています。

こういう大上段に振りかぶった題名を持つ文章はゴミと決まっている。しかしながら内容に関しては真面目に考えていることも事実である。先日見つけたこの記事。

最近目立って量産されているコミックが原作の恋愛映画についても「ハーッ」と大きなため息をついた。日本で主流になっている「製作委員会方式」に不満があるようだ。リスクの分散・回避のために複数のスポンサー企業が製作費を出資するシステムだ。

引用元:今の日本映画にもの申す…「レベルが本当に低い!」 英映画配給会社代表が苦言 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

リスクを回避するために全体が地盤沈下していく。おそらく企業活動の多くで行なわれていることもこれと同じにちがいない。でもってこの言葉。

ところで、日本映画が衰退している一因で“その通り”と思ったのは「映画評論家が『この映画はだめ』と言わないこと」という指摘だ。

 「日本人はみんな優しいから(だめだと)思っていても言わない。逆に『すごい』とか持ち上げてばかり。なんでかね」

引用元:今の日本映画にもの申す…「レベルが本当に低い!」 英映画配給会社代表が苦言 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

なぜかと問われれば、日本には社交クラブがそこかしこに存在しているからだと答える。何度か書いたが、「一生懸命映画を作り上げたスタッフの苦労を考えれば、ゴミ映画をゴミと言わない”心遣い”が必要」なんだそうな。

といったところで話は題名に戻る。我が国で多く見かける欠点として

「批判が許されない」

というのがある。批判はいついかなる場合においても忌避すべきもので、それを頻繁に行うものは組織から排除される。何度か書いたが「批判は許さない。排除する(首にしてやる)」と真顔で言ったのは、日本の超一流企業の落ちこぼれ管理職だった。

なぜ批判が排除されるかといえば、何よりも社交サークルの中の融和を優先する、というのが一つ。もう一つは「健全な批判文化」が存在しないというもの。

ダメ映画をダメ、というのは個人に対する批判ではない。それは現実を見据えることであり、忌避されるべきものではない。

この世の中には色々な人がさまざなな価値観を持って暮らしているのだから、当然色々な意見があってしかるべきである。自分と違う意見を持っている人とディベートをするのは、すごくプラスになり、楽しいことだが、一つだけ気をつけなければならないことがある。「相手の意見」は幾らでも攻撃して良いが、「相手の人格」を否定したり攻撃するのはマナー違反である。そこさえ気を付けていれば、「楽しく意見を戦わせる」ことが可能なはずである。

引用元:Life is beautiful: ディベートは 楽しくするもの したいもの

この言葉を書いたのは原発おじさんと化した人だが、かといってその言葉の全てが間違って居るというわけではない。意見の攻撃と、人格への攻撃を区別すること。これを徹底するだけでも日本の批判文化はだいぶましになるのではないかと思うがいかがでしょうか。

とかいいつつ

私も日本のサラリーマンだから、会社では批判的な言動は厳に慎む。皆が「大日本帝国万歳!」と叫べば、にやにや照れ隠しの笑いを浮かべながら、両手をあげる。そうしなければ日々の生活は送れない。



会社は誰のものか

2016-04-07 07:11

その昔アメリカの会社とあれこれプロジェクトをやった。その会社のロゴにはEmployee owned companyと書いてあった。

数十年ぶりになぜそんなことを思い出したか。クックパッドという会社で起こっているこの騒動である。

3月24日に開かれた株主総会の翌週月曜日、全社員に向けてある社員がメールで訴えた。「今の状況は、おかしいのではないでしょうか」。メールを送ったのは、2015年4月にクックパッドに入社した、元くらしの手帖編集長の松浦弥太郎氏だ。呼応するように署名活動が始まり、国内240名超の正社員のうち、8割以上の署名が集まった。

 (中略)

社員は労働組合を立ち上げ、佐野氏と岩田氏を退陣させるための戦略も練り始めたという。

引用元:クックパッド、創業者退陣要求で労組を結成:日経ビジネスオンライン

私が最初に勤めた会社にはあたりまえのように労働組合があった。そこでいろいろ貴重な経験もしたが、普通IT関連のベンチャーには労働組合がない。それが出来ること自体普通ではない。

なんだかんだといって株主は法律的に多くの権限を有しているし取締役だの社長だのも同様だ。それに対して不満をもつ人間も一定数存在しているのだが、普通はクダをまく程度で収まり、我慢ができなければ転職する。そもそもベンチャーだし。企業にとどまるならば会社に表立って逆らうのは賢明ではない。

しかし明白に会社のやり方に異議をとなる署名に8割以上の社員がサインするとは尋常ではない。創業者と雇われ社長の間の路線をめぐる内紛と思っていたが、どうやら話はそう簡単ではないのではないか。

労働組合が佐野氏に対して退陣を要求したとしても、それを岩田氏や佐野氏が無視することは容易だろう。さらに言えば、社員の多くが辞めたとしても、クックパッドの最大の資産である会員組織は会社の資産として残る。

引用元:クックパッド、創業者退陣要求で労組を結成 (2ページ目):日経ビジネスオンライン

これは「事実」である。これをわけ知り顔に指摘する人の多さにも驚くが、もっと驚くべきはこうした事実を知りながら社員が賛同しているということ。されに問題は社員が5割やめてしまったら会員組織は無価値になる、ということ。

ここにはいくつも興味深い物語があるように思う。創業者にして大株主が無能ならばなぜクックパッドは今の成功を作り上げたのか。そして社員はなぜ辞めずに反対署名をすることを選んだのか。


Microsoft Buildのキーノートを見たよ

2016-04-06 07:41

会計年度が改まるとき、いろいろなごたごたがある。仕事が許されない日があったので、今年のMicrosoft Buildのキーノートを見た。

Microsoftの伝統芸とも言える

「わざとらしい歓声」

は健在。ただしどうもプレゼンターが個別に手配しているらしく、本来歓声が起こってもおかしくない場面で静かだったり、どうでもいい場面で歓声が上がったりする。

プレゼンにおいて適度な自己顕示欲は悪くないが自分が発表しようとしている内容より、自分をアピールしたくなるとプレゼンテーションは破綻する。最近でてくる小太りの帽子おじさんがいるのだが、いつもわざとらしく斜めにかぶった帽子と

"What do you think about that?"

という煽り文句しか記憶に残らない。

帽子おじさん

でもって今年は例年に比べ地味だった。本来WindowsがLinuxと一部融合すると発表すれば大騒ぎになったのだろうが、なぜかbashが使える、とさらっと言っただけだったし。

これは「MicrosoftはプラットフォームをOSからOffice+Azureに切り替えた」という方針転換に伴うものだろう。

Nadellaは自社の将来がWindowsと共にあるわけではないと考えるようになったのかもしれない。Windowsではなく、AzureとOffice 365にあると。そうであるなら、Buildでその2つに強く焦点を当てていた理由が説明できる。

引用元:Microsoftにとってモバイルはさほど問題ではないかもしれない | TechCrunch Japan

つまりOfficeが動けば、OSはなんでもいいのだ。だからWindowsにかつての天敵だったLinuxを統合することも厭わない。これは正しい動きだと思う。

HoloLensは完成度が増しているらしい。目にするレビューは好意的だが、問題は例によってアプリケーションなのであった。残念ながらこの点においてもMicrosoftは苦闘している。(彼らがそれを認識していればだが)ナデラの方針は正しいと思うが彼の話は長くてつまらん。

時々観客席が映し出される。さっきからあがっている歓声はだれが上げているのか。全般的にみんな真面目な顔をして座っている。

いや、ビデオを見返してみたらちゃんと笑顔の人もいた。これだから偏見に凝り固まったApple原理主義者は...

笑顔

この女性を写したのがあまり意図せずのことなのか、単にLumiaを持っている人がみつからなかったのか、はてまたMicrosoftの新しいアプローチを代表する写真としたかったのか、などというのは考えすぎなのだろうな。


夕日を眺めながら

2016-04-05 07:09

これが30年前なら大ニュースだったのだろうな。

今のところ、Future Labの詳細情報は乏しい。Sonyはそれを使って新しいガジェットを披露し、将来のユーザーになる人びとからのフィードバックを得たいようだ。自社専用のKickstarterみたいだな。

2015年の夏にSonyは日本で、First Flightという似たようなサービスをローンチした。そこではSonyのガジェットをクラウドファンディングし、それから市場に出す。Sonyはこれまで、5つのガジェットをFirst Flightに置いた。Future LabがFirst Flightをリプレースするのか、それも分からない。

引用元:SonyのFuture Labから再び、Walkmanのような先進的ヒット作が生まれるだろうか | TechCrunch Japan

今このFuture LabのFacebookページをみたが、ちらほら「いいね」がついている。一番印象的なのはモデルのお姉さんの服の色。社内的にはFirst Flightは製品化をめざすものであり、Future Labはコンセプトモデルの共有だ、とかなんとか区別がついているんだろうなあ、とぼんやり思う。あるいは単にSXSWに出展するときそれらしい名前をつけただけかもしれない。

この「中の人には決定的な区別があるが、外からみるとわけがわからない」というのを見ていると、

メモリースティック・ウォークマン

VAIOミュージック・クリップ

ネットワーク・ウォークマン

を並べて売っていたころのことを思い出す。今から考えれば「愚行」以外の何物でもないが、当時はそれなりに話題になったんだよね。

東芝は崩壊し、シャープは買収された。ソニーはこのまま金融と映画とイメージデバイスのわけがわからない集合体になっていくのだろう。そうした落日を見ながら考える。企業の体質はちっとやそっとじゃかわらんものだな。


村の論理が極まる時

2016-04-04 06:41

最初に勤めた三菱重工で、客船が大規模損失を出しているという。例によって外から見ていては理由がよくわからないが、三菱の「公式発表」が嘘であることについては自信がある。

というわけでこちらも信用できないと思いながら記事を読む。

「三菱の人は外国人によう言わんのや」。協力企業で働く日本人技能者の1人は、そんな不満を漏らす。やらなければいけない仕事は山積みで、自分たちは働いているのに、一部の外国人技能者が休憩ばかりしている。それを注意しない三菱重工にも、腹が立った。

 ほかにも、夏に半袖半ズボンで働く、禁煙の場所でタバコを吸う、散らかしたゴミを片付けないなど、この技能者の感覚では「あかんやろ」という事がいたるところで目に付いた。しかし、喫煙所のルールが徹底されたのは今年初めのボヤ騒ぎの後。休憩やゴミの扱いに至っては、引き渡しまで直らなかった。

引用元:三菱重工の巨額特損、知られざるもう1つの理由 (3ページ目):日経ビジネスオンライン

三菱重工といってもいろいろな部署がある。しかし長崎造船所という特殊な環境とこの言葉を思いあわせると「そんなことがあったかもしれない」という思いにかられる。

長崎に住む理系の男性にとっての「成功コース」というのがあるそうで、長崎大学から三菱重工に入社し、長船で働くことなんだそうな。長崎に行ってみるとわかるが、三菱重工の下には関連会社が山ほどあり三菱の社員といえば、昔は名刺だけでツケで酒が飲めたとか。(私の頃にはすでにそれは伝説となっていたが)

そういうピラミッドの頂点に君臨する人間はその立場に適応する。そしてそれ以外の状況への適応力を失う。なぜ周りが自分の言葉に従うか理解していないから、言葉に従わない人間が来た時なす術を失うのだ。

仮にそのピラミッドの内側にいる人間が喫煙場所以外でタバコを吸ったら恐ろしい制裁が待っているにちがいない。その会社の下手すれば社長がとんできて三菱のヒラ社員にぺこぺこ頭をさげる。しかしクロアチア人が相手ではそんな「あうんの呼吸」は全く配慮してもらえない。かくして船の中に火事が起こる。

まあ想像はこれくらいにしておこう。

こうした「村論理」はなんらの合理性を持たず、どこからか神の声のごとく降ってくる。それに疑問を持っていては日本でサラリーマンはできない。

「まあ、そこには理由はないんだよな」
「そうですか?」
「40歳過ぎたら、“圧倒的にできる”人以外は段々と外れていって、最終的に役員以上になるのはわずか。それ以外の異動の順番や行き先ってあまり深い意味はないんだよ」

引用元:いよいよ50代。自分のキャリアをどう見切る? (2ページ目):日経ビジネスオンライン

これも日本では常識なのだろうが、こんなことをやっていてはテリー・ゴウから「40代以上はいらない」と言われるわけだ。出世ラインから外すのはいいとして、給料を順調にあげ、かつ全く関係がない部署に移動させるとはどういうことか。

これも「村のきまり」だから村にいれば頭を垂れて従うしかないのだが、こうやって「意味なく飛ばされてきた人間」の下につかされる平社員の悲哀はよく知っている。新しいベンチャーではこんなことは起こらないと信じたいが、日本もだんだんここから脱却できるのだろうかね。